#130 平穏な1日
ちょっとぐだっていますが日常回です。
戦闘が欲しい方はもうしばらくお待ちください…
百三十話突破!よろしくお願いします!
「あん?隣国でモストロが出た?」
放課後の『学園防衛団』の部室でカフは受けた報告に驚きの表情を示した。
報告しているのはテリアだ。
「あぁ、どうやら芋虫型のモストロが12体現れたらしくてな。しかし現地は獣人の国、全て撃破したそうだぜ」
「パネェな獣人」
「なんでもあの硬い表皮を拳でかち割ってそこから内臓を抉り出したらしい」
「パネェな獣人」
カフの語彙力が消え去っているが無理もない。
彼だって元はモストロに手も足も出なかったのだ。
純粋な力のみでモストロを制圧している獣人はカフ達の何倍もの才能を秘めているのだ。
「そこで獣人の国から王国に連絡が来たらしくてな、なんでも『そちらでは先行で確認されたと聞いた』だそうだ」
テリアの言葉にカフはしまった、と言うような表情を作る。
「俺たちが王国と揉める前はモストロの情報は王国側も把握してなかったから獣人の国に連絡なんて出来ないか」
「そうなるな」
「はぁ~やっちまった~!コレ、お相手さんはこっちの差し金とか思ってるんじゃね?」
「あぁ。実際王宮からの通達で王国がモストロを仕掛けたのではないか、との手紙が来たらしい」
テリアの言葉を聞いたカフは頭を抱える。
「あ~やらかしちまった。んで?王宮は俺達に説明しにいけ、なんて言ってるのか?」
「あ、あぁ。その通りだが……良く分かったな」
「最近リオンの姐さんに政治とか、なんかそこら辺勉強しろ~って言われたからちょっとな」
「仕方ない、リーダーは社会系の教科が壊滅的だからな」
「うっせ!………んで?どうすんだ?獣人の国…………ルクミにはどういう人選で行くんだ?」
「それを今から相談しようと思ってきたんだ」
「分かった、それじゃあ騎士団の面倒は今日は無理と伝えて……」
「王宮からの指示だが、『遅れても騎士団の面倒は見るように』だそうだ」
「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあッッッッ!!!!!」
カフの悲痛にも思える怒声が部室に木霊した。
──────────
学園が終業式執り行い、生徒が各々好きな場所へ散った一時間後。
リオンは学園から王宮へ向かっていた。
付き添うのはレインとクレア、そしてカフだ。
「なんだかぁ~こうやって四人で並んで歩くのは初めてなのかな?☆」
チャラチャラとした口調で話すのはレイン組で参謀の役割を果たしているリオンだ。
「確かにそうね、カフは結構子分を引き連れてることが多かったしこの四人だけって言うのは初めてかもね」
そう言って肯定するのは魔剣士のクレアだ。
「いやぁ~あの時はお騒がせしやした」
「楽しかったけどねぇ~」
カフが恥ずかしそうに頬をかくとレインがにこにこと笑いながらフォローする。
「あ、そういえばレイン君。ヴァイスちゃんはどうしたの?」
「ヴァイスならこの前のお仕置き以降すっかり部屋からでなくなっちゃいましたぁ」
レインがクレアの質問に答えるとクレアとリオンがバツの悪そうな顔をする。
「俺も後でどんなお仕置きだったか聞きやしたけど……エグ過───」
「ん?☆」
「イエ、ナンデモナイッス」
リオンの覇気(?)に当てられたカフはすっかり萎縮する。
そうして騒ぎながら歩いているとレイン達は王宮についた。
完璧に復興した王宮に4人は感心すると、門番に事情を伝え、中に案内された。
今、国王と王妃は重傷から回復したもののまだまだ療養が必要なので面会は許可されていないしレイン達を招待することも出来ない。
今回彼らを呼び出したのは他でもない、王女ダーナだった。
「セアリアス家長女、セアリアス・クレアです。お申し付けの通り四名で参りました」
クレアが簡単に挨拶すると、中から「入れ」とダーナの声が聞こえる。
「失礼します」
「失礼します☆」
「失礼しまぁす」
「失礼しますッ」
それぞれ異なる挨拶と共に部屋の中に入る。
するとダーナが既に大きな椅子に座っていた。
「どうぞ座って。楽にして良いわ」
ダーナが合図するとクレアとリオンは慣れたように座る。
レインは作法を全く知らないからかおどおどしながら座る。
カフが豪快に座ってリオンに叩かれたのは言うまでもない。
「緊張しないで頂戴、今日はむしろ私が無礼を詫びるのだから」
ダーナの言葉にカフとレインが首を傾げる。
「カランコエ・レインさん。貴方への数々の無礼。どうかお許しください」
ダーナが深々と頭を下げ、謝罪する。
その美しすぎる所作にレインは暫くボーッとしていたが、すぐににこやかな表情を浮かべる。
「大丈夫……ですよぉ。おいらはちゃんと許すよぉ………します」
レインは流石に敬語を使わないといけないと思っているのかたどたどしくも敬語を使う努力をする。
「ふふ……大丈夫ですわ。貴方は命の恩人。私への敬意など不要です」
「い、いや……で、でもぉ」
「その方が貴方らしいですわ。どうか、私からのお願いと思って」
「わ、分かったよぉ…」
ダーナがレインを説き伏せ、ニコニコと笑う。
レイン以外の三人は共通してこう思った。
───誰だコイツ───と
「え~っと、ダーナ王女様。その……失礼なんですが、レイン君に対しての対応が180度違うように見受けられるのですが、何かあったのですか?」
勇気を出してクレアがそう尋ねる。
するとダーナは嫌な顔をするどころかその笑顔をさらに輝かせる。
「貴方達も聞いたのではありませんか?私は彼に悪魔から助けられ、そして今生きているのですよ?」
ダーナは盲目ともとれそうな表情で語り続ける。
「あんなに酷い女であった私に躊躇うことなく手を差し伸べた彼が────」
「それだけじゃ……ないよね」
ピリッと空気が淀む。
原因はリオンだ。
カフはリオンの表情を見るなり姿勢を正して動かなくなりクレアはやれやれと言ったように眉間を押さえる。
「何か……あったんだよね?王女様?」
バチッとリオンからとても熱い視線がダーナに降り注がれるが、ダーナは気にせず語り始める。
「聞いてしまうのですね~♪あれはかの戦いの日の夜……彼を看病していた私は途中で寝てしまったのですが……」
ダーナは顔を真っ赤にして首をブンブンと振りだす。
「起きたレインさんが私をお姫様抱っこしてベッドに寝かしつけてくれたのです~!」
いやんいやんと言いながら首を振るダーナを見たリオンの頭からブチッと音がする。
「先輩~?」
「んぅ?」
「そ、それは本当なんですか~?」
「うん、おいらは眠くなかったしベッドは寝てる人が使った方が良いよねぇ?」
「そ、それはそうですけど……」
リオンのひきつった顔にカフは既に意気消沈していたが、レインは慣れているのかあまり怖がらずいつもの調子で答える。
「はぁ……」
頬を赤く染める王女と鬼のような形相のリオンとそれらを気にしないレインを見たクレアは思わずため息をつく。
レインは成績不振や出身地特有の訛りの影響で周りからの好感度が低かった分、度重なる戦いやその人柄がギャップとなり好感度はうなぎ登りになっている。
もちろん尊敬、友愛、恋心。各々が抱えるものは異なる。
クレアはその中でもレインを「弟分」として見ている。
いわゆる友愛、家族愛だろう。
クレアからすればまだまだ幼い男の子で年上のクレアとしては守ってあげたいのだ。
レインが人気になる前から友達として嫌われものの彼に構っていたのでそう簡単には揺るがないだろう。
だからクレアとしてはリオンがレインに依存にも見える信頼と恋慕を寄せているのも分かるし外との交流が少ない王女が命を掛けて自分を助けたレインに恋するのも分かる。
それは見守りたいと思っているしクレアもあまり触れる気はない。
しかしあまりにもレインが温厚過ぎて若干リオンが空回っている事に、リオンの友達としてため息をついたのだ。
レインは別に鈍感ではない。
そうでなければ戦闘では遅れを取るし、料理なんて上手くなれない。
いつも周りの空気を察しているし、そのせいで彼はいじめられていたのだ。
ただレインには恋愛と言うものをあまり分かっていない。
まだ12歳の子どもな上に元は孤児。
戦闘に身を置いているのも相まってそういった事に想いを馳せる暇がないのだ。
だからリオンが王女に敵意を表しているのは察せれても何で怒っているのか分からないのでそのときの状況を素直に言ってしまったのだ。
まぁリオンからすればやるせないかもしれないが。
30分後。
なんだかんだ言いつつも結局はリオンと王女は落ち着き今は普通に会話している。
リオンは元々コミュニケーション力が高いしずっと引きずるタイプでもない。
今は政治の話でキャッキャッと楽しそうに話している。
ちなみにカフとレインの頭から湯気が出始めるのはそう遅い話ではなかった。
本当に謝罪をしたかっただけだったようでリオンと王女の話が一通り済むとお開きとなった。
別れ際にまたレインを中心に一悶着あったが、王女とリオンも先程のように自分の世界に入っていなかったのでじゃれ合っていたのだろう。
レイン達にまた1日平和な時間が刻まれた。
先の戦いを忘れるように。
これからの戦いに備えるように。
コメント、評価などいただけると幸いです




