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悪魔使いの落第者  作者: Bros
第四章 猛者
129/201

#128 ぶちギレ案件

タイトルが物騒ですが、思い付かなかっただけです()

百二十八話です!よろしくお願いします!

大規模なモストロ侵攻から約1ヶ月。

もう王都の復興は終わり、学校が再開された。


とはいえ一週間もすれば夏休みに入る。

夏休みは長く、2ヶ月弱もある。

これはこの学園の生徒には遠方からやってきた生徒もいるので里帰りをゆっくり行えるようにとの配慮だ。


余談だが先の王都に対する大規模なモストロ侵攻は『第1次モストロ侵攻』と名付けられ、王宮内でモストロに対しての警戒が高まっていた。


そして学園再開初日の放課後、レイン組こと『学園防衛団』の部室は騒がしくなっていた………。


「だーかーらー!!そんな依頼引き受けられないっつってんだろ!!!」


「り、リーダー落ち着けよ……」


椅子から立ち上がったカフの怒声が響き、テリアが宥める。

対面には立派な髭を蓄えた男が少し困った顔をして座っていた。


彼は新設された騎士団の団長、ダムだ。

騎士団はこの前の侵攻で大打撃を負い、長年平和だったことで鈍っていた団員はあるものは大怪我を負い、あるものは精神的に追い詰められてしまった。


若いレイン組が頑張っているのに何を追い詰められるのかと思うかもしれないがそれも仕方ない。

モストロとは本来普通の人間では太刀打ち出来ず、しっかり対策をしなければ手も足も出ないような化け物なのだ。


「無理を言っているのは承知している……しかしどうか……私達に対モストロ戦闘の訓練をつけて下さらんか……!」


ダムはカフに深々と頭を下げる。

そう、彼は騎士団を強くするためにレイン組に協力を仰いでいるのだ。


普段のカフなら彼らの前身がレインにした事に怒りながらも了承するだろう。

しかし、今は違っていた。


「何回も言ってるだろうが!!今回の侵攻で組員の親からの抗議が止まなくてそれの対応に追われてるんだ!!この組が崩壊するかもしれない時期なんだぞ!」


カフがそう怒鳴りつける後ろでかなりの組員が急いで手紙を書いていた。

何を隠そう、保護者への謝罪文だ。

今回の侵攻で多くの人々にレイン組の存在が知れ渡り、王宮や学園も改めて必要な組織として認識し、多くの援助金も出ていた。

それだけを聞けば良いことづくめかもしれないが、組員の保護者はそうはいかなかった。


それもそうだろう、平民から貴族まで多くの生徒が在籍するレイン組だ、中には一人っ子もいれば長男などもいる。

家からすれば跡継ぎが前線で命を掛けて戦っているんだ、抗議の一つや二つはしたくもなるだろう。


しかし、もっと厄介なのはレイン組の組員達は組を辞める気がさらさらないからだ。


初期の方からいるメンバーは勿論のこと後から口封じの為に入ってきたメンバーも死線を共に駆け抜けてきた仲間達と離れたがらず、あれほど酷い侵攻にあっていながらも誰一人辞めたいと口にしなかった。


断っておくがレイン組に遠慮なんてものはない。

年上年下関係なく助け合い、そして意見しないと死ぬので遠慮して辞めようとしないなんて事態はない。


何より一度レインから話していたのだ、今回のような事がまたあるかもしれないから一度解散しないか……と。

しかしこれは大反対された。

それはもうものすごい勢いで、レインが半泣きになるくらい大反対だったのだ。


と、このようにレイン組の結束は固い。

だがそのせいで実家と折り合いが付かず、あるところでは一家を巻き込む喧嘩になる……なんてところもあるらしい。


なのでその対応に追われているのだ。

最近カフはほとんど寝れておらず、組員達も訓練なんて出来ていない。

そんな状態で騎士団に教育なんて出来るだろうか?

いや、できない。


だからカフはこうして怒っている訳だ。


「もう帰ってくれ、お前達騎士団が落ちぶれたのはお前達のせいだろォ?まだ何も知らない青二才が団長になって困っているならまだしもアンタ前の騎士団の副団長補佐だったらしいじゃねぇか」


「そ、それを言われると何も言えないな……」


ダムはまた困ったように笑う。

しかしその裏ではかなり冷や汗をかいている。

それもそのはず、先程からカフの魔力が荒れ狂って覇気が漏れているのだ。

いくら団長といえどカフの相手はかなり厳しいだろう、下手な刺激をしてはいけない。


しかしダムは引くわけにはいかない、この交渉を必ず成功させろと軍を統括する機関から指示が出ているのだ。


「で、ですが……」


「あァ!?」


ダムが切り替えそうとしてカフが切れかけたその時。


「邪魔するぞ」


がらりとドアを開けて入ってくる人物がいた。


「あァ?今忙しい……ってアレックスじゃあねぇか」


そう、入ってきた青年は勇者アレックスだった。

勇者アレックスは前にレインと決闘し敗北した後、世界で一番争いの絶えない国へ留学していたのだが先の侵攻の際に早めの夏休みの帰省をしており、レイン組と共に戦ったのだ。


「おやおやカフ君、呼び捨ては些か傲慢じゃないかな?仮にも君のピンチを救った恩人だと言うのに」


「はっ!勝手に言っとけ!てめぇなんかいなくても一人でなんとか出来てたぜ!」


「ふっ……本当にそんなこと言って良いのかな?」


「あん?」


挑発するように言うアレックスをカフが睨み付ける。

そんなカフにアレックスは近づいて耳打ちをする。


「だから~~」


「!!」


アレックスが耳打ちをし終えるとカフは瞳孔を大きく開く。


「……本当か?」


「あぁ、二言はないよ」


「分かった、なら頼む」


「ふっ……君も普段からそうやって素直にしてたら良いのに」


「うるせぇ」


カフが憎まれ口を叩くアレックスを睨み付けると団長に向き直る。


「え、えっと……」


「良いぜ団長さんよォ……依頼を受けてやる」


「ほ、本当ですか!?」


カフは意見を一変させ、ダムは目を輝かせる。

近くにいたテリアも若干びっくりしている。


「まぁ………しかし」


「は、はい…まだなにか?」


「“俺”の訓練は厳しいぞ?」


「へ……?」


カフの台詞と共にぬるい風が彼らのほほを撫でる。

暦は7月を迎えていた。

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