#127 決闘の後 下
百二十七話です!よろしくお願いします!
町の復興が進み既に街灯は息を吹き替えし、暖かい火属性魔法の光を浴びながら俺は自分の部屋に向かっていた。
俺の居る寮はアニキ程ではないものの学園から少し歩く。
だから俺は大体いつも一人で帰宅する。
寂しいとは思わない、存外俺は静かな時間も好きみたいでこうしてゆっくり歩きながら立ち並ぶ家やもう閉店した店を眺めるのが好きだ。
さっき帰り際に組員からアニキが起きたと聞いた。
本当は決闘をしてくれたことにお礼をしたかったけど今はレンが向かっているらしいから後回しにした。
やっぱりアニキは凄かった。
フィジカルは負けてないし負けるとも思っていない。
だけど……心の強さはやっぱりアニキに敵わなかった。
アニキはやっぱり俺達が初めて出会ったときから変わらず……いや、より精神面で強くなっていた。
まぁ、それもそうだ。普段から前線張ってモストロや悪魔を退けたり、あれだけ多くの貴族から非難されたり。
多分悩んだり迷ったり……逃げ出したくなったりしたこともあると思う。
実際今回の決闘でも一合目、アニキの剣から迷いが感じ取れた。
でも二合目には明らかに剣閃が鋭くなって、確実に俺を仕留めようとしているのが分かった。
これがアニキの強みだと俺は思っている。
そしてそれを再確認できた。
俺は決闘の後、完全ではないが心のモヤが晴れたような気がした。
アニキに全力でぶつかったからか心が軽くなったんだ。
「ん……?なんか聞こえるな」
もう日も沈んでいるのに路地の方から何か聞こえる。
………万が一モストロだったら対処しなきゃならねぇ。
「にゃぁぁお」
「……ん?」
路地にいたのは小さな子猫だった。
随分体が汚れててフラフラ歩いている。
「おいお前……一体どうしたんだ」
「にゃぁぁおおお…」
やべぇ、猫語は分からねぇぞ………。
仕方ねぇ、一旦部屋に連れていくか。
確かペットは……大丈夫だったよな、召喚士とかも居る寮だし。
「ちょっと抱えるぞ」
「にゃあ…」
俺が子猫を抱きかかえるとそいつはスヤスヤ眠りだした。
よっぽど疲れてたのか全く起きる気配がねぇ。
「家に牛乳と肉……あったかなぁ……」
俺はそう呟きながら早足で寮に向かった。
─────────
部屋に帰った俺はたまたまあった豚肉を魔法で固くならないように火を通して寄生虫を殺すと子猫に与えた。
与えた途端ガツガツ食いだして近くに置いてやった牧場から貰っていた牛乳をあっという間に飲み干した。
「にゃげふ……」
「お、お前……普段の俺より食うんだな……」
戦闘直後の俺よりは流石に量は少ないが一般的な男子を軽く上回るような量の肉と牛乳を平らげた。
余程腹が減っていたんだろう、食い終わると満足そうにしてゴロゴロ喉を鳴らし始めた。
そんな子猫を尻目に皿を洗ってソファーに座っていると子猫が膝に乗ってきて体を丸めた。
「にゃ~」
「ん?どうした?」
こちらをみて何か訴えるように鳴く子猫。
「な~」
「いや寝るのかよ」
しかし眠気には逆らえないようですぐに寝てしまった。
あっという間にスゥスゥと寝息を立て始め、子猫の体温がだんだん上がる。
「………まさかコイツ俺の事親と思っているんじゃないだろうな……」
路地にいた時の事を思い返すと近くに誰かがこの子猫を捨てた形跡や親猫が近くにいる気配もなかった。
恐らくだがこの子猫は生まれてすぐに親が死んだか親とはぐれたんだろう。
そうじゃないとこうもあっさり懐くこともない。
しかしそれならそれで良く生きていられたなと思う。
「あ~やっべ、思考が纏まらねぇわ」
俺は考えが纏まらないのに考察する意味もないと自分に言い聞かせると子猫を抱きかかえたままベッドに行って意識を手放した。
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