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悪魔使いの落第者  作者: Bros
第四章 猛者
123/201

#122 求める理想

百十二話です、よろしくお願いします!

『エレボス』の襲撃で町がめちゃくちゃになってから二週間。

宮廷所属の魔法師団の奮闘によって町の8割が復興した。

なんでも『レイン組』の戦いを見て対抗心を燃やし、かなり無理な突貫工事をしたのだとか。

お陰で町には再び活気が戻り、人々の心も癒え始めていた。


そんな中、『レイン組』総長のカフは学園の裏庭で一人修練に打ち込んでいた。


「ッらッ!!!」


手刀を打ち込み、直径1メートルの岩を難なく破壊する。

暑くて脱いだのか上半身が裸なため、彼の鍛え上げられた筋肉から濁流のように汗が流れていた。


「…………ダメだ……こんな力じゃ足りねぇ」


カフはタオルで体中の汗を拭き取ると側にあった水筒の水を滝飲みし、ため息をつく。

柱時計をふと見ると時刻は昼の3時を指していた。


今日は平日であるが町の復興などの関係で学校は三週間の休みとなっている。

もとより今の期間は授業の補充期間だったので再開してから一週間すれぱ夏休みに入る。


なので今ほとんど学校には生徒がいない。

そんな中、カフは襲撃が終わった次の日から今まで毎日日が昇る前から日が落ちきった後まで修練をしていた。


カフは今回の騒動で力不足を感じていた。

と……言えば大半の人はそんな事はないと否定するだろう。

カフは勇者とタッグを組んだといえど『六仙』のオズキを撤退させ、各地のモストロを殲滅していったのだ。

十分すぎる成果である上、カフによって命を救われた住人も多く存在し感謝の手紙なども届いていた。

しかし、それでもカフは力不足だと判断していた。


カフは良くも悪くも親分肌な人物だ。

自分の仲間を大切にし、決断も早く人望も厚い。

反面、直情的で周りが見えないことが多く指揮をテリアに頼ることも多い。

そんな中で彼は自分の取り柄であった武力という点で勇者に追い抜かれている感覚があったのだ。


勇者は『レイン組』ではないがそういうことではない。

指揮をロクに取ることもできず、単体でオズキを撤退させられなかった自分を許せていなかったのだ。

オズキを単体で撤退させることができる人間など王都には一握りしかいないがそれでも彼は自分を鍛え上げる必要があると判断したのだ。


「クソッ………!!」


その悔しさを思い出し、カフは地面に拳を打ち付ける。


そんなカフに一人の女性が近づいてくる。

リファだ。


「少し無理し過ぎなんじゃないの?」


リファの言葉にカフはまた悔しそうに奥歯を噛み締める。

リファはため息を一つ吐くと飲み物とカットされた果物の盛り合わせを渡す。


「少し休憩しましょ?ね?」


「………おう」


幼なじみに言われると流石に引けないのか、カフは静かに果物を食べ始めた。


「なんでそんなに焦ってるの?貴方、直情的だけどいつもこんなに焦ってはないじゃない」


「…………悔しいんだよ」


「悔しい……」


「あぁ……今まで俺は…兄貴の右腕になっているつもりだった」


「つもりも何も周りから見たらそう見えるわよ?」


「いや……違うんだよ。俺ぁ兄貴の右腕なんかになれてねぇ」


カフは拳をギュッと握る。


「兄貴は…俺が出会った時からずっとずっと自分と闘ってきているんだ」


「レインさんが…?」


「あぁ…俺が喧嘩売ったときも、勇者と対峙した時も、モストロと戦うときも、多分今回の騒動でも」


カフは今回におけるレインの戦いを見ていないが確信していた。


「兄貴は元々人と戦いたいなんて考える人じゃあねぇ。優しくて、優しくて……いじめてた俺を許して今、仲間にさえなっている」


「でもよ」


カフは拳を緩めて空を見上げる。


「兄貴は……いつもいつも自分の戦いたくないって感情を押し退けて戦ってるんだ。正直、生身では俺よりも弱い兄貴が先頭切って皆を守るために戦ってるんだ」


「勇者との決闘でそれを知ったときは衝撃だったよ」


カフは目を瞑り、当時の光景を思い浮かべる。


『おいらは目の前で苦しんでいる人を助けたくてあの力に手を出した!それを卑怯と言われても!おいらはその力で戦う!』

『おいらはもう後悔したくはない!誰かを犠牲にして、後悔して、悲しみの連鎖を見ておくだけなんて、おいらには出来ない!!』

『それでも!おいらは助けたい!エゴと言われても!偽善と言われてもおいらはおいらの………正義を貫くッ!』


「あの時兄貴が反論する前、あの人はすっげぇ震えてたんだよ」


「レインさんが震えてた…?」


リファは『レイン組』の一員であったが、レインを兄貴分にして入ったカフ達についてきただけなので気が付かなかったのだろう。


「本当にすっげぇ震えてたんだよ、それこそ生まれたばっかの赤子みてぇにな」


カフはだけどよ…と続ける


「あの人は一気に震えを止めて……戦う覚悟を決めてあぁやって勇者に立ち向かったんだ」

「すげぇ…って思ったよ。さっきまでウサギみたいに…赤ん坊みたいに震えてたのに虚勢でも大声張ってあの勇者に挑んだんだからよ」


リファは初めて知るものの数々に目を丸くしている。


「あの人は常に迷ってる。戦うべきか、戦わないべきか…もっといえば」

「殺すべきか殺さないべきか」


「殺す……?レインさんが…?」


「モストロだって恐らく命があるものもいる。明確に敵意識を向けてくる個体も俺は見たことがある」

「多分……モストロの中には元は生き物だったやつも多いんだろうな。」


カフは拳をまた握る。


「ある時気づいちまったんだよ。銀狼……フェンリルと戦った時、致命的な攻撃を与えたときにやつは必ず苦しそうに顔を歪めたんだ。そういった個体数の少ないやつは感情を見せたんだよ」


「確かに……ゴブリン型のような大量繁殖したモストロには感情が見えなかった………」


「下級悪魔どもが言うように地面から生えるのも正解なのかもしれないがリオン姐さんの件もある、動物だけでなく人がモストロになっていてもおかしくはない」


カフの言葉にリファは瞳孔を大きく開く。


「兄貴はそのことも多分分かってる。分かった上で戦ってるんだ。誰も傷付けないために」


「だからカガリを毎度説得しようとしているんだ。モストロみたいに本能で動いていなくてまだ理性が残っているからな」


リファは周りほどレインを知らない。

だからこそ衝撃だった。

いつもポワポワしているレインが自分では到底割りきれないような事を割りきり、戦う覚悟を決めていた。


リファはまた悔しそうにしているカフを眺めながら何も言えなかった。

コメント、評価などいただけると幸いです

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