#118 語られる真実
百十八話です!よろしくお願いします!
目の前に現れたオニオという存在。
悪魔のようだし恐らくラディの仲間……なんだろう。
となると当然警戒しないといけないけんど、おいらの体がもたなかったのか『ファントムサモナー』が解除され、甲冑が霧散する。
「………!」
「ほう……時間切れでしたか……」
冷静に問うてくるオニオの不気味な笑顔に気圧される。
そして同時に強い倦怠感がおいらを襲う。
「ぐっ………!」
「レインさん!」
第2王女さんが支えてくれるけんど、もうそれがないと顔を上げていられないくらい、おいらの体に疲労が蓄積していた。
「ふふふふふふ………」
「な……何がおかしいんだよぉ……!」
「いや失礼………、いやはやラディが私にここまで用意をしてくれるとは………あんなガキにも使い道はあったんですねぇ…」
「ラディが……ガキ……?」
「おや、知らなかったのですか?」
「アイツはほんの数百年前、人間に奴隷として使い回されていたガキに我々の『王』が力を与えて誕生した悪魔なのですよ……」
「っ!!!」
レインに衝撃が走る。
テリア君が言っていたラディはヒトでは無く悪魔でもないという意味がようやく分かった。
「まぁ……あんな能無しでもそこそこ役には立ちましたがね、こうして王国も滅亡寸前まで追い詰めた」
オニオはそして……と続ける。
「『ファントムシリーズ量産型』も完成させた」
オニオの後ろからカガリさんと狼人間が出てくる。
多分、皆が言っていたフェンリルというモストロだ。
「このフェンリルは実験台だが我々の技術でヒトを相当な戦力に変えることが可能とわかったし、何より憎き『ファントムシリーズ』を掌握することも出来た。」
つまり……オニオが言いたいのはこうだ。
お前たちの技術を完全に理解した我々は負けない。
それはお前がさっき倒したラディの成したことであると。
それを認めつつオニオは能無しと呼んだ。
「キミは……随分冷酷なんだねぇ…」
おいらがそう言うとオニオは失笑した。
「冷酷?冗談はよして欲しいですねぇ………」
オニオは背中から生えている黒い翼を羽ばたかせて飛び上がる。
「貴方たち同様の雑魚にかける情けなどないですよ」
その言葉と同時にオニオがこちらへ急速接近する。
もうおいらに戦う体力も気力もない、なんとか第2王女さんと第3王女を庇うと死を覚悟して目を瞑った。
「ハッハッハ……情けないな悪魔の小手を繰る者よ」
聞こえてきたのは自分の背中が引き裂かれる音ではなく、カラカラと笑う聞き覚えのある声だった。
「キミは────」
「おっと……しりあすな状況で貴様にまた漫才をされると折角の我の登場が無駄になるから少し口を謹んでもらおうか。」
そうおどける声の主に攻撃が通らなかったことに驚きつつも間合いを取ったオニオが物語などで常套な台詞を言う。
「何者だ!」
「ほう?らでぃの時は諦めていたが存外悪魔は解っているらしい」
声の主は少し嬉しそうにそう呟くと声を張り上げた。
「我の名は地獄の使者、ハヤテ!!」
「命を頂戴するぞ、悪魔オニオ」
ハヤテは薙刀の切っ先をオニオに向けて高らかに宣言した。
────────────
私、ダーナは目の前の状況に困惑していた。
私がつい最近まで虐げていた男の子が私を死地から救ってくれた。
全く理解出来なかった。
私は悪魔に唆され、愛すべき民に対して死刑を求刑し、更には父上にも逆らった。
思えばあの時私を止め、裁判を先延ばしにした父上は彼が必ずこの国の戦力になり裏切るような方ではないと見破っていたのだろう。
だからこそ自分が情けなかった。
私は、自分の主観のみで彼を悪と決めつけてなんの検証もせずに同年代の民を殺そうとした。
いくらお兄様に扮してたと言えどもそれに異を唱え、反論しなかったのはちゃんと彼を………レインさんを自分で見定めなかったからだ。
だからこそ、図々しいけど私は彼の力に頼って、皆を守ろうとした。
「待ちなさい!!悪魔!!」
これで失敗したら私は確実に死んでしまう。
でもそれは受け入れなければならない。
私より幼い妹はきっとこれからのこの国に必要不可欠だ。
「私はこの国の王族。私には、民を守る義務がある。」
「でもそんな私は貴方に踊らされて、大切な民を処刑しろとまで口走った。」
「なら、私がするべきことはなにか」
「レインさん、貴方が国を脅かそうとする存在でないのは今助けて貰った経緯も含めて理解しました。」
「ですから早く逃げなさい。私が大した抵抗が出来ずに死んだとしても貴方はその間に仲間を集めてください」
あーあ、言っちゃった。
羊頭の悪魔は案の定、私に向かってすっ飛んでくる。
でも………私はこうしなければならなかった。
レインさんは間違いなくこの国の切り札になる。ここで失ってはならない。
だけど……少しの可能性に賭けたくて私はレインさんにウインクを飛ばした。
「良いから行きなさい!!」
凶悪な刃がもうそこまで迫っているというのに私は怯まずそう叫んだ。
私は期待していたのだろう。
勝手な話だ。私にはレインさんに助けてもらう義理なんてどこにもないのに。
だけど………
「やっぱり………やってくれると信じてたわ」
泣きそうになる。
彼の優しさがこの瞬間に体に流れ込んでくる。
私がしてしまったことの後悔と彼からの優しさを受けたこと嬉しさで心の中はかき乱され、ついつい目頭が熱くなる。
私が昔から好んで読んでいた絵本。
それに出てくる王子様のように彼は白馬にも乗っていないし、正直パッとしない見た目をしている。
だけど、この瞬間は確実に
「おいらが成長したのは攻撃力やスピードだけじゃないん………んだよぉ」
彼はヒーローだった。
評価コメントなどいただけると幸いです。




