転生したらゲームの裏ボスでした!?
「ああああああああああっ!」
私の絶叫が響き渡る。
声の感じも瑠那の頃とは比べて高いのか、余計にうるさく感じた。
しかし、そんなことを気にしている場合ではない。
私が絶叫したのは思い出したからだ。
「これって……私が前にやってたゲームの、裏ボス?」
私が以前プレイしていたゲーム。
剣あり魔法あり、勇者である主人公を操作しながら仲間を集めてレベルを上げて魔王を倒す旅をするファンタジーゲーム。
そのゲームでラスボスである魔王を倒した後に解禁されるストーリーを消化したら戦うことのできる隠裏ボス……で間違いないはず。
思い出したと言いつつも確信が持てていないのはこのキャラの性能に問題があった。
「このキャラ、他のキャラに変身するから顔とか知らなかったけど、まさかこんな美少女だったなんて……」
このキャラの能力はコピー能力。
それもスキルやステータスなどをコピーするだけではなく、コピー元の容姿なども真似されるのだ。
つまりこのキャラはゲームの中で本当の姿をあらわにしたことがない。
だから、容姿と名前が結びつかず思い出すのに時間がかかってしまったのだ。
「このゲームの画集と設定集を読んでなかったら分からなかったよ。本当の姿は端っこの方に小さく描かれていただけだけど、この目は印象的だから覚えてたんだ」
このキャラ……クラリスはゲーム上での名前表示こそそのままだが、画面に映るグラフィックは仲間に編成してあるメンバーの誰かになる。
しかし、姿を変えてもその目の渦巻き模様だけは変化しなかった。
思いもよらぬ判断材料だったけど、鏡に映ったこの目がなければ気付かなかっただろう。
「え、ということは私……ゲームの世界でクラリスになっちゃったってこと?」
一つ謎が解けてほっと胸を撫で下ろすのもつかの間、私は肝心なことに気付いて引きつったような声を上げた。
私が誰なのかは分かった。ではここはどこなのか。
それはどうしてこんなことになっているのかという疑問と同列のもの。
はっとした私は慌ててカーテンと窓を開けて身を乗り出すようにして外を見た。
私の目に入ってきたのは辺り一面に広がる緑。
ふと吹いた風が木々の葉を優しく揺らしていた。
「やっぱり…………ここは迷いの森だ。ということは私……本当に?」
私が目覚めたこの家は迷いの森の奥にあるクラリスの家で間違いない。
ゲームでも迷いながらやっとの思いでたどり着いた苦い記憶がある。
どうしよう。
拝啓、お父さん、お母さん。
如月瑠那、十六歳。
ゲームの世界に転生して、あろうことか裏ボスになってしまいました。