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「犬が首を吊っている」
誰も顔を合わせやしないこの閉じ込められた部屋で
天井の電気のスイッチ紐に絡まり
犬が首を吊っている
その顔には何の表情も浮かべていない
その様子からは何の意志も感じられない
誰の仕業なのか、もはや誰もが忘れてしまったが
天井の電気のスイッチ紐に絡まり
犬が首を吊っている
その身体はもう動こうともしていない
その様子からは一切の生気も感じられない
その犬はもう時間を失くしたようだった
無垢な息、瞳の輝き、微かな温かみ
それら全てを奪われたのだろう
その犬は確かに首を吊っているが
もはや誰も見ようとはしない
無き者としているのだろう
不自然な明かりの点いたこの部屋で
鳴くことも、抗うこともせず
その身体は空中で時を止めている




