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最強魔王の異世界単身赴任  作者: 怪ジーン
第一部 自宅にて
8/15

異世界サザービ 四話 ウサギにゴミ箱はお似合いだ

「いつでもかかって来てもよいぞ。勇者ハーネス」


 懐かしい台詞に、ついつい目を瞑り昔を思い出してしまう。

そう言えば、ワシが魔王していた時も、こうして勇者と対峙して似た台詞を吐いたものだ。

このあと勇者が「いくぞ!! 魔王ガルドラぁ!!」とかかって来るのだろな。


 おっと、いかん。戦闘前だったな。ワシは再び、目を開け勇者を見る。

あれ? おらんぞ?


「くそ! これなら、どうだ!?」


 ワシの足元から勇者の声が聞こえ、視線を落とすと丁度剣を突こうして体勢を低くしている勇者が。

勇者の狙いは、どうやらワシの股間らしい。

いつの間に戦闘始まったのだ。


「くそ! ここも駄目か! 堅い!!」


 ワシの股間を突いても剣が弾かれ、勇者は一旦距離を取る。


「何を勝手に戦闘を始めておる。目を瞑っているワシを攻撃するなど卑怯千万!!」

「何言ってやがる!? いつでもかかって来いって言ったのわお前だろ」


 言った。確かにワシ、言ったわ。でも、いきなり攻撃とか股間狙うとか卑怯過ぎないか? 何、その所業。勇者が魔王側の事しちゃ駄目だろうが。


「確かに言ったな。しかし、お主勇──」


 勇者の奴、ワシの言葉を遮るように飛びかかって連撃、連撃と斬撃の嵐を繰り出す。

まぁ、一向に斬れる気配は無いがな。

ワシの世界の勇者は、持っておった剣が優秀だったな。

ワシの身に傷をつける事が可能だったし。

しかし、この目の前の勇者は武器も貧弱だな。


「はぁ……はぁ、くそ! 通じねぇ」

「終わりか? では、そろそろワシから行くぞ。まだ死ぬなよ」


 ワシは腕組みを解くと腕を、だらんと脱力する。

そして一瞬で勇者の懐に入り込むと、照準を勇者の額に合わせる。


 右手の親指で人差し指で輪を作ると、勇者の額に目掛けて人差し指を弾いた。


「ぐわぁぁぁぁっ……!!!!」


 額を小突かれた勇者は、部屋の奥にまで転がりながら、壁に激突する。

まさか、もう死んではおらぬだろうな。

しかし、弱すぎる。

この世界の勇者は強いと聞かせておいて、蓋を開けたらこれか。


 タツオを睨み付けるが、タツオの奴、床で気持ち良さそうに寝てやがる。

行儀悪いな。いや、ウサギだからあれで合っているのか。

いや、でも普通のウサギではないし……

ああ、もうわからん。ひとまず後で拳骨落としてやる。


 どうも消化不良でワシはまず勇者に止めをと、倒れている勇者の近くに来て気づく。

こやつ、剣を手放さないように、右手と剣を布で縛っておる。


 ふむ。その心意気や良し! お? 目を覚ましたのか立ち上がろうとしておる。

ま、脳を揺らしたからな。そうそう簡単に──簡単に立ち上がりよった……


 剣を支えに立ち上がった勇者の目を見て気づく。


 こやつ、ワシを見ておらん!


「いいぞ! その目! 全力をもって応えよう」


 ワシは全力を出す為に、本来の姿に戻ろうとする。

しかし「ま、待ってくれ!!」と止めるではないか。あんまりガッカリさせるなよ、勇者。

しかし、勇者から出た次の言葉は意外なものだった。


「俺を……俺を鍛えてくれ!!」


 え~っ? 意味がわからん。何故、ワシが勇者を鍛えねばならぬのだ。


「俺は……俺は、まだ死ねないんだ! あいつらに復讐するまでは!!」


 なるほど、あの復讐者のスキルは、これか。しかし、ワシには関係の無い話だ。

ワシをガッカリさせた罪は重いぞ、勇者。


「頼む! 俺は、俺をパーティーから追い出したあいつらに復讐したいんだ! そのためになら悪魔だろうと魔王にだって魂を売ってやる!!」


 ほう。だかれ一人で城下町の前でウロウロしておったのか。ん! ワシ、いいこと思い付いたぞ。


「わかった。お前を鍛えてやろう。ただし! お前には人間を辞めてもらうがな」

「あいつらに復讐出来るなら、なんにだってなってやる!」

「なら、お前がこの世界の魔王になれ」

「何言ってるですー!」


 お、タツオの奴やっと起きたのか。しかし、ワシの提案に文句をつけるなど、許さん。


「そんな……そんな、若い魔王になったら、ワイ、働かないといけないですー!!」

「いや、働けば良いだろ?」

「嫌です、嫌です! 働きたくないですー! 年金で優雅に暮らすのですー! こんな人が魔王になったらきっと重労働強いられるですー!」


 地べたに転がり駄々っ子か、お前は。ほら、勇者を見てみろ。冷めた目で見ておるだろうが。


「えーっと、魔王……」

「ガルドラだ。ガルドラで構わぬ」

「一応教えを乞う身だからな、ガルドラさんて呼ばせてもらう。ガルドラさん、俺が魔王になったらな、真っ先にアイツクビにするわ」


 当然といえば当然か。タツオが立ち上がり、此方を睨んできている。何か文句あんのか、こら?


「ううー……こ、こっちから願い下げです。あほー、おたんこなす、お前の嫁さんでーべーそ」


 舌を出し逃げ出すタツオ。逃がす気など更々ないがな。

ワシは部屋を飛び出そうとするタツオの耳を掴み持ち上げる。


「お前が居なくては、ワシが帰れぬだろうが!」

「はっ! そうです! ワイも一緒に行くです。ワイを雇ってくださいです」

「要らぬわ。大体、ワシがナツの悪口を言われて怒って無いとでも思ったのか、この馬鹿もんが」


 ワシに耳を掴まれ、「痛い、痛い、千切れるです」と叫び暴れるタツオをどうするか部屋を見渡す。

お、いいものがあった。


「どうして、またゴミ箱ですー?」


 すっぽりとゴミ箱に入ったタツオは、暫く放っておくとして、さぁ、勇者を鍛えるぞ。

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