表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強魔王の異世界単身赴任  作者: 怪ジーン
第一部 自宅にて
2/15

自宅一話 ワシ、元魔王のガルドラ。よろしく。

 相も変わらず退屈な日々が続く。


 ワシは天蓋付きのベッドから体を起こし、一つ大きな欠伸をすると隣で寝ている嫁、ナツの顔を見る。

すやすやと寝息を立てるナツの顔は、普段と違い幼さを感じる。

確か人間の年で十四だったか。

人間を辞めた際に身体の成長が止まっておるしな。


「こうして寝ている分には、可愛いのだがな」


 ワシはベッドから降りて近くにあった真っ白なガウンを羽織ると、窓から外の景色を眺める。


 外は赤く輝く月が沈みかけ、闇夜が迫っていた。

月が沈み夜が来るのは、ワシがこの世界に日の光を奪った為だ。

まぁ、ワシが征服し終えたらこうなっただけで、何もしとらんがな。

街の通りには、人間と魔物が闊歩している。

勘違いしてもらっては、困るがワシは人間を滅ぼそうとか、奴隷にして強制に労働させようなんぞ思った事は無いからな。

だからと言って、人間が好きな訳ではないぞ。


 ワシは嫁を起こさぬように寝室をこっそりと出ると、ゴブリンの使用人を捕まえてメシの用意をするように命令する。


 現在この家にいるのはワシと嫁のナツ、あとはゴブリンの使用人が数人。

嫁が嫌うので、この家には女性が全くおらん。

征服した直後に描いた未来と随分違うな。

もっとウハウハでキャッキャッウフフを描いていたのだが。



◇◇◇



 ワシは一人メシを食べ終え自室に入り書類を整理する。

書類と言っても、仕事ではなく、この街に住む者からの嘆願書みたいなものだ。

ワシの所に来て、息子に回す。

非常に手間だ。直接息子の方に持っていけと思う。

ワシ隠居したし、もう魔王でもないのだが。


 嫁のナツの起床は遅い。まだ起きてこぬ。

昨日散々暴れたからな、疲れておるのだろう。

元人間、しかも成長期を終えずに成長を止めたナツは、魔族が持つ魔力の絶対量が少なく、睡眠で回復するしかない。


「あと二時間は起きて来ぬな」


 昨日のナツの様子からワシは時計を見て、そう判断した。


 ナツが寝ている間に外出すればいいと思うだろうが、ワシは二度とやらない。

一度幼かった息子を連れて外出し、帰宅したら玄関で赤子の様に号泣しておった。

何だかんだ言っても、嫁の涙は見たくないのだ。

だからナツが寝ている間に外に出ようとは思わぬ。

出るならナツが起きている間だ。


 ワシは淡々と書類を整理しながら、机の上に積み重ねられた本も本棚に仕舞っていく。


「ん? なんだこれは?」


 書類を整理しておると、机の上に見覚えのない手紙が。

ワシは手紙の差出人を確認するが書いていない。

表には“ガルドラ様へ”としか書いておらぬ。


 心当たりを探ってみる。


 心当たりその一、息子。考えられなくもない。可能性としては金の無心だろうな。

息子の嫁もナツに負けず劣らず、旦那を尻に敷いておる。

しかもナツと違い、金遣いが荒い。


「いや、待てよ。息子がワシを“ガルドラ様”と呼ぶか? いや、呼ばんな」


 次、心当たりその二、嫁ナツ。そう言えば、ナツは結婚当初、ワシを“ガルドラ様”と呼んでいた……だとすると、これは、まさか!? ラブレター!? 結婚七十四年目の!? キリ悪っ! 五十年目ならまだしも。


「良く見たら筆跡が違うな。ナツはもっと丸っこい字だ」


 ならば、心当たりその三、使用人のゴブリンの誰か。可能性はあるな。給料上げろとか、休みを増やせとかそんな内容だろう。しかし……


「ゴブリンは字が書けないから違うな」


 そうなるとワシには心当たりがない。一瞬、ワシに惚れた美女からのラブレターかと思ったが、ワシ、外に出てないから可能性ゼロだな。


 開けた方が手っ取り早いか。


「ペーパーナイフ、ペーパーナイフと」


 見当たらんな。鏡台だったかな。


 ワシは机の引き出しを探すのを諦め、鏡台の引き出しに手をかける。


「ん? おっと、いかん、いかん」


 ワシは鏡台の鏡に写った自分を見て、慌てる。

身嗜みを整えるのを忘れとった。

顎に髭もうっすらと伸びておる。

鏡に写る自分を見ながら、銀色の前髪を全て後ろに流し固め、髭を剃る。


 ワシは髭があった方がダンディーだと思うのだが、ナツが嫌うのでな、剃ることにしておる。


 身嗜みを整えた後、鏡に向けて様々な角度から自分の姿を確認する。


「うむ、やっぱりワシ、渋いな。しかし、ナツは何故この姿が良いのだろうか」


 ワシは普段、人間とそう変わらぬ姿に擬態しとる。

確かにこちらも渋くて格好いいが、元の姿も負けておらぬぞ。


「そういや、ワシ何をしとったんだっけ?」


 うーむ、お、もうそろそろナツが起きてくる時間だ。

目覚めの紅茶を用意してやらねば。


 ワシはそのまま自室を後にした。


 ……

 …………

 ………………


 危ねー、ワシとしたことが手紙をすっかり忘れとった。


 急いで引き返し自室の扉を開けると、すぐに鏡台の引き出しを探る。


「あった! ペーパーナイフ」


 ワシは、丁寧に手紙の封を切ると、中に入っていた一枚の便箋を取り出す。


 折り畳まれた便箋を開くと、そこには……


「ウサギ……か?」


 そう呟くと、便箋に描かれたウサギの絵が輝き出す。


「な、なんだ!?」


 思わず便箋を手放し、ヒラヒラと床へ落ちていく。

床に便箋が付いた瞬間、ものすごい煙が部屋の中を充満する。


 煙を手で払いのけ視界を確保すると、ワシの足元には便箋に描かれたウサギ……否、ウサギの様な生き物が燕尾服を着て立っておった。

元魔王ガルドラ 


レベル999


体力9999

魔力9999

物理攻撃力7999

魔法攻撃力9990

物理防御力9500

魔法防御力9999


スキル


物理耐性99 魔法耐性99 物理貫通 魔法貫通


闇魔法 光魔法 四属性魔法(火、水、風、土)


詠唱破棄 同時詠唱4 超速回復(体力・魔力)


万能言語 鑑定 纏炎

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「追放された幼女(ロリ)は、青年と静かに暮らしたいのに」こちらもよろしく ↑代表作。↓面白いと思って頂けたらクリックでランキングに投票を。 小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ