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最強魔王の異世界単身赴任  作者: 怪ジーン
第一部 自宅にて
12/15

異世界サザービ 三日目 二話 どうするべきか……

 ハーネスの奴、張り切っておるな。


 サバ村に到着したワシらは、まず服装を揃えて身だしなみを魔王っぽくしなければと、唯一の雑貨屋に向かうつもりだったのだが。


「魔物が現れたぞー!」


 村に入って早々にバレてしまった。一人の若者が仲間を呼びに叫びながら立ち去ってしまった。


「いきなり戦闘です!」


 ああ……このゴミ箱も魔物ということを忘れておったわ。

どうやら村の若者は、タツオを見て仲間を呼びに行ったのだな。


 と物思いに更けていると、ゾロゾロとまぁ、集まる集まる。

ワシにとっては容易いが、ここはハーネスに任せるとするか。


「お前、ハーネス!! よくもこの村にノコノコと顔を出せたな! 魔物を連れているところを見ると、やはり人間を裏切ったか」


 こいつは一体この村で何をやらかしたのか。しかも人間を裏切るなんて、滅多に無いはずだ。

それすら、予想されておるとは。


「うるせー! 人を散々こけにして!! お前らの命も今日までだ!!」


 ハーネスが憤り、今にも突っ込みそうな勢いで捲し立てる。

少し心配して村人達を見るが、それほど大した装備ではない。

今のハーネスには、ろくに通じないだろう。


 それ以外にも気になったことがある。先ほど仲間を呼びに行った若者の姿がない。

年寄りですらチラホラと見受けられるのに、若者がいない事が余計に気になるのだ。


「そっちの背の高いの!!」

「ワシのことか?」

「お前、ハーネスの仲間か? 違うのだったら逃げてくれ! 巻き込まれても知らんぞ」


  さて、どうしたものか。仲間と言えば仲間なのだが、ハーネス(こいつ)と一緒にされたくないしな。


「安心しろ。ワシは一切手を出さぬ。ハーネスが負けてもワシは一向に知らぬ」


 村人を睨み付けてやると、怯え出す。先ほどの威勢のいい啖呵は、切らぬのか?


「本当だな、本当に手を出さないんだな」

「出さんよ」


 ワシは腕組みをして仁王立ちになり、目をつぶる。


「くっ、余裕見せやがって。かかれー! 恥知らずなハーネスを倒せぇ!」


 ハーネスとサバ村、およそ五十人の村人との火蓋が切って落とされた。


「ふはははは! そんな、攻撃俺には効かねーぞ!」

「くっ! 刃物が通らない!!」


 ハーネスの防御力は高く攻撃が通じないが、村人も同じだった。ハーネスの攻撃は弱く村人に通じない。


 膠着状態が続く中、何やらワシの後方から視線を感じる。

まさか村人が襲ってくるのかと、背後に注意していたがどうもそうではないらしい。


 ワシが後ろを振り返ると、誰もいない。しかし、間違いなく視線を感じる。


 茅葺き屋根の古い家屋があり、どうやらそこから見ているようだ。

ハーネスの方を見ると、村人の数は減っている。

ハーネスの足元には、怪我をして動けぬ者が増えてきた。


 大丈夫だなとワシは気になった家屋への側に行き木の柵で閉じられている窓から、中を覗きこむ。


「誰もおらぬ」


 家屋の中は荒れていて、家財道具が散乱しており長年ここが使われていない様子だ。

入口へと回ると、扉は閉められているが違和感を感じた。


「鍵が新しい?」


 扉を閉めている鍵が、まだ新しく取り替えられていると思ったのだ。


 ワシは家の周りをぐるりと回るが、他におかしな所はない。

村人やハーネス達の方を見るが、お互い必死でワシのことに気づいていない。


「入るか」


 ワシは力づくで扉をこじ開けて家屋の中へと入っていく。

埃が被った家財道具が散乱しているだけ。


 他の部屋を見て回るが、これといっておかしな点はない。

だが、ワシは違和感が止まらない。

こういう時の直感は、大事だ。

散々ナツに鍛えられたからな、怒られそうな時に。


 一階建ての平屋なのだが、妙に狭く感じたのだ。家の作りは正方形。

しかし、その内四分の三ほどしか広さがない。


「ここか……」


 ワシは古びた本棚の前に立つ。こういう時は大抵……


「やはりな」


 上手く誤魔化しているようだが、本棚の縁に埃が無い箇所がある。

最近誰かが触れたからか。


 ワシは本棚を力一杯動かすと、本棚は壁にぶつかり壊れる。


「やり過ぎた……うん?」


 隠し部屋には地下への階段が。ランプみたいなものはない。


「ワシの事にまだ気づいておらぬな」


 ハーネスや村人を木の柵になっている窓から確認すると、ワシは地下へと降りていく。


 暗い。ああ、そうか。ワシ、炎が出せたわ。しばらく使っていないとたまにこういう事があって困りものだな。


 スキル“纏炎”を右手に灯すと、一気に暗闇が晴れる。

そして、ワシがそこで見たのは牢に入れられ猿ぐつわをされている一糸纏わぬ少女が。


 人の(なり)した種族かと思えば……こやつ、人間か。


 体には痣があり暴力を振るわれている可能性があるし、何より……


「慰みに扱われたか」


 最初は奴隷かと思ったが首輪もなく、手枷をして逃げられないようにしている。


 ワシは力づくで牢をこじ開ける。少女は、隅っこに逃げて怯えた目をしている。

もしかしてワシに襲われるとでも思っておるのか?


 少女に一歩近づくと、涙目で首を横に振る。


「安心しろ。襲うつもりはない」


 声をかけてやるが、変化はない。怯えはあるものの目は死んでおらず、どうやら最近ここに閉じ込められたみたいに見える。


 ワシはとうとう、少女を端に追い詰める。いや、襲わんよ、本当。

確かにちょーっと若い女性とお喋りしたいが、流石に若すぎる。


 ワシが手錠を掴むと、首を振りイヤイヤと無言で暴れる。

そして、そのまま手枷を握りつぶし、猿ぐつわを取ってやると静かにするように小声で伝える。


「安心しろ。逃がしてやるから」


 少女は、始め何が起こったのかわからず、呆然としていたが、徐々に状況を把握すると、ワシに何度も頭を下げる。


 ワシが先行して様子を見ながら家屋の外へと出ていく。


「ほら、早く逃げろ」


 しかし、少女はワシの服を掴んで離れない。


 あれ、懐かれた?


来週から火、金の週二回更新に変わります_(._.)_

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