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第九十六話 かあちゃんの魔法教室・闇


 マークとマリーの二人には、少し休憩したら畑仕事に回ってもらうようにお願いした。


 次は闇属性の二人だな。

 呼びに行くついでに進捗も確認しておこうと畑に向かう。


「バズ、ご苦労さま。光属性の勉強会は終わったよ。少し休憩したらマークとマリーも戻ってくると思う。次はティナとキティに教えたいんだけど、抜けても大丈夫? 捗り具合はどう?」


「今日は片付けだけだからね。みんなでやってるから、すごく進んでるよ。午前中には全部片付くと思う。ティナとキティだね。大丈夫、呼んでくるね」


 午前中で畑の方が片付くなら、午後は干物作りが出来そうかな。昼食後に作り方を教えると、今度は火と風の子たちが忙しくなるだろう。

 午後は土と水の勉強会をしよう。



「モモ! 今度は私たち?」

「よっし、頑張るぞー!」


 ワクワクを隠しきれない二人がやって来た。


 この二人には理詰めは向いてなさそう。

 ちょっと物騒だけど、ティナに(トラップ)を教えた時のように、実際に体験してもらう方がいいかもしれない。


「向こうの広場に行って勉強しよう。すぐに始められる?」


「もちろん!」

「早く行こう!」


 二人に引っ張られるように、私たちは訓練用の広場へ向かった。


 始める前に二人にもステータスとリストを確認させてもらう。



 =================


 ティナ レベル5 人間 女 八歳

 HP53/53  MP243/243  闇

 攻E 守E 早D 魔C 賢F 器E


 =================


 キティ レベル1 人間 女 六歳

 HP28/28  MP212/212  闇

 攻F 守F 早F 魔C 賢F 器E


 ================



 二人も中級レベルまで上がっている。魔力量も随分増えた。キティなんてレベル一なのにすごいね。


 リストも見せてもらって中級までの魔法が使えることも確認した。

 二人はまだ字が読めないので何が書いてあるのかはわかってないが、やはり自分の使える魔法の多さにびっくりしていた。


「じゃあ、初級の魔法から勉強していこうね。その前に確認しときたいんだけど、二人とも(ダーク)は使えるよね。潜む(ハイド)は? 自分の気配を隠せる?」


「うーんと、……少しなら?」

「何にも隠れる所が無いのにかくれんぼするのって、意味がわかんない」


 なるほど、なるほど。


捜す(シーク)はキティには練習してもらったよね。覚えてる? かくれんぼしてる虫や動物を探したの」


「うん、出来るよ! 何にもいないと思っても、魔力で探すと見つかるの!」


「ティナにはしびれ罠を覚えてもらったよね。すごーく弱くするとピリピリして面白かったよね」


「うんうん、面白いよ! キティにも教えてあげようよ」


「罠を作れるようになると、罠解除(リリース)の魔法も使えるんだけど、それも出来る?」


「出来る、出来る! この罠は無かったってことでってイメージするから」


 よしよし。それなら私のアイデアが使えそうだ。


「ありがとう。二人ともに潜む(ハイド)捜す(シーク)(トラップ)罠解除(リリース)を覚えてもらおうと思うんだけど、その前にちょっとした遊びをしよう。私は全部使えるけど、二人はまだ出来ない魔法があるから、二人対私の魔法ゲームだよ」


 広場に土魔法でニ×ニの四マスの正方形を書く。一マスの一辺は一mほどだ。少しだけ線を盛り上げて縁を付けて、どこがマスかわかるようにしておく。


「さあ、このマスの中でかくれんぼするよ。四個のマスがあるけど、どれか一つのマスの中に私が立って潜む(ハイド)で気配を消します。二人は目隠しして、どこのマスに私が隠れているのかを探すの。ただし、残りの三箇所にはしびれ罠を設置しておきます。罠も魔力の感知が出来れば見つけられるはずだから、間違えないようにしてね。ここだって思ったら、そのマスに入って下さい。間違えちゃったらビリビリするよ。私を見つけられるかな?」


「おもしろそー!」

「やってみる!」



 二人の目を手拭いを巻いて隠して、私は三つのマスに極弱いしびれ罠を設置すると、残りの一マスに立って気配を消す。


「もういいよー!」


 私の声掛けに二人がうろうろと動き出す。


「キティ、探して、探して。どこにモモがいる?」


「うーんとね、うーん……。どのマスからもモモの魔力を感じるから難しい……。ちょっと待って」


 キティは一生懸命気配を消した私を探そうとしているが、私の潜む(ハイド)はかなり手強いぞ。


「ふーん、私はここだと思う! エイッ!」


 ティナは当てずっぽうで一つのマスに飛び込んだ。


「あああ、ビリビリするう。動けない……あ、治った!」


 キャハハハハッと笑い声を上げて、「しっぱーい」と悪びれもせず言う。


 ティナ……。勘じゃダメだよ。捜す(シーク)で探さないと……。


 呆れる私とは裏腹に、キティは喜んだ。


「ティナ、ありがとう! 今のが罠の気配ってことは、こことここも罠。だから、モモが隠れてるのはここだ!」


「キティ正解ー! おめでとう」


「えー、いいな。私も見つけたーい」


「私も今度は隠れてみたーい」


「そうだね。順番でやった方が面白いから、二人もこの魔法覚えようよ」


 ふふふっ、思惑通りに食い付きました。やっぱり楽しくなくちゃ勉強は身に付かない。



「まず始めに、闇属性について考えてみて欲しいんだけど。さっきマークとマリーにも話したんだけど、魔法ってそれぞれの属性の精霊様の力を借りてるんだよ。光の精霊様は聖なる力を貸してくれて、みんなを守ったり、癒やしたりする魔法を使えるようになる。じゃあ、闇の精霊様はどんな力を貸してくれると思う?」


 急に思いもよらない話を振られて、二人とも訳がわからずポカンとしてる。


「私は、闇の精霊様はこっそり助けるのが得意なんじゃないかなあと思う。恥ずかしがり屋さんなのかな? 闇魔法には隠れたり、探したりする魔法や、罠や状態異常のような直接攻撃はしないけど、狩りや探検の時にみんなの役に立つ魔法が多いよね」


「そっかぁ、やみの精霊様はかくれんぼ得意?」


「多分ね。だから、闇の精霊様の力を借りれば、私たちも上手に隠れたり、見つけたり出来るんじゃないかな?」


「闇の精霊様は罠も得意だから、いたずらっ子かもしれない!」


 ティナは嬉しそうにそんなことを言う。何か自分に通じるものを感じるんだろうか。


「ふふ、そうなのかな? あとね、闇の精霊様は動物が大好きだと思うよ。精霊様の加護をもらえると上級の魔法が使えるようになるんだけど、その中には調教(テイム)っていう動物と仲良くなれる魔法があるんだ。そこまで使える人は少ないと思うけど、そんな力を貸してくれるってことは、きっと動物が大好きな優しい精霊様だと思わない?」


「私も動物大好き! 闇の精霊様と仲良くなりたいなあ」


 そんな風に話をして、二人の中には恥ずかしがりで、かくれんぼが上手くて、ちょっぴりいたずらっ子の動物好きな優しい精霊様のイメージが根付いていったようだ。


 全然違ってたらごめんなさい!

 イメージしやすいように精霊様の偶像が必要だったんです。


「お友達になれたらいいのになあ……」


「いつも力を貸してくれる精霊様を身近に感じて、感謝して、魔法の練習も頑張っていれば、この子は良い子だなぁって思ってくれるかもしれないね。一緒に遊ぶのは難しいかもしれないけど、力を貸してくれるってことは、いつも見守ってくれてるってことじゃないかな?」


 ちょっと難しかったかな。


「うーん、わかった。精霊様は見えないけど、お友達だ。いつも一緒にいてくれるんだ」


「そうなんだ。精霊様ありがとう。キティも動物さんと仲良くするねー!」


 二人して「精霊様ー、ありがとー!」なんて声を揃えてる。


 良い子たちだなぁ。かわいい。


「さて、では話を戻して、隠れる魔法潜む(ハイド)だけど、物陰に隠れると見えなくなるように、精霊様の力を借りて自分がそこにいるのを見つけにくくする魔法なんだよ。精霊様が目に見えないけどいるように、精霊様の力を借りて隠れちゃえば周りに気配が見つからなくなる。精霊様の力を頭からスッポリ被っちゃうイメージで潜む(ハイド)の練習をしてみよう。見つからないように隠して下さいってお願いしようね」


「モモがどこにいるかわからなかったのは、精霊様の後ろに隠れてたの?」


「後ろにって言うより、魔力で自分を隠しちゃう感じかな? 私が見えなくなっちゃう訳じゃないけど、ここにいるよーって言ってる子より、こっそり控えめにしてる子の方が目立たないでしょ。精霊様の力を借りると、魔力に包んだ中身が目立たなくなるの。それで自分を包んでこっそりしてるの。上級の潜伏(ハイダー)になると、籠める魔力の量も多くなるから、もっとしっかり包まれてもっと見つけにくくなるよ。自分を魔力で包む、出来るかな?」


 二人はやってみる! と息巻いて、身体強化のように魔力を体に纏い始めた。


「こうやって魔力の中に隠れちゃえばいいんだよね?」


「ティナ、こっそりしなきゃダメだよ。それで精霊様に隠してもらわなきゃ」


「あ、そっか!」


 なんて騒ぎながら試行錯誤してたみたいだけど、やっと静かになったかな。


「……潜む(ハイド)


 小さな声でこっそり呟くと、フッと目の前の二人の気配が消えた。


「いきなり出来ちゃうんだ? すごいね! 目を瞑ってたら多分気が付かない」


「へへへっ! やったね!」


 途端にティナの気配が露わになった。


「もうわかっちゃったよ。もっとこっそりしてないと……」


「あー、そうか。こっそりって難しいな」


 この子はかくれんぼヘタクソだ。絶対。


 それに比べてキティはずっとひっそりと隠れている。


「ティナ、目を瞑ってキティを探す練習しよう。魔力を少しずつ周囲に漂わせて、そこに精霊様の力を借りる。自分の周りで気配を潜めて隠れてる何かを、魔力を通して精霊様に見つけてもらうんだよ。よく集中して、魔力が見つけてくれるのを感じて」


「見つける方が得意だから! 任せて! やってみる!」


 しばらく目を瞑ったまま集中していたティナが、「捜す(シーク)」と呟く。


「あ、ここだ! わかった! 精霊様ってすごい! 教えてくれた!」


「えへへ、見つかっちゃったあ」


 いやいや、君たちもすごい。飲み込み早すぎない? 天才?


 ただ一つわかったことがある。

 ティナのこの落ち着きの無……騒がし……元気さは隠れるのには向いてないね。まあ、見つける方を伸ばせば良いことだ。



「二人とも、隠れるのも見つけるのも上手だったよ! これならさっきのかくれんぼ出来るね。(トラップ)はまたこの次にして、この後はかくれんぼしよう! 一人が見つける役になって二人が隠れるよ!」


「わーい!」

「やろう、やろう!」


 あまり詰め込み過ぎてもダレるので、残りの時間は三人で代わる代わるかくれんぼ。


 だんだんマスの数を増やして難しくしていく。

 九マスの真ん中に鬼が立って、周囲のどこにいるか探す。その後は十六マス分。隠れる場所は十二カ所。


 終わりの方では二十五マスまで増やしても見つけられるようになってたよ。脱帽。



 闇属性の勉強会は、そんな感じで楽しく終わりました。



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