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第九十二話 かあちゃんは私のお部屋を作る


 地下の作業部屋へ行き、わら半紙と木炭えんぴつで部屋のレイアウトを考える。


 すでにここが落ち着ける私の部屋みたいになっちゃってるけどね。


 私の部屋かあ。

 キティとピノとヤスくんからみんなで一緒に寝たいというリクエストがあったな。

 子供部屋……みんな子供だからちびっ子部屋と呼ぶべきか。ちびっ子部屋のレイアウトを考えてみようかな。


 キティとピノも、もう少し大きくなれば自分だけの部屋が欲しいって言い出す日が来るだろうから、その時には希望に合わせて作ってあげればいいだろう。


 今日のところは私の趣味で考えてみてしまおう。



 三部屋ぶち抜いて大部屋にするとして、そこに三つのベッドを並べることになる。

 他にクローゼットや棚、机とイスも置きたいな。


 三部屋分の長い部屋の一番奥の壁にはクローゼットと棚を並べよう。着替えたりするのは奥の方。


 その手前にベッドだな。ベッドから起きて、着替えて居間へ行くと。


 手前側のスペースは机とイスを置いて勉強したり、ソファやラグを敷いてみんなで談笑したりする場所にしよう。


 大きなぶち抜きの部屋だけど、奥が寝室スペース、手前がリビングスペースって感じで分けて考えることにした。



 大まかなレイアウトが決まると、俄然イメージが膨らんでくる。


 家具は木製だからカントリー調にしてみよう。ワンポイントにタイルを貼って、ステンシル風の各自のマークを入れたら可愛いかもしれない。


 クローゼットは下に引き出しを付けて、上部は両開きで中に棒を渡して服を掛けられるように。


 棚は自分の小物なんかをしまうので、一番下だけは扉付きにしよう。その上に二段くらいでいいかな。


 どちらも天板が幅より少しはみ出して、短い脚を付けるデザインで統一すればお洒落な感じ。


 サイズは私を筆頭にちびっ子だから、あまり大きくすると使いにくい。

 クローゼットは幅一m、高さ一・ニm、奥行きは五十cmくらいで、引き出しの部分が二十cmくらい。棚は幅五十cm、高さ一m、奥行き五十cmくらいで、一段の高さが三十cmくらい。カラーボックスみたいな感じだね。


 部屋の一辺が三mくらいだから、四人分並べるとなるとL字型の配置にしなくちゃ。手前の壁にも並べよう。


 それからベッドを三つ。ヤスくんは誰かの布団に潜り込むだろうからね。

 フットボードとヘッドボードは可愛く半円形に。ここにもタイルを貼って統一感を出そう。


 ヘッドボードには小さな棚を付けて、ちょっと何かくらい置けるように。床板はスノコでいいな。マットレスは作るのは無理なので、居間に敷いたような畳モドキを敷いてから敷き布団を敷けば、フカフカで眠れるだろう。今使っている毛布と掛け布団も作れば、冬でも暖かく眠れそうだ。


 枕代わりのクッションも作ろう。背もたれにも出来るようにいくつか置きたい。



 真ん中からのリビングスペースにはラグか絨毯を敷きたいな。壁際には各自の机とイス。サイドに小さい棚も置けば本や勉強道具などもしまえる。自分で小物を飾ったりしても良い。


 机の天板の下には引き出しを付けて筆記用具などをしまえたり、壁にオガクズコルクのボードを付けてメモや絵なんかを飾るのもいいかも。机のバックボードも半円形にしてタイルを貼ろう。うん、可愛い!


 イスはクッションをのせたスツールでいいかな。イスの高さが五十cmくらい、机の高さが七十cmくらいで幅も七十cmくらいにすれば私たちのサイズに丁度良いと思う。


 隣に置く棚はクローゼットの横に置くのと同じものでいいか。机の奥行きも五十cmで合わせよう。


 部屋の入り口側の空いたスペースには角にL字型にソファと、ローテーブルを置いたら可愛いだろうな。

 ここでみんなでお茶を飲んだり、話をしたり、楽しそうだ。ラグが敷いてあれば床でゴロゴロしてもいい。他の子が遊びに来たりとかもするかな?


 ソファは作るのは難しいかな? 木のベンチにクッションを付ける感じで試してみようか。



 次々にアイデアが浮かんできて、いろいろ詰め込んでしまったけど、ちょっとやり過ぎたかな?


 でも、せっかく自分の部屋を持つのだから、みんなにも夢がある感じにして欲しいんだよね。


 ベッドと机とイスと木箱が置いてあるだけの殺風景で簡素な部屋とか、なんか夢も希望も無いって感じがしちゃう。


 家具を配置したら、キティやピノとも相談して飾り付けもしていけたら良いな。ぬいぐるみとかさ。ピノはきっとドングリを飾るんだろうな。


 冬になったらリースとか作っても良いね。まあ、小物より先に服や靴を作るべきなのはわかってるけどね。


 でも、こうやって考えていると、私だってワクワクするんだから、この部屋を参考にみんなにも自分好みのレイアウトとか考えてワクワクして欲しい。


 ベルやティナなら二段ベッドとかロフト風なんかも喜ぶかもしれないな。


 キティとピノもそういう楽しい部屋の方が好きかな? 前世の子供部屋みたいに小さいジャングルジムと滑り台とか、ボールプールとか。積み木とかの玩具があるような感じ?


 その辺もおいおい二人とヤスくんと一緒に考えて作ればいいか。楽しみだなぁ。


 わら半紙に描かれた部屋を見て一人ニヤニヤとしてしまった。



 今、女子部屋、男子部屋ともに八部屋を用意してあるが、私とキティとピノを除けば女子七人、男子四人だ。

 ちびっ子部屋は男子部屋側の一列を使わせてもらう形になるだろう。みんな自分の部屋はどこがいいとか希望はあるんだろうか。


 勝手に場所を決めちゃうのはワクワク感が減っちゃうよね。やっぱり相談しながら作っていくのがいいな。


 小一時間もいろいろとアイデアを出したり、妄想したりしていたが、まだおやつの時間には少し早いだろうか。見本の家具だけ少し作ってみようか。



 資材倉庫に一番近い男子部屋の一部屋にナラやクルミや杉の木材を運んできて、それぞれで家具を作ってみよう。木材による色味の違いの見本になる。


 今のところ自然の色しか使えないから、各自の好みでオリジナリティを出せるように選べる方がいいだろう。


 まずは杉で、さっき考えたベッドを作ってみよう。

 幅一m、長さニm程の木枠を作り、円柱の脚を付け、前後に半円形のボードを付ける。頭側にはちょっと物を置ける棚板も付けて、床板はスノコに。怪我のないように面取りされたしっかりしたベッドを思い浮かべて、


創造(クリエイト)・ベッド」


 白っぽいベージュ色のベッドが出来上がった。


 次はナラでカラーボックス風の棚を。扉を付けたいので鉄鉱石も取ってこよう。


 そうだ、タイルを飾りに付けるなら石灰石や珪石を使えば白い陶器みたいなタイルが作れるかもしれない。


 それらも部屋に持ち込み、三段のカラーボックス風の棚の一番下だけ扉を付けて、扉部分に飾りの四角いタイルがワンポイントで付いたものを思い浮かべる。


 合材じゃなくてナラで作るカラーボックス。贅沢だなぁ。


 先ほど考えたサイズもわら半紙片手にイメージして、ホームセンターでよく見るカラーボックスよりは、少しだけ大きめの棚を作り上げる。


創造(クリエイト)・チェスト」


 ナチュラルな木の色の縦長チェストが出来た。カントリー風の家具のように白いタイルも付いている。


 そこにステンシル調のハートのマークを転写(トランスファー)で描いてみると、うん、可愛い!


 同じものをベッドのフットボードにも付けてみた。うんうん、可愛い!


 クローゼットはクルミ材で。

 焦げ茶色のシックな雰囲気で出来上がった。


 これも引き出しの中央にタイルを貼ってあるので同じマークを転写する。よしよし、いい感じ。


 こうなると、やっぱり部屋として並べてみたくなるもので、さらにナラで引き出し付きの書き物机を作り、ベッドと同じ趣向の半円形の前板に一段棚を付けて、タイルでワンポイントも付ける。


 同じくナラでスツールも作る。クローゼットと同色のクルミ材のチェストも作り、ベッドと同じ白木のローテーブルは楕円形にしてみた。楽しい!


 入り口から見て、左奥に縦にベッドを置いて、ベッドの足元側の壁には書き物机とチェストを並べる。

 正面の壁にはクローゼットとチェストを並べ、手前の空いたスペースに居間から畳モドキ二枚とキルトのラグを借りてきて敷いてみる。その上にローテーブルを置けば、ひとり暮らしのお部屋のようだ。


 ベッドのスノコの上にも畳モドキを敷いてみれば、当然布団も作りたくなる。


 資材倉庫に行き、リネンの布地に綿を入れた掛け布団と、綿をシート状にして重ねリネンで包んだ、厚みを持たせることで弾力のある敷き布団を作り、ベッドにセッティングする。


 クッションもいるな。


 枕にも背もたれにも使えるクッションを二つ、スツールにのせる小さな薄いクッションを一つ。長座布団を二枚組み合わせることによってカウチのようなものも作ってみた。


 ベッドに二つのクッションを置き、スツールも座り心地が良くなり、ローテーブルの横に壁に背を預けられるようにカウチを置いたら、


「すごく部屋っぽくなった!」


 色味が布の生成りと木の色しか無いのが非常に残念だけど。……ナチュラルテイストってことで。



 カウチに腰を下ろして部屋を眺めてみる。

 うん、こんな部屋なら「私のお部屋」っぽい。


 みんなもこれを見たら、個室が欲しくなるに違いない。


 杉の木材で入り口に扉も付けたら、扉にもタイルでマークを入れれば、可愛い上に表札代わりにもなる。


 改めて扉を開けて中へ入る。


 おお、いい感じ。


 クローゼットを開けてみたり、ベッドに転がってみたり、机に向かってイスに腰掛けてみたり。

 ……楽しい!


 せっかくモデルルームなんだから、ロフトの見本も作っちゃおうかな。この机の上にピンボードも付けよう。どんどん調子に乗ってしまう。


 部屋の入り口の上に土魔法で一畳程のロフトを作り、壁に梯子を付けることで上に登れる。立ち上がれる程の高さはないけど、高いところに上がるとテンションも上がるのはなんでだろう?


 木材でオガクズコルクのピンボードを作り、書き物机の上の壁に付ける。頭に木の玉が付いた押しピンを作り、机の上によじ登って、さっき描いていたちびっ子部屋の見取り図を貼ってみる。


 ヘタクソな絵だし、決してお洒落じゃないけど、これ一枚で雰囲気が出る。



 思わずニヤニヤとした笑みを浮かべながら、完成したモデルルームをもう一度ぐるっと見渡すと、入り口のところであきれ顔をしているアンと目が合った。マリーとルーもいてポカンとしている。


 アンは一つため息を吐くと、


「ももちゃん楽しそうですねぇ。またつい夢中になっちゃってやり過ぎちゃうパターンですか?」


 とチクリと刺さるセリフを言う。


「う……」


 詰まった音しか出せず、オロオロしてしまう。


「また、やり過ぎちゃったのぉ?」

「モモちゃん……」


 ルーとマリーにもあきれた声をかけられて、


「あ、あのね。今日は畑の魔法を使わない日だから、MPにすごく余裕があるのね? ちょっといろいろ作ってみたくなっちゃったと言うか。その……。あ、でも、MPはまだ半分以上残ってるよ! 全然大丈夫だよ!」


 三人の視線が痛くて、そっと目を逸らす。


「……はあ。わかりました。今日はそういうことなら理解出来ますけど。けどね、いつも誰か付いていた方がいいですかね? ……こんなところだけ三歳児なんですから」


「まあまあ、アン。そのくらいにしてあげましょう」


「無理さえしないなら、楽しそうなモモを見るの、私は好きだよ」


「それはまあ……。私もそうですけど……」


 叱られた犬のようにビクビクして、尻尾があったら丸めていた私だけど、言い訳じゃなくてちゃんと謝ろう。


「三人とも心配してくれてありがとう。本当に毎回、反省してはやり過ぎちゃってごめんなさい。ついつい楽しくなっちゃうけど、配分を考えてない訳ではないから。ただ、夢中になっちゃってたのは本当だから。ごめんね。畑のみんなも放ったらかして。……何か問題があった?」


 ふう、ともう一つ深く息を吐いたアンは、


「私こそ、ちょっと意地悪な言い方しちゃいました。ごめんなさい」


 とペコリと頭を下げた。

 ううん、と笑顔で首を横に振る。イメージ過多で頭痛を起こしたことは絶対内緒にしよう。


「畑に問題は無いですよ。もうそろそろ終わりそうなので呼びに来ました」


「みんなおやつをすっごーく楽しみにしてるの!」


「お茶とおやつの用意をするので、モモちゃんを呼びに来たんですよ」


 もうそんなに時間が経ってたのか。


「わかった、ありがとう。この資材片付けるの手伝ってくれる?」


「もちろん! でも、その前にちょっとだけお部屋見てもいい?」


 ルーが目をキラキラさせている。


 三人を迎え入れ、思い思いにベッドに乗ってみたり、クローゼットを開けてみたり、床に座ったり、カウチに転がったりと部屋を楽しむ。


「あの上にも登れるの?」


 ルーはロフトに食いついている。


「可愛い……!」


 アンはタイルのデザインが気に入ったようだ。


 マリーは書き物机の前に座ってみて、


「こんな風にして勉強したりするんですね……」


 夢見るような顔をしている。


「実際に見るとイメージが膨らむでしょ? まだクローゼットもチェストも空っぽだけど、ここに一つ一つ物が増えていくのも楽しみだよね」


 その光景を思い浮かべたのだろう。三人の笑顔がパアッと輝いた。



 少しの間、見学を楽しむと、


「みんながおやつを待ってるよ」

「そうでした!」

「急いで片付けて用意しなくちゃ」


 と慌てて動き出す。


 資材を片付けて、アップルパイを切り分けてお茶を淹れる。


 昼食後から窯に入れておいたトマトも取り出した。低温で長時間かけてすっかり乾いたドライトマトが出来ていた。


「あー、やっと終わったー」

「おやつだ! おやつ!」


 疲れ果ててるけど、おやつをモチベーションに頑張ってくれたみんなも戻ってきた。


「お疲れさまでした! すぐに用意出来るからね。手を洗ってきて」


 居間におやつの用意をして、頑張ってくれたみんなを労おう。


 午前中、味見をした三人も、嬉しそうにいそいそとおやつの準備をしてくれていた。



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