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第六十七話 かあちゃんは子供たちを見つける


 少し遠くに行き過ぎているマリーたちと、どうやらベルとティナがはぐれてしまっているマークたちが心配なので、私とアンの二人とおうとくう、ジェフとバズとルーシーの三人は二手に別れてそれぞれを探しに向かうことになった。



 ジェフたちは森の入り口側へマークたちを探しに、私たちは北西の川の側にいるマリーたちを探しに出発する。



 どちらも魔力が弱っていたり、何かに襲われているといった様子ではないので、大丈夫なんだろうとは思うが早く合流したい。


 特に、川の側には水を求めて獣が来る可能性がある。今は大丈夫そうでも急いだ方が良いので、おうとくうに乗せてもらうことにした。



 私が方向を指示しながら、歩くよりもずっと早く移動出来たので、程なく川の流れる辺りに到着した。


 おうたちから降りて、気配を探りながらマリーたちを探していく。


 川の畔の開けた場所の草むらの中に人の気配がある。


 近付いていくと、マリーたちが夢中で何かを掘っていて、こちらには全く気付いていない。


「みんな、何してるの?」

「探してたんだよ!」


 おうとくうがバタバタと近付いていったので、やっと気付き顔を上げた。


「あ、モモちゃん! 大収穫ですよ!」


「おう、くう、迎えに来てくれたの?」


「この辺、良いものいっぱいあるんだよ!」


 三人とも大興奮だし、すっごく良い笑顔だから、よっぽど良いもの見つけたんだろう。


「頑張ってくれてありがとう。でも、広場から離れ過ぎだよ。水場には動物も集まるから、心配しちゃったよ」


「何事も無くて良かったです。心配したんですよ!」


 アンにもきっちり言われてる。


 せっかく良い気分のところに水を差すようで悪いけど、危ないものは危ないので、そこはきちんと言わなくっちゃ。


「この辺が狼さんのテリトリーとは言え、昼間はあまり活動しないから、他の動物も来る可能性はあるんだよ。集団行動は守ってくれてるけど、夢中になり過ぎないようにって言ったよね? 私たちが近付いても気が付かないくらいだったよ?」


 三人ともシュンとしてしまった。


「本当に無事で良かったよ。ジェフたちも心配してるし、一旦広場へ戻ろう。また後でみんなで採りに来てもいいから。歩きながら見つかった良いものの話聞かせて?」


 確かにプランターにはたくさんの植物が集められているし、載せきれなかったのか葦袋にも採取したものがいっぱい入っているようで、ユニとルーが担いでいる。


 マリーが引いている荷車をおうに代わってもらって、葦袋の一つはくうに咥えてもらう。もう一つは私が持った。


 袋を咥えようとしたくうが、


「この中! 美味しいものいっぱい!」


 と声を上げる。


「何が入っているのかすっごい気になるけど、広げてみるのは広場に戻ってからにしよう」


 とみんなを急かして歩き出す。


 一応、この場所はマップに記録しておいた。



 道すがら三人に何を見つけたのか話を聞く。


「野草を見つけようと森の中を歩いていたんだけど、木ばっかりでなかなか見つからなくてね」


「木の少ない、日の良く当たるところなら何か生えているんじゃないかと思って、そういう場所を探したんです」


「こっちの方は木の生え方がまばらだったから来ちゃったの。ごめんなさい」


 ルーが謝ると、続いてユニとマリーも「ごめんなさい」と頭を下げた。


「うん、わかってくれたならいいよ。無事だったんだしね。でも、こんな遠くに来るなら一声かけてからにしてね」


「はい! 気をつけます!」


 もう一度頭を下げる三人。


「最初はもっと近いところにいたんです。そこは木の間が開いていたから下草にも日が当たっていて。野草を根から掘り出していたんです」


「そしたらね。根っこが野菜になってる草を見つけたの!」


「ほら、これだよ!」


 ルーは荷台のプランターに植えられた葉っぱを指差す。


「葉っぱがちょっとハーブみたいでしょ?」


 それはセリに似た華奢な葉っぱだった。

 これは……、


「もしかして、黄色かオレンジの太い根っこだった?」


「うん、そう! 気持ち細くてヒョローッとしてたけど、村で作ってたキャロに似てたから嬉しくなって!」


「他にも何かないかって進んでいくと、時折、根菜に似たものを見つけられるもので……、ついつい夢中になっちゃってました」


 またペコリと頭を下げる三人。


 ううう、怒れない。野生のニンジンなのかな? 他にもって何があったんだろう。ああ、こっちのはネギに似ている。


「それでも! 嬉しいのはわかりますけど、みんなに心配かける行動はダメです! もう少し遅かったら、無事で済まなかった可能性もあるんですよ!」


 アンがピシャリと怒ってくださった。


「ごめんなさい」


 つい浮き足立っていた私がまず謝ってしまった。


 三人も続いて謝り、私も含め四人で反省する。


「食材のことだと夢中になっちゃうクセは私にもあるよ。気をつけます。良いもの発見したら、まず報告だね」


「わかった。発見したら、まず報告」


「探検は勝手にしない。みんなに言ってから」


「私もはしゃいじゃってごめんなさい。気をつけます」


 これは新しい約束事として、みんなにも伝えよう。ベルとティナにも。



「それで、地面を掘るのに夢中になってたんだね」


 少し急ぎで道を戻っていたので、そんな話をしているうちに広場に戻ってきた。


 ジェフたちの姿は無い。


 気配を探ってみると、マークたちとは合流出来ているようだ。


「三人が見つけてくれたものにはすっごく興味を惹かれるんだけど、ベルとティナがはぐれちゃってるみたいだから、先に探しに行ってくるよ。みんなはちょっと休んでいて」


 私にはだいたいの場所はわかるし、一人の方が身軽に動けるので、みんなにはここで待っていてもらう。コリーたちもそのうち戻ってくるだろうし。



 足早にジェフたちの集団を目指して移動する。何か話し合っている様子の四人にはすぐに合流することが出来た。


「みんな! 大丈夫?」


「モモ! 俺たちは大丈夫だけど、ベルたちとはぐれちゃって」


 やっぱりか。


「あれ? ヤスくんは?」


「二人の気配を見つけたからって、すごい早さで飛んで行っちゃって。追いつけなかったんだ」


 気配を探ると、ヤスくんはベルとティナに辿り着いたようだ。


「ヤスくんはもう二人と一緒にいるみたい。……連れに行こう」


 はあ、とため息一つとともにベルたちの元へと進んでいく。


 近付くと、こちらに気付いたヤスくんが迎えに来てくれた。


「かあちゃん。ベルとティナ見つけたぞ。ちょっとケガしてる。早く来て!」


 ケガと聞いて慌てて二人の元へ行くと、転んで擦り剥いたのか手の平に血を滲ませたティナと、心配そうに覗き込んでいるベルがいた。


 ちょっと怖い顔をして近付いていくと、


「あ、モモ……」


「あの、ちがくって……」


 自分たちのやったことが約束違反だという自覚はあるようで、口籠もって言い訳しようとしてる。


「違わないでしょ? みんなに心配かけて。ケガもして。どうしても約束が守れないなら、もう探検には連れて来れないよ?」


「あの……ごめんなさい」


「ううう……」


 ベルはすぐ謝ったけど、ティナは泣きそうでごめんが言えない。


「ティナ?」


「うう……ご、ごめんなさぁいぃ」


 謝りながら泣き出したが、二回目だし、命に関わることなので厳しくしなくては。


「この間の麦野原でも、ユニとルーに言われてたよね。勝手に二人だけで走っていっちゃダメって。集団行動の時に勝手をすると、他のみんなも危険なんだよ? 二人を探している時にマークが襲われたら? はぐれてしまった人を探している人がさらに迷っちゃって、遭難することだってあるんだよ。これじゃあ、一緒に狩りには出られないよ。二人が勝手な行動をしたら、獣に襲われるかもしれない。私も頑張ってみんなを守るけど、いつも絶対守れる訳じゃない。だから、みんなの協力が必要なのに……。協力が出来ない子は、狩りにも探検にも連れていけない」


 青い顔をして黙り込む二人。


 堪りかねたマークが、


「俺も悪かったんだ。見つけたものに夢中になっちゃって、つい二人から気を逸らしちゃって。……ごめん、モモ」


「オ、オイラも。みんなとスピード合わせて動かなかった。ごめん、かあちゃん」


 ヤスくんも謝り出すと、ベルとティナも泣きながら、


「もう、もう、本当にしない。約束する」


「ごめんなさい。ごめんなさい。絶対勝手しない。反省した」


 と必死だ。


「本当に? 信じていいの? 私を、みんなを裏切らない? 約束したこと忘れちゃわない?」


「もう絶対しない!」


「約束守る! だからモモ。そんな悲しい顔しないで……」


 怒っていたつもりだったんだけど、どうやら悲しい顔をしていたようだ。


「心配すれば心が痛むし、約束を破られたら悲しいよ」


「ごめんなさい。今度こそ本当に約束する」


「心配かけることしない。協力出来る」


 ほう、と息を吐いて笑顔を作り、


癒し(ヒール)


 手の平の傷を治して語りかける。


「この程度のケガで良かったよ。ケガしてるって聞いた時は気が気じゃなかった。元気な二人は大好きだし、ケガしたら治してあげる。でも、いなくなっちゃったら守っても治してもあげられない。私はずっと二人といたい。だから、本当に無茶しないでね」


 うわあああ、と泣きながら抱き付いてくる二人を、ギュウッと抱き締め返す。


 大事にならなくて本当に良かった。


 泣く二人を落ち着かせて、みんなも心配してるから帰ろうと促す。ふと、


「何をしてケガしちゃったの?」


 と聞くと、


「アカネのツルを見つけたの」


「アカネの根っこは薬になるから、引っ張って取ろうとしたら、急に抜けたから転んじゃった」


 マークが傍に落ちていた赤い根を拾い、


「本当だ。アカネだ。血止めになるよ」


 と教えてくれる。血止めを取ろうとしてケガしちゃったのか。はあ。


 でも、薬としては優秀らしいので、せっかく見つけてくれたアカネは回収し、みんなで広場へ戻った。



 コリーたちも戻っていて、無事、全員が揃っていることを喜びあった。


「夢中になって飛び出さない。何か発見した時は一度戻ってみんなに報告する。新しい約束。みんな守ってね」


「はい!!」


 これは私も当てはまることだから、これからちゃんと気をつけよう。


 ともかく、一安心出来た。



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