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第六十六話 かあちゃんは手分けして食料を集める


 翌朝の目覚めは、いつも以上に快適だった。

 やっぱり土の硬い床で寝るより、厚みのあるラグの上の方が気持ち良く眠れる。


 いつまでもゴロゴロしていたくなるけど、今日は早起きして森へ行かなきゃいけない。


 昨晩、準備しておいたタマゴサンドを作って、みんなを起こす。


「おはよう、みんな! 今日は早起きして森に行く日だよ。起きて、顔洗って。朝ごはん出来てるよ」


 みんなは目が覚めたようだけど、ラグの上で毛布を被ってもぞもぞしている。

 気持ちは同じらしい。


 なんとか起き上がったみんなと朝食をとり、今日の予定をもう一度確認しあうと、すぐ出発になる。


 おうとくうの部屋を掃除している間に、朝食の片付けも、出掛ける用意も済ませてくれてあった。


「あ、そうだ。森でもし破いちゃったりしてもいいように、スウェットの着替えも作ったからね」


 着替えも袋に入れて荷車に積んだ。


「忘れ物は無いかな? 水筒も腰カゴも持ってるね」


 脱いだスリーパーも荷車に載せられている。


「じゃあ、狼さんちへ遊びに行きましょう! 出発!」


 みんなで元気良く、森を目指して歩き出した。



 道すがらみんなに、床に敷かれたラグの素晴らしさを絶賛され、自分の部屋を作る時にはぜひ敷いてもらいたいと口々にお願いされた。


 ぐっすり眠れたからか、ぺちゃくちゃと楽しくお喋りしながらも足取り軽く、疲れも見せずに森へと歩き続けていく。


 ユニとルーには私が一人で作ってしまったマヨネーズについての詳しい説明を求められ、あまりのプレッシャーから、帰ってきたら必ず一緒に作る約束をした。



 みんな体力がついたので森の入り口まで一時間ちょっと、休憩もとらずに辿り着いてしまった。


 森に入る前に少しだけ休憩しながら、


「みんな強くなったよね。最初出て来た時は三、四時間かかったのに」


 と話す。

 それがほんの半月前のことなんだから驚きしかない。


 みんなも自分の成長が実感出来ているようで、誇らしげな笑顔をしていた。



 少しの休憩の後、森へ入る。

 最初に飛ばされて来た、あの広場を目指す。


 途中、ドングリ茸のありそうなポイントをチェックしながら進む。


 ヤスくんが、


「あっちの方にキノコの匂いがするかも」


 と言ったところを頭の中のマップに記しておいて、帰りに探してみよう。



 広場に着くと、手分けして採集するために班分けすることにした。


 マークは薬草を探す班のリーダーだ。ヤスくんとベルとティナが一緒に行くことになった。

 マークが一番薬草に詳しいようだし、探しもの名人に期待している。ちょっぴり心配だけど、ヤスくんもついててくれるしね。


 バズには白菜モドキを集めてもらう。誰か一緒にと言ったが、


「探す訳じゃないから、一人で大丈夫だよ」


 と言われてしまった。それでも何かあった時、一人では危険だし人も呼べないので、おうとくうに一緒に行ってもらうことにした。


 コリーはベリーの茂みを知っているので、キティとピノと一緒にベリーを集めてもらう。


 マリーはユニ、ルーと野草を探してもらう。こちらも根から採ってきて育ててみるという今回の目的の一つとして重要な役割なので、三人ともとても張り切っている。


 ジェフとルーシーにはパーティー用のサツマイモを掘ってもらって、私とアンはリンゴンを採る。



 ここからはそれぞれ別行動になるのだが、その前に土魔法で根から採取した植物を持ち帰るためのプランターをたくさん作っておく。


 荷車に載せていた荷物は取り敢えず一度下ろしておいて、地下室から木箱やステップ、ネコ車を出してきた。


「荷車、増やしちゃおうか」


 木を切り、木材を作り、創造で次々に道具を増やしていく。


 小さい荷車を二台、ネコ車を二台、木箱を四十個。


 野草と薬草の探索班にはそれぞれ作りたての小さい荷車にプランターを載せて出掛けてもらい、元からあったもう一台は白菜モドキを集めるバズに託す。


 サツマイモ班には中くらいの荷車を。


 ベリー班にはネコ車で行ってもらって、広場に置いた大きい荷車と行ったり来たりしてもらう。集めたベリーは広場で木箱に詰めて、大きい荷車に積んでいく段取りになった。


 私とアンもそれぞれネコ車にステップを載せてリンゴンを集めに行く。こちらも同様に広場に戻っては木箱に詰めてを繰り返すことになる。


「ポチくんの縄張りだから大丈夫だと思うけど、一応広場には結界(ドーム)を張っておくから、何かあったら荷物なんか放り出して逃げてきてね」


 もちろん感知(センス)は使っているが、敵性の生き物の気配は今のところ周囲には無い。


「それから、探索や採取に夢中になり過ぎてあまり遠くに離れてしまうことのないように。班ごとで行動してはぐれたりしないようにね。それじゃあ、みんなよろしく!」


「はい!!!」


 注意事項を伝えたら、各班別れて採取開始だ。


 アンと二人、ネコ車を押して森に入る。



 リンゴンの木はあちらこちらに生えているので集めやすいのだが、高いところの実を採るときは、一人がステップに上り、一人が押さえていなくてはいけない。


 少しばかり面倒ではあるが、高いところにはいっぱい実がついているので、手間でもこの方が効率がいいんだ。


 ステップに上ってリンゴンを集めているアンが、手はせっせと働かせながらも、下で支えている私に話しかける。


「ももちゃん、朝からあんなに魔法を使って大丈夫なんですか?」


 初っ端から飛ばし過ぎて倒れないか心配してくれているようだ。


「今日はお昼に仮眠をとるでしょ? 三時間も寝たら半分くらいMPを回復出来るから、午前中は出し惜しみしないでも大丈夫。採取も魔法でやれば早いけど、魔法だと全部採っちゃうからね。採り過ぎたら森をダメにしちゃうかもしれないから、大変だけど手でもいでいこうと思うんだ」


 それにはアンも賛成してくれたし、ちゃんと計画的に魔法を使っていたこともわかって、安心もしてもらえたようだ。


 腰カゴいっぱいにリンゴンを採ると、ステップを降りてネコ車に移し、またリンゴンを採る。


 時々ポイントを変えて、一本の木から採り尽くしてしまわないようにも気を付けている。


 近くにオレモンがあった時には、オレモンも私の腰カゴに採っておいた。


 二台のネコ車がいっぱいになったので、ステップはその場に置きっ放しにして、一度ネコ車を押して広場へ戻る。


 コリーたちも一度戻ってきていたようで、大きい荷車にはベリーの入った木箱が積まれていた。


 私たちもリンゴンを木箱に移して荷車に積んでいく。ネコ車二台で五箱ものリンゴンが集められた。


 もう一回集めてくれば、一冬分くらいになるんじゃないかな?


 アンと相談して、もう一回採りに行き、三回目はネコ車一台分だけ採って、もう一台にはステップを載せて帰ってくることにした。



 二回目に戻って来た時には、広場にちょうどコリーたちがいて、ベリーの木箱を荷車に積んでいた。


「うわあ、ベリーもいっぱい採れたね」


「あ、モモ。うん、すごいでしょ? キティもピノもいっぱい採ってくれたから」


「うん、頑張った!」


「ピノも!」


 干すにしても、ジャムにするにしても、あまり採り過ぎても困るんじゃないかと、これで終わりにしようと考えていたところらしい。


「これだけあれば充分だよ。私たちもステップを取りに行くついでに、もう少しだけ集めたら終わりにしようと思っていたんだ」


「まだ時間あるでしょ? 木の実を集めていてもいいかな? みんなのところに手伝いに行った方が良い?」


「私たちが終わったら、みんなの様子を見に行くよ。コリーたちは木の実をお願い」


「ピノ、ドングリ集めてあげうね!」


「うふふ、ありがとう。いっぱい拾ってね。楽しみにしてるね」


 ベリーを積み終わったコリーたちは再び森へ入っていった。



 私たちもリンゴンを箱に詰め荷車に積み、ラスト一回のリンゴン採りに戻る。


「アンにばっかり採る役やらせちゃってごめんね」


「私の方が高いところに手が届きますから、大丈夫ですよ」


 ネコ車一台分を集め終わり広場へ戻る時には、せめてこのくらいはと、リンゴンの載った重い方のネコ車は私が押させてもらった。


 広場に戻り、リンゴンを箱に詰め、全て荷車に積み終えても、他に戻ってくる者はいない。みんな頑張ってるなあ。


 まずは近場のジェフたちの様子を見に行こう。



 サツマイモの生えているところでは、ジェフとルーシーがせっせと芋掘りをしてくれていた。


「あ、モモ。今日食べる分だけでいいんだよな」


「お芋だけで茎や葉っぱはいらないんだよね」


 中くらいの荷車には、すでにどっさりお芋が載っている。


「うん、そうだよ。いっぱい採ったねー。狼さんたち喜んでくれるね!」


 しかし、いくら狼が大きいとはいえ、これはもう充分な量だろう。


 ジェフとルーシーも、このくらいで終わりにしようと、みんなで荷車を引いて広場へ戻る。


 次はバズの様子を見に行こうと、白菜モドキの生えている場所へ向かう途中で、戻ってくるバズたちに会った。


「いやあ、おうとくうがめちゃくちゃ手伝ってくれたから、もう荷車いっぱいだよ。根まで掘り起こしたやつもちゃんと幾つか採ってきたよ!」


「おう、頑張った!」

「くう、力持ち!」


 おうとくうもありがとう。すごいよ、と褒めながらみんなで広場に戻る。


「コリーたちもベリーは充分集まったから終わりにして、今は木の実を拾ってくれてるんだ」


 みんな前に来た時よりも、断然作業が早くって、予定よりもずっと早く自分の持ち場が終わってしまった。


 探索班は苦労しているかもしれないから、手伝いに行くことにしよう。



 気配と魔力の感知を研ぎ澄ませ、マーク班とマリー班がどこら辺にいるのか探ってみる。


 三人組のマリー、ユニ、ルーは北西の方角、狼さんの巣の側を流れる川の少し下流の辺りにいるみたい。


 ヤスくんとマークの気配から少し離れたところにベルとティナの気配。こちらは森の入り口方面にいるようだ。


「うーん、どうしようか……」


 マリーたちはここから少し離れ過ぎているのが心配だから見に行きたいけど、ベルとティナがはぐれちゃってるっぽいマークたちも困っているんじゃないかな? どちらも心配だ。


 みんなに相談すると、


「二手に別れよう。森の入り口側なら少しは道もわかるし、俺たちはマークと合流するよ。ベルとティナも見つけて説教だな」


 ジェフ、ルーシー、バズがマークを探してくれると言ってくれたので、私とアン、おうとくうはマリーたちを探しに行くことにした。


「三人がさらにはぐれちゃってもいけないから、少し探して見つからなかったら、広場に戻って待っていて。私たちもマリーたちと合流したら、一度ここへ戻るようにするから」




 ジェフたちは森の入り口側へ、私たちは北西の川を目指して二手に別れて出発することになった。



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