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第五十五話 かあちゃんはみんなのステータスを確認する

今回、セリフが長くてごめんなさい。


モモ、語り過ぎ……。


 今日は初級魔法の訓練をしているのだが、みんな集中して頑張っていたので、少し疲れが見えてきた。


 ここらでちょっと休憩かな?


 オレモン水に重曹と液糖を混ぜたレモンスカッシュを作ってきて、


「少し休憩にしよう!」


 と声をかける。


 広場に座り込み、ゴクリとレモンスカッシュを飲んだみんなが、


「何コレ?!」


 と声を上げる。


「炭酸とかソーダって言うんだよ。シュワシュワしてさっぱりするでしょ? 嫌だった?」


 炭酸系は苦手な人もいるからと心配したが、


「ううん、面白い!」

「私もコレ好き!」

「私も!」

「ピノも! シュワシュワーッ」


 小さい子たちには好評のようだ。


 ユニとルーは目を丸くして、


「どうやったの?!」


 と聞いてきたので、重曹を混ぜたことを教えると、


「こんな使い方が!」


 と興奮していた。


「この空気が混ざる感じが、衣とか生地を膨らませてフワフワにするんだよ。今度、フワッフワのパンケーキも作ってみようね」


 と言うと、さらに興奮して首をぶんぶんと縦に振っていた。


 年長組は初めての炭酸に慣れなくて、


「のどがチクチクする」


 と不思議がっていたが、だんだんとその爽快感がクセになったようで、今は楽しそうに飲んでいる。


 炭酸は味というより、面白さをみんなに気に入ってもらえたようだ。



 そんな風に緊張をほぐして休憩した後は、いよいよ実践。みんなも初級魔法を発動してみることになった。


 広場に十二個の的を並べて、一人ずつ試していく。


 大きい順ということでマークから始めることにした。


「最初だからね。奇をてらったことは考えず、さっきのジェフのお手本通りに発動してみよう。

 ツバメの速さ、真っ直ぐな軌道、最後だけは的の真ん中にぶつかって爆ぜる、にしようか。さっきのジェフの魔法の光景をイメージして、最後だけ貫通じゃなくて的に当たったらパンッと爆ぜる。イメージもしやすいでしょ?

 それじゃ、マークは光属性だから、呪文は光の球(ライトボール)ね」


 緊張したマークが的の正面に立つと、


「力、入ってんぞ」


 とジェフから声がかかり、マークから力が抜ける。


 ニヤッとジェフに笑いかけ、


「すぐ追いついてやるかんな」


 と言うと、丁度良いリラックス状態で集中し始めた。


 手の平に集まった魔力、鮮明に頭の中に広がるイメージ。


光の球(ライトボール)


 手首のスナップで黄色く光る魔力を放出すると、ヒュンッと飛んだ光の球は、的のど真ん中に当たり、パンッと音を立てて消え去った。


 光の消えた後には、真ん中に穴をあけた的が立っていた。


「さすが! 一発で成功!」


 みんなも拍手でマークを囃し立てた。


「……出来た!」


 マークは初めての攻撃魔法に感動して、ジッと自分の手の平を見つめている。今は拍手の音も耳に届いていないかもしれない。


 続いてはバズ。


 魔法を学び始めた当初、イメージの苦手だったバズだが、イメージの力で麦が作物が、ぐんぐん育っていく姿を目の当たりにしてからは、イメージに気負いがなくなったようで上手くなっている。


 今では穴を掘る時のサイズも自由自在だ。


 マークと同じイメージをした後、


砂の球(サンドボール)


 茶色に光る魔力の球を的に上手く当てられた。


「中級のロックになると着弾後飛び散る場合があるから気をつけてね。でも、今回はバッチリ! おめでとう!」


 コリーは火の球(ファイアボール)を、ルーシーは空気の球(エアボール)をなんなく的に当てることに成功し、マリーとアンも水の球(ウォーターボール)光の球(ライトボール)を危なげなく的中させた。


 みんなに「おめでとう!」と声をかけると満面の笑みと達成感溢れる様子で喜びを顕わにする。


 こうしてみんなが成功していく姿を見ることにより、後の人ほどイメージを固めやすくなっていくので、ユニ、ルー、ベル、ティナと問題なく成功していった。


「キティの番だね。呪文は闇の球(ダークボール)だよ。怖くない? 大丈夫?」


「ぜんぜん、大丈夫。私だって成功してみせる。それで、もっともっと動物さんたちと仲良くなる」


 しっかりと意志のある答えを返して、キティも見事に魔法を発動してみせた。


「おめでとう! すごいねキティ」


「うん! できた! やったあ!」


 笑顔でキティを褒めながら、私は少し心配してしまっていた。この子は狩りを受け入れてくれるだろうか……。


 ちらっとアンの方を見ると目があった。

 アンも命を奪う行為を恐れていた。


 そっと近寄ってきたアンが、


「大丈夫ですよ……」


 と私の肩に手を置く。


「ももちゃんが心配していること、わかります。私も同じこと考えましたから。キティと話したんです。

 植物もお魚も、私たちに命を与えてくれていて、私たちは生きるために他の命を犠牲にしていること。そして動物たちも、他の動物や植物の命をいただいて生命が回っていること。コリーが魚をとってきてくれた日に。

 だから大事にいただいて、一生懸命生きようって話しました。人間も動物たちも、生きるために狩りをする。私もキティも理解しています。いたずらに命を奪うこととは違うって。

 私は今も攻撃魔法の大きい力は怖いです。でも別の使い方で役立てることが出来るって、ももちゃんに教えてもらいましたから。キティと一緒に考えてるんですよ。自分たちに出来ることをしようって」


 ――――驚いた。


 アンが本当に細かいところにまで心を砕いて気を配ってくれていることに。


 キティがあの小さな体で命について考え、受け止めてくれていることに。


 いつも真っ直ぐで一生懸命な子供たち。

 キレイなものだけ見せて育てる訳にはいかないってわかっていても、ついつい隠そうと、誤魔化そうとしてしまう私はまだまだだ。


 何度も気付かされる。

 この子たちに恥じない自分でありたい。


「ありがとう、アン。そうだね。与えられた命の分も一生懸命生きよう。ありがとう……」


「ふふ、ももちゃん。思い詰めないで。楽しく幸せに生きることが報いることだと思いますよ」


「うん、わかった。みんなで楽しく幸せにだね」


 ちょっとだけ心が軽くなった。

 私も私の出来ることを精一杯、みんなと幸せになるために頑張ればいい。



 それからピノも、「くうきのたま(えあぼーる)」を成功させて、全員が発動まで出来るようになった。


 ピノは小さいけど、魔力操作がとても上手い。魔力の動きに無駄がない。


「まりょくと仲良しになったから、おねがいきいてくれるんだお」


 って言ってた。


 みんなからもすごい、すごいと褒められて、嬉しそうにはにかんでいた。



 次のステップとして、実戦でどう動くかについて考えなければいけないんだけど、その前に。


「みんな一回ステータス確認してみようか」


 各自がそれぞれステータスを開いているところを覗かせてもらって確認していく。


 みんな各パラメータのレベルも上がってきていて、Fの多かった小さい子たちにもEが混ざってきてるし、Dもちらほらとあるようだ。


 魔力に関しては全員がD、初級レベルに上がっていた。


 コリーなんてレベル三になっている。やっぱり魚とりかな? その後捌いてくれたからかな?

 そしてバズは器用さがCに上がっている。元々器用だったけどすごいね。


「みんなそれぞれ成長していると思う。大雑把に言うとFランクは普通の子供くらい。Eランクは大人くらい。大人並みに働いてくれてるからEも増えたでしょ?

 そしてDランクは初級として仕事に出来るくらい。攻撃、防御、素早さがDになれば、初級冒険者として弱いモンスターなら相手取れるだろうし、力仕事にも向いてるね。

 魔力もそう。戦うにしても、仕事に役立てるにしても、職業に就けるレベルってこと。賢さが高くなれば、商人や先生、研究者などに。器用さが高ければ、いろんな作業や物作りの仕事に重宝されるし、職人や親方なんていう技術者になれるかもしれない。

 自分に向いていそうなことを目指してもいいし、目指したいもののために必要な力を鍛えていくのもいい。自分次第で未来は広がるよ」


 みんなは夢を描くキラキラした瞳で自分のステータスを見つめている。


「ここで、もう一つ。この間も話したけど、属性特性っていうのがあって、これもパラメータに影響する。みんな魔力が初級レベルまで上がったから確認してみよう。『リストオープン』って言ってみて」


 それぞれが、「リストオープン」と口に出すことで、別枠のウインドウが開かれていく。


「属性、魔力レベル、属性特性。そして今自分が使える魔法が並んでるでしょ? 使ったことなくても、すでに使えるだけの技量があれば、新しい魔法も出ていると思う。これから訓練していくのが楽しみになるよね。その中で属性特性に注目して欲しい。マーク、なんて出てる?」


「死霊補正と魔法耐性って書かれているぞ」


「ありがとう。私の光属性の特性は死霊補正Ⅶ、魔法耐性Ⅶだよ。特性も訓練で成長するってことだね。闇属性の状態異常耐性もⅦまで上がってるから、毒などがかなり効きにくくなってる。魔力が成長すれば特性も成長する。さらに頑張り甲斐があると思わない? じゃあ、みんなの特性を確認してみよう」



 火属性には、攻撃力上昇、スタミナ上昇。

 水属性には、運上昇、命中率・回避率上昇。

 土属性には、会心率上昇、植物補正。

 風属性には、守備力上昇、素早さ上昇。

 光属性には、死霊補正、魔法耐性。

 闇属性には、状態異常耐性、物理耐性。



「支援の魔法は、これらの特性の効果を上げたり、各属性攻撃の威力や耐性を上げたり出来る。自分にかけてさらに強化することも、仲間にかけて仲間の力を補うことも。

 攻撃魔法の中でも、(ボール)(アロー)(ウォール)支援(オーラ)まで使えるようになれれば戦い方の幅が広がると思うから、興味のある子はこの支援を目標にして攻撃魔法を訓練していくといいかもね」



 支援の大切さをわかってもらった上で、ここでみんなに少し考えてもらおう。


「みんな出来ること、向いてることがそれぞれあるけど、それとやりたいこと、やりたくないことが同じとは限らない。

 だから、属性や特性はひとまず置いておいて、自分がこれから魔法の力をどう使いたいか、どんな自分になりたいかを考えてみて。

 戦うこと、強くなることを選んでもいいし、みんなを助けること、サポートすることを選んでもいい。狩りや実戦だけじゃなくて、道具作りや生活に活かしてもいい。趣味に使ってもいい。

 誰かを傷つけよう、貶めようというような間違った使い方さえしなければ、どんな風に使ってもみんな正解。使わないことを選んでもいいんだよ。出来るからやらなければいけないなんてことは全くないから。

 みんなもう一度、自分のやりたいこと、やりたくないことを考えてみて」


 アンにも言ったけど、出来ないこと、やりたくないことを無理してやる必要なんてない。みんながやりたいことだけやってればいいって訳じゃないけど、この子たちはそんなこと端からわかっている。


 その上で足りない部分はみんなでお互いに支え合えばいいんだから、まずは自分の目指すところを考え始めていって欲しい。


「難しく考えなくていいからね。やりたいことなんて、その都度変わっていくものだし。だから何かある度に自分がどうしたいのか、考えてみて。

 無理して心を曲げないで。周りに相談したり、自分と向き合って正直な行動をしていけたらいいと思います。本当は嫌だったけど周りに流されてやっちゃった、なんて後悔はしないように」


 日本では空気を読め、とか悪目立ちするな、とか自分を押さえつけられて苦しんでいる子も多かった。


 それが出来ないといじめられるなんてバカな話だ。個性を認めあって、その上で協調する力も育んでもらいたい。


 難しいことだけど、何でも同じである必要はないはずだ。やりたくない、出来ないって素直に言える環境を作ってあげたい。


 みんなと同じじゃなくても一人ぼっちにならない、ここにいる子たちには普通のことだろう。


 前世でもそれが普通だったら良かったのにな、と思った時、ふと勇者くん、太陽の加護をもらった彼のことを思い出した。


 彼もきっとこの世界で頑張ってるんだろうな。他の子たちもきっと。


 みんなが元気で、この異世界での第二の人生を楽しんでいてくれることを心の中でそっと願った。



 目の前の子供たちは、真っ直ぐ未来を見据えた眼差しでいる者、ほのかな夢や希望を抱いてワクワクと胸を膨らませている者、一生懸命悩んでいる者、まだ少し戸惑っている者、様々だ。


「手始めに、まずは今度の狩りのことを考えてみようか。実際に狩りに参加してみたいか、拠点を守ってみんなのサポートをしたいか。どちらも大切な役割だからね。

 どちらもピンと来ないなら様子見も有りだよ。みんな初めてのことだしね。今回の狩りが終わってから、また次はどうしたいのか考えればいい。思ってたのと違ったとか、やっぱりこうしたいってのが出てくるだろうし」


 一度で全てを決めることなんて出来ない。だから、今の素直な気持ちを教えて欲しいとみんなに伝えた。


 その上で、今回の狩りにおけるそれぞれの役割を決めて、それにあった魔法を練習していく。狩りに参加することを決めた子たちでは、戦い方や連携も練習しなければいけない。


 何も作戦なしに、いきなり現場に放り込む訳にはいかないからね。



 考え過ぎても迷うだろうから、今の気持ちを言ってもらう。


「もちろん、俺は戦うよ」

「私も」


 ジェフとルーシーは即答だった。


「うん、頑張ろう」


「私は今回はみんなの帰りを待ちます。戦うのは苦手だから。その場にいてもサポート出来るだけの力を身に付けられたら、いつか参加してみたいと思います」


 アンが残ると言ってくれたおかげで、どちらの意見も言いやすくなったと思う。


「ありがとうアン。今回は狼さんの巣でお留守番頼むね」


 キティとピノも今回はアンとともに残ることにした。


「夜中の森はちょっと怖い」

「ピノもいい子でねてるね」


 二人の頭を撫でながら、


「ありがとう。二人もお留守番よろしくね」


 と微笑む。これも二人の役割なんだ。自分たちに夜の狩りはまだ早いと理解して、自分で決めてくれた。


「足手まといかもしれないけど」

「狩りに行ってみたい!」


 ベルとティナは好奇心に素直に従ったようだ。


「大丈夫。無理無茶だけはしないって約束してね。一緒に頑張ろう」


 コリー、マーク、バズも、


「ちょっとびびるけど、オレも行きたい」

「俺もだ。やってみたい」

「僕も、一度は狩りを体験してみたい。次回はまた考えるよ」


 と参加することを決めた。


 マリー、ユニ、ルーはまだ考えている。


 マリーが最初に、


「戦いに参加するのは怖いんです。でも、狩りをするところは見ておきたい。今後の何かに役立てられるかもしれないから。……見学でもいいですか?」


 気持ちを声にした。


「もちろんだよ。マリーだから気付けることもあるだろうから、見ていて。何かあったらまた教えてね。よろしくね」


 ユニは、躊躇っている。


「私に何が出来るかわからない。参加したいんだけど、何をすればいいのか……」


「戦うことは嫌じゃないの?」


「わからない……、けど、やってみたい」


「じゃあ、参加してみよう。怖かったり嫌だったら、次からはお留守番をお願いするよ」


「うん、わかった! やってみる!」


 力強く決意していた。


 残るルーは、


「私はお留守番して、みんなが帰ってきた時のために、何か口にするものを用意していた方が役に立つだろうなって思ってたの。でも本当は……、私も行きたい。私は狩りに付いて行っても役に立たないかもしれないけど、本当は行きたい」


「うん、行こう。ルーの役割だってもちろんあるよ。一緒に頑張ろう」



 こうして、アンとキティとピノ以外の子供たちは狩りを体験してみることを決めた。


 おうとくうも、夜は寝ちゃうからお留守番。ヤスくんにはお留守番組で気配を探っていてもらいたいとお願いした。狼の巣を襲うようなものはいないと思うけど、万が一のためだ。


「アン、キティとピノを任せちゃうけどお願いね」


「はい。こちらは大丈夫ですから、みんな頑張って下さい」


「ヤスくんもみんなのことお願いね」


「任せといてよ」



 今日の訓練はここまでにして、明日も実戦に向けて訓練することになった。


「午前中に種蒔きを頑張って終わらせて、午後は訓練の時間をとれるようにするよ」


「私たちもパン焼き頑張るね。お昼にパンを食べて力をつけて、午後の訓練に気合が入るようにしなきゃね」


 おー! そうだった! 明日はパンだー! と再びみんなのテンションが上がった。



 私とユニとルーは夕食の準備に向かい、他のみんなはまだ時間が早いので、もう少し魔力操作の練習を続けるということだ。


「発動する時にはよく気をつけてね。声をかけあって事故のないように。何かあったら呼んでね。頑張って!」


 声をかけると元気な返事で答えてくれる。




 パン種はうまく膨らんでるかなあ……。


 ユニとルーと明日のパン焼きのことも相談しなきゃ、と考えながら、みんなを広場に残し、私たち三人は調理場へと向かった。




たくさんの皆様に応援していただいて、

とうとう1000pt達成しました!


初心者の拙い文章にお付き合いいただき

本当にありがとうございます!


これからも頑張ります。

モモと子供たちも頑張ります。


今後とも応援よろしくお願いします!

(≡ε≡)/


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