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第二十四話 かあちゃんは一休みする


「ただいまー。みんな大丈夫だった?」


 広場の端から大きな声で呼びかけると、キティがパタパタと駆け寄って来る。


「おかえりなさい! モモ! あのね、うさちゃんすごいの。今日はまだげんきなの! あのね! あのね!」


 興奮して喋り捲るキティの話しを要約すると、昨日は魔力切れですぐ寝ちゃった土ウサギが今日はまだ起きている。魔力が大きくなったからに違いない。私も負けていられないとのこと。


「だから、今日もまほうのれんしゅうしたいの!」


 遅れて走って来たピノも息を切らせながら、


「ピ、ピノも……。ピノもれんしゅうするの。モモ、またおちえて。つおくなるの!」


 と気合が入っている。


「うん、そうだね。後でまた練習しようね。でも先にお手伝いしてくれる? 今日はいーっぱい食べ物を集めてきたから、しまうのも大変なんだ」


 それでやっと荷車の大収穫に気付いたようで、二人して「オオーッ!」と目をまん丸にして声を上げた。


「すごいの! たべものいっぱい!」

「ホントだ!おいしそうなベリーも果物もいっぱいある!」


 二人とも大喜びで荷車の周りを飛び跳ねている。


「おかえりなさい。無事に帰ってきてくれて良かったです」


 アンが出迎えてくれる。


「疲れたでしょ? お茶を淹れるから、まずは中に入って休んで下さい」


 とマリーも労ってくれる。


 ……お茶?


「あの葉っぱ! やっぱりお茶であってたの?!」


 私が食いつき気味に言うと、マリーがくすくすと笑いながら、


「はい。茶葉があったので蒸して、煎って、揉んで、乾燥させておきました。モモちゃん飲みたがってたでしょ? モモちゃんのために頑張って用意したので飲んでみて下さい」


 ああ、葉っぱをお湯に入れればいいって訳じゃないもんね。手間をかけさせてしまったけど嬉しい!


「ありがとう! マリー、嬉しいよ。あれ? でもジェフがいないのに蒸したり出来たの?」


「魔法があれば便利ですけど、みんなが出来る訳じゃないですし、もちろん火をつける方法はありますよ。時間はかかりますけどね」


 それもそうか……。でも、やっぱりすごく手間をかけて作ってくれたんだな。


「本当にありがとう。喜んでいただくよ。お願いしていい? あ、茶器が無いよね。どんなのを作ればいい?」


 マリーとアンが相談し、みんなで飲めるように大きめの、と手でバレーボール程の大きさを示し、形状を説明してくれた。うん。所謂ヤカンだね。


「これを直接火にかけて煮出すの? それとも、ここに茶葉を入れた上からお湯を入れて蒸らすの?」


 と聞くと、ポットを火にかけるという発想は無かったらしく、


「お茶を淹れるにはここに茶葉を入れた上からお湯を注いで少し待つだけでいいんですが、この形でお湯を沸かせたら鍋で沸かすより注ぎやすいですよね?! そんなの作れるんですか?!」


 うわあ、それってすごくいい! と今度は二人が食いつき気味になっていた。


 作ってみるよ、と材料としての土魔法で作った粘土と持ち手用の蔓を用意し、創造を使って耐火性のある大きな土瓶と、保温性のある大きなティーポットをイメージして魔法を発動する。


 出来上がったそれぞれをマリーとアンに見せ、


「こっちが直接火にかけてもいいように火に強く作ったので」


 と少し丸みを帯びた土瓶を渡し、


「こっちがお茶を淹れる用の。注ぎ口の根元のところを穴あきメッシュにしてみたから、茶葉が出ちゃわなくて注ぎやすいと思うよ」


 と下は丸みを帯びて少し縦長のポットを渡す。


 二人は、「これいいよね?!」「使いやすそう!」と言いながら、それらを手に取り、あちらこちらから調べては喜んでいた。


「こんなの村には無かったですけど、すごくいいものだと思います。ももちゃん、ありがとう」


「早速これでお茶を淹れてみますね。中で休んで待ってて下さい。楽しみにしてて下さいね」


 二人していそいそとお茶の準備を始める。

 今はジェフがいるのでかまどの火はジェフが点けてくれた。


 家の入り口では、こちらのやり取りが終わるのをじっと待っていたらしい他の子たちが、


「おかえりなさーい!!!」


 と声を揃えて出迎えてくれる。


「ただいま!」


 取り敢えず荷物を運ぶのは後にして、居間のテーブルで一息つくことにした。


 腰カゴだけ一つ下ろしてお茶請けにベリーを出すことにしよう。テーブルの上に木のボウルをいくつか並べ、ベリーを分けてみんながつまみやすいところへ置く。

 食べるのはお茶が来てからね、と、それまで話しをして待つことにした。


 今日はみんな疲れ果てた様子はない。聖域の効果もまだ続いているしね。


「何も問題なかった? みんな良い子で仲良くお留守番出来た?」


 と聞くと、小さい子たちは「はーい!!!」と手を上げ、ユニとルーはコクコクと頷きつつ、微笑ましそうに笑いながら報告してくれる。


「今日はみんないっぱいお手伝いしてくれたよ」


「いっぱい働いてもあんまり疲れないから、昨日運びっ放しだったものをすっかり片付けられたの」


 ベルとティナが、


「昨日訓練したから、ちょびっと強くなったのかな?」


「いっぱいお手伝いしてもへーちゃらだよねー!」


 と教えてくれた。聖域素晴らしいね。


「私もうさちゃんも強くなったの。だから、お手伝いも出来るし、うさちゃんも寝ちゃわないの」


「ピノももっとつおくなるんだぁ」


 キティとピノもグーを作って力説してる。


 せっかくやる気になってくれてるんだし、ここはこのまま勘違いしておいて貰おうかな。


「そうかあ、じゃあ今日からも頑張って訓練続けたら、もうすぐ魔法が使えるようになっちゃうかもね。すごいねーみんな。お留守番もお手伝いもきちんと出来たんだね。ありがとう」


 ユニとルーまでもが一緒になって誇らしそうに胸を張り、キラキラした瞳の期待に満ちた顔つきをしている。


「お兄ちゃん、お姉ちゃんたちも頑張ってくれて、いーっぱい食べ物見つけてきたんだ。お茶を飲んで一休みしたら、また下ろすのお手伝いしてくれる?」


「はーい!」みんなやる気充分元気に返事した。


「ねえねえ。森のお話し聞かせて」


「何を採ってきてくれたの?」


 ユニとルーが聞いてきた時、


「お茶が入りましたよー」


「みんなカップを用意してー」


 ちょうど良くアンとマリーと待望のお茶が登場したので、話しはお茶を飲みながら、とみんなでカップを用意した。




 ホーッと思わずため息が出る。


 三年ぶりに飲むお茶は、香りが良くとても美味しいものだった。


 煎って乾燥したからか、ほうじ茶に似たその味わいは、郷愁を感じさせ少しだけ切なくなるような、心に染み入る味だった。


 ホームシックなんて柄じゃない。目の前を見ればかわいい子供たちが笑っている。


「アン、マリー、ありがとう。とっても美味しい」


 二人は目を合わせて、やったね! と小さく言い、


「良かったです。いっぱい飲んで下さい」


 と笑顔を向けてくれる。


 今日一日、一緒に頑張ってくれたジェフたちも美味しそうにお茶を啜っていて、私の視線に気付くと、


「うまいな」

「良かったね、モモ」

「疲れも吹き飛ぶぜ」

「うんうん、いろいろあったしね」

「そうだ、報告、報告!」


 と怖い思いもしたのに、楽しげに笑ってくれてる。


 ユニとルー、小さい子たちも、その報告が楽しみでキラキラした目で待ち侘び微笑んでいる。


 うん。後ろを向いている場合じゃないぞ。

 今の私にはこの子たちがいてくれるんだからね。


 それから、お茶とベリーを楽しみながら、川沿いを麦を探しつつ森を目指したところから一つ一つ話していく。


 川の向こうに麦を見つけたところでは、


「麦?!」「パンが食べれる?」


 とみんな大喜びしたし、白菜モドキやサツマイモ、果物や木の実がいっぱい採れたことも喜んでくれて、


「ありがとー」「すごい頑張ってくれたんだ」


 と労ってくれた。


 しかし、その後、狼に出くわしたところでは、みんな息を呑み、青い顔をしてしまった。


「……それで、お話ししたらすごく優しい狼さんで、私たちのこと許してくれたの。これからも森に食べ物を採りに来てもいいよって言ってくれたんだよ」


 みんなホッとしてお茶を一息に飲んでいた。私のお茶も空になってしまったので、みんなしておかわりをしてから続きを話す。


「それでね。その狼さんのお嫁さんが怪我をしちゃって動けないんだって。治してくれないか? ってお願いされたから、明後日また森に行こうと思うの。明日はみんなが楽しみにしている麦を見つけに行きたいからね。だから明日も明後日も、またお留守番をお願いしたいんだけど、みんな出来るかな? 大丈夫?」


 ここにいたみんなには相談せずに決めてしまったので、ちょっと心配しつつ聞いてみると、


「狼さんのお嫁さんかわいそう」

「モモ、治してあげて」

「みんなお留守番もお手伝いも出来るよ」

「うん、任せて!」

「麦も楽しみ!」

「大丈夫です」

「今日もお手伝いもちゃんとしてくれましたしね」


 とみんなが気持ち良く同意してくれた。


 ただ、「私も狼さんに会いたい」「ピノも」と最年少組が言い出してしまったけど。


 ベルとティナも、


「麦のあるところ私も見たーい」

「私も、探検したい!」


 と続いてしまったので、


「明日は橋を架けるところからやるから、危険も確認してないしちょっと待ってね。橋を架けて通りやすくなって、危険もなかったら、また今度みんなで探検しに行こう。

 狼さんも、明後日はお嫁さんの怪我を治しに行くんだから、大勢では行けないよ。今度みんなで遊びに来てもいいですか? って聞いてみるから、それからにしようね」


 と諦めてもらう。「えー」と言い掛けた時、ユニとルーの、


「探検や他のやりたいことは冬の準備が終わってからって約束したよね?!」


「ちゃんとみんなで協力するってモモと約束したの守れるよね?!」


 という言葉にみんな口を噤み、真面目な顔を作りコクコクと頷いた。

 ジェフが一緒になって真面目顔でコクコクしているのがおかしい。


 アンが小声で、


「ホント、ユニとルーがしっかりしてるので助かってます」


 と言い、マリーも、


「こんな感じでまとまってるから大丈夫ですよ」


 と苦笑いで教えてくれた。




 明日からの予定も報告したし、そろそろ休憩を終えて片付けを始めよう。


 ユニとルーが今日も夕食の用意を引き受けてくれたので他のみんなに手伝ってもらい荷下ろしをしていく。奥まで荷車で運び込めるのは本当に便利だ。


 さて、ここで少しばかり手間がかかるのがサツマイモだ。頑張っていっぱい採ってくれたけど、放置しておいたら茎葉から傷んでいってしまうので芋だけ土の中に埋めておきたい。

 他のものは干し野菜やドライフルーツにしたり、箱のまま保管したりするので、取り敢えず今日のところは下ろしておくだけでいいけど、サツマイモは量も多いので埋めちゃった方が片付くし。


 荷下ろしをみんなにしてもらっているうちに、私は大急ぎで食料倉庫の一角に穴を掘り、木材からオガクズを作り出して穴に敷き詰めた。


 箱や籠、白菜モドキを下ろし終わったみんなにも手伝ってもらって、サツマイモの芋だけを毟り取りオガクズの中へ埋めていく。

 ジェフとルーシーはかなり頑張ってくれたようでサツマイモはざっと三百個以上はあったが、十二人で手分けして作業したので然程手間取らずに片付けは進む。上からもオガクズを被せてから土魔法で塞ぎ、一部だけ取り出しやすいように側溝の蓋のように持ち上げられる仕組みにしておいた。


 ほだ木用の丸太や使わない布、ロープは資材倉庫に下ろしていく。荷車とネコ車、固定に使う布、ロープは明日も使うので入り口脇の物置にしまった。



 一冬を越すための食料としてはまだまだ全然足りないが、倉庫の中へどんどんと食料が貯まっていく光景は嬉しいものである。子供たちもどっさりと置かれた木箱に喜んではしゃいでいる。



 約四カ月分の十四人の食料となると、どのくらい貯めなければならないのだろう。たとえ一日一人一本の芋で我慢するとしても、これだけあっても一ヶ月分にも足りない。少なくともこの五倍。できれば十倍以上を集めたい。

 いくら森の恵みが豊かでも、それ程の量のサツマイモがあっただろうか? 果物や野草、大豆も集めるとしても足りるのだろうか?



 やはり、土魔法の畑も近日中に試してみる必要がある。




 大収穫に喜ぶみんなの手前、笑顔を装いつつも、少しの不安は染みのように私の心に残っていた。


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