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第二十二話 かあちゃんは森で食料を集める

本日も二話更新しています。


これは二話目です。


お昼に更新した分からお読みください。


 昨晩はぐっすり眠れた。


 魔力枯渇で気絶して寝るとぐっすり眠れるのだ。

 体が回復に専念するからだろうか。


 聖域の魔法の効果もあり、疲れもすっかりとれていた。


 聖域は全ての敵性攻撃をはね返す結界で、結界内には常に回復、浄化作用があり、しかも二十四時間効果が持続する。


「古の勇者が天に祈ると、神の加護が降り注ぎ、悪しき魂は全て消し去られ、人々の傷は癒やされ、悪魔の攻撃は悉く撥ね返された」


 というファンタジーのお話しに出てくる魔法。伝説扱いされる訳だ。


 ともあれ、夜まで効果が続くので安心して出掛けることが出来る。



 入り口を開くと、東の空は明るみを帯びてきており、夜明けが近いことを告げていた。


 ジェフたちも起こすことにしよう。



 私たち六人は他の子たちを起こさないように気を付けながら、顔を洗い、荷車を引いて広場へと出た。


 この時間から炊事をする余裕はないので、果物を齧りながらもう一度今日の予定を確認する。


 空には厚い雲もなく、今日も晴れそうなので問題なく森へ行けそうだ。


 行程としてはまず、三台の荷車を引き川沿いを森へ向かう。その際、麦が生えていないか確認しつつ進む。

 私たちが現れた森の広場までは一気に行く予定なので二時間程歩くことになる。そこで午前中、周辺の採取をし、昼食を摂ったら、帰り道にはドングリ茸やトマトなどを採取しつつ戻ってくる。夕方までには帰って来れる予定だ。


 みんなの体調も良く、昨日の疲れも残っていないと言うので、このまま出発出来そうだ。


 水筒を掛け、ネコ車は私の荷車に載せて、荷車小をマークとコリー、中をジェフとルーシー、大を私とバズで引いて行くことにした。


 日が昇り始め、少しずつ明るくなってきたので出発しようとした時、アンが起きだし、見送りに出てきてくれた。


「いってらっしゃい。無理せず気を付けて下さいね」


「ありがとう。夜まで家の周辺には結界が張られているから、広場から出なければ安全だからね。大変だろうけど小さい子たちをよろしくね」


 いってきますと言おうとした時、アンがおずおずと土ウサギを出してきた。やっぱりアンは良く気が付くな。


 私は笑ってアンを褒めると、土ウサギに多目の魔力を流し起動した。


 改めてみんなで「いってきます」と挨拶し、森へ向けて出発する。



 一昨日通ってきたルートを戻るように進んでいく。


 川原の近くには麦は見当たらないようだ。


 注意深く麦を探しながら川沿いをゆっくり三十分程進むと、蛇行の関係か川幅が狭くなっているところがあった。その対岸からピチュピチュと囀る鳥の声が聞こえてくる。


 鳴き声から昨日の鳥と同じ種類かもしれないと思い、読心(マインドリーディング)を使ってみる。




「麦がたくさんあって嬉しいね」

「秋の麦は良く育った」

「春は酷かったものね」

「嬉しいね!」




 ビンゴ!!


 この辺りは背の高い葦が生い茂り、ツワブキやイチイも群生しているので対岸が見にくくなっている。

 私の背丈では何も見えない。


「バズ! 鳥が! この向こう岸で麦の話ししてる!」


「えっ?」


 体の大きいバズが葦の間を分け入り、向こう岸を確認してくれる。


「ううん、向こう岸も草がすごくてよく見えない」


 対岸にも背の高い葦が生い茂っているようだ。


「バズ、持ち上げて! 魔法で見てみる」


 足を滑らさないように気を付けながら、ヨイショッとバズが持ち上げてくれる。私は草むらの向こう側を見ようと目に魔力を集める。


遠見(ビュー)、コンボ盗視(ピープ)


 頭の中に草むらの向こう側の景色が映る。


「茶色? 黄色? の草原がある」


 んー、良く見えない。


「コンボ遠視(レンズ)


 景色の一部がぐっと拡大されたように近くに見えた。

 茶色く見えたのは穀物だ。


「先っぽが尖って、長い毛がシューッと生えたみたいな……ずっしり実を付けて頭を垂れてる。ポヤポヤした毛がキラキラしてキレイ……」


「大麦だ! 毛が短めであんまり生えてないのは無い?」


「毛が長くていっぱい生えているのと、あんまり生えてないのとある」


「やった! 小麦もありそうだ!」


 キレイな景色に見惚れていた私よりも、バズたちの方が嬉しそうだ。

 私が米を見つけたらこうなるんだろうな。みんなはしゃいでいる。


「でも……ここは川幅は狭いけど渡れないぞ」


 確かに、対岸まで二mも無いだろうが、川幅が狭まったせいで流れが早くなり、深さもありそうだ。


「後で橋を架けに来た方が良さそうだね。落ちたら流されそうだし」


 今日は森へ行くのが最優先だから、また改めて確認しに来よう。赤い小さなまん丸の実をいっぱい付けたイチイの木が生えているから目印になるだろう。鎌を用意して葦を刈らないといけないし。


 そうみんなにも告げると、あの景色を見たのは私だけなので、一目確認したかったとジェフたちは残念がっている。


「わかった。明日にでもまた来よう」


 そう言うと、みんな名残惜しそうに頷いてくれた。


「どのくらい生えてた? 広かった?」


 まだ少し未練があるのかバズが聞いてくる。


「全体は良く見えなかったから。あんまり広くはなかったかも。でも、いっぱい生えてたよ」


「そっか……うん。でも僕が育てて増やすから大丈夫だ」


 バズが力強く言う。目がキラキラしてる。


「うん、頼りにしてる。みんなで頑張ろうね」



「お、この実甘いぞ!」


 感動的な雰囲気だったのにジェフがイチイの実を口にしてる。


「あ! その実、中の種は毒だから出してよ!!」


「えっ、飲んじゃった……」


「えっ?! いっぱい? どれくらい?!」


「ひ、一粒だけだけど……」


 ああ、良かった。この世界ではどうか知らないけど、日本ではかなり強い毒だったと思う。でも一粒くらいならお腹を壊すくらいで大丈夫だろう。一応、治癒(キュア)をかけておく。


「一粒なら大丈夫だと思うけど、そのへっこみの中にある種は食べちゃダメだよ! 赤いとこだけ食べてペッして」


「う……、わかった。ごめん」


 知らない実を不用意に口にしないこと、という新たな約束事が増えた。

 今のところジェフ専用。


 みんなでイチイのトロッとした甘い実を少しだけ楽しんでから、私たちはまた森に向け歩き出した。



 その後は、まっすぐ森を目指したので一時間程で森の入り口まで来れた。


 ここからは荷車を引くのに苦労するけど、この荷車けっこう頑丈だから、木の根も乗り越えて行けるだろう。


 途中、ドングリ茸ポイントをスルーして二十分程で森の広場へと辿り着いた。


 一休みして、水を飲みながら採取の分担をする。


 白菜モドキの生えているところまでは小さい荷車なら入れそうなので、戻る時は重くなることを考慮して、場所を知っているマークと体の大きいバズに行ってもらう。


 サツマイモは広場のすぐ近くにあるので中くらいの荷車にジェフとルーシーで収穫してもらうことにした。


 私とコリーは大きい荷車は広場に置いたままにして、ネコ車で森の中に入ってリンゴンなどの果実を採る。


 みんな、自分の持ち場が終わったら、森へ入って果実や木の実などを採る手伝いをしてくれることになった。その後、まだ時間があったら野草なども摘もうという段取りに決まった。


「じゃあ、始めようか」


 私たちは三方に別れて動き出した。



 ◇



 ネコ車を押し、森に入った私とコリーは手近なところに実る果実から採り始める。


 昼とはいえ狼のテリトリーにいるのだから、気配感知と魔法感知は働かせている。今のところ近くにはいないようだが、一応広場には結界(ドーム)を張り、何かあったら広場に逃げ込むことにしてある。


 あまり大きな魔法を使うと逆に刺激して呼び寄せてしまうのではと考えてのことだ。


 リンゴンやオレモンをある程度集めると、一度広場へ戻り荷車に移す。広場で積み込む作業中、コリーが言った。


「でこぼこ道を行くとゴロゴロ転がっちゃいそうだし、箱に入れた方がいいんじゃない? あと高いところにも実がいっぱいあるから、ステップや腰に吊せる籠があると採るのが楽だよ」


「そうだよね! コリー、ありがとう」


 感知に気を取られてる私はそういう当たり前のようなことが頭から抜けちゃってる。気が付いたことどんどん教えてくれると本当に助かる。


「よし、じゃあ早速作ろう」


 ブナの木を木材に変えて長さ六十cm、幅と高さが三十cmくらいのリンゴ箱のような木箱を二十個と、高さ百二十cm、三十cmごとに四段の踏み板を付けたイスのようなステップを二台作った。

 これは使い終わったら地下室にしまっておけば、また来た時にも使える。


 アケビやカズラの蔓を、巻き付いた木からベリベリ剥がし、ベルト状に腰に括り付けることの出来るびくのような籠を作る。これは重宝しそうだったので六人分作った。


「これはベリーを摘んで持ち帰るのにもいいし、魚取りにも使えるよ。いいね!」


 コリーにも褒められた。


「コリーが思いついてくれたおかげだよ」


 腰に籠を吊るし、ステップを担いでまた森に入る。地面がでこぼこなのであまり安定しないが、そういう時は一人が押さえ役になることでたくさんの果実を集められた。


 リンゴン、オレモンの他にも、梨、柿、アケビ、イチジクに似た果実、クルミ、栗、落花生のようなナッツ類。荷車と数度往復して収穫を続けた。


 大分集めることが出来たので、


「後はベリーを集めようか」


 とコリーに言うと、


「さっき、ちょっと奥のところにベリーがいっぱい生っているのを見つけたよ!」


 と教えてくれた。


 ステップは広場に置いておいて、籠だけ持って森へと入る。


 嬉しそうにコリーが早足になり、


「ほら、あの先! あそこ、見て!」


 赤やオレンジ、紫のカラフルな実をたくさんつけた茂みを目指して駆け出す。


「コリー、待って!!」


 コリーは既に茂みに着いており、ベリー摘みに夢中になっていて私の制止に気付かない。


 慌てて追い付き障壁(バリア)を張る。


 それから、できるだけ穏やかな口調でコリーに話しかける。


「コリー、ここはちょっと奥まで入り過ぎたみたい。一度広場に戻ろう。みんなもそろそろ集まってくる頃だし」




 私は北から大きな魔力が近づいてきているのを感じていた。



三連休二話更新頑張りました!


たくさんの皆様にお立ち寄りいただき

本当にありがとうございました。


ブクマ、評価もたくさんいただき

嬉しい限りでございますぅ。(泣)


これからも応援よろしくお願いいたします!


かあちゃんと子供たちの活躍にご期待ください。


作者まおちょこも頑張ります! (≡ε≡)/

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