表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/130

第二十話 かあちゃんは報告を受ける

本日、二話更新しています。


これは二話目です。


お昼に更新した分からお読みください。


 結果から言うと、私たちは二時間程で広場へと帰って来れた。

 全員バテバテだったが。


 平坦なところはいいのだ。

 多少操作性には難はあるが、創造で作り出した荷車は木製にしては有り得ない頑丈さで、数百kgの重量をものともせず進んでくれた。


 だが、広場へは坂を登らなければならない。


 荷車(小)のマークとコリー、ネコ車のバズは頑張ってどうにか登ってくれた。

 荷車(中)はジェフとルーシーに引いてもらい、私が下から押し上げることでなんとか登った。


 その後、六人掛かりで荷車(大)を押し上げるのが最大の難関だったんだ。

 何しろ木材が載っているので重い。


 それでも私たちはやり遂げた。

 すごい達成感。これなら森までだって行ける。たくさん食料を持って帰れると自信がついた。


 六人でハイタッチしてイェーイ! と声を合わせる。


 みんな同じ気持ちなようで、心は軽く、体は引きずるようにして家の前まで運びきった。



「ただいまー。みんな何もなかった?」


「おかえりなさい。ご苦労さまでした」


 笑顔でアンとマリーが迎えてくれるが、なんかやつれてる?

 あれれ? お留守番組もみんな疲れてる?


「アンこそお疲れさま。なんか大変だったみたいだね」


 苦笑いしながら言うと、アンも苦笑いで答えた。


「ええ、まあ」



 アンとマリーが説明してくれた内容は、ぐったりするのも頷けるものだった。



 ことの発端は土ウサギだった。


 最初、子供たちはウサギを追い掛け回しては大はしゃぎで遊んでいたらしい。


「ああ、あの時はみんなご機嫌でとても楽でした……」


 アンとマリーが遠い目をする。


 しばらくすると、土ウサギが急に動かなくなってしまった。みんな「壊れちゃったー!」と泣き出してしまう。はしゃぎ疲れも加わって大泣きだったとか。

 アンがなんとか宥めようとしていた時、マリーが籠められた魔力がなくなっていることに気が付いたそうだ。


「魔力切れで止まっただけだから壊れていませんよ」


 と教えると、魔力枯渇の話しを聞いていたちびさんたちは、


「それで寝ちゃったのかぁ」

「なら明日の朝には元気になるね」


 と落ち着きを取り戻した。


 そこでアンがすかさず、上手いこと魔力訓練へと気持ちを切り替えさせ、しばらくはおとなしく訓練を続けたそうだ。


「うさちゃんの方が先に魔法が使えるようになっちゃうかもしれませんね?」


 とか煽って鼓舞したらしい。


 だが小さい子の集中力はそうは続かない。だんだん何かやらかしそうな雰囲気を帯びてきたところに、片付けを終えて出て来たユニたちが、


「モモとした約束、守れない子はいないよね?!」


 とピシャリと釘を刺してくれたおかげで、その後は何も問題なく今に至ると。


 そうして、はしゃいで、泣いて、訓練して、疲れ果てたちびっ子たちの出来上がりとなったらしい。


 うわぁ、大泣きの子供たち宥めるとか頭が上がらないわ。


 マリーの洞察力、アンの子供操作術、ユニとルーの厳しさ。九、十歳の子供とは思えない母親の資質。


 大人だってこの人数の子供が泣き出したら、手に負えないのに。この四人になら任せて大丈夫だ。頼りになるわ。ありがとうございます。


 件のちびさんたちはルーシーのお土産のドングリで今はおとなしく遊んでます。よかったね。



 ユニとルーからは今日の夕食についてメニューの報告があった。


 水につけてふやかした豆を、まだ温かかった石焼き鍋に入れて蒸したらしい。

 それをすり潰して、手拭いで絞って、カスと汁に分けてあるという。おからと豆乳だね。


 今夜のメニューは菜っ葉で出汁をとったスープにおからを入れて、まだ残っている味噌で味付けをするおからの味噌汁と、豆乳に森で採ってきた柑橘系の果物オレモンの果汁を混ぜて、リンゴンを摺り下ろしたものを加えて作るソースを、生食出来る野草に和えたサラダだそうだ。


 たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラル、食物繊維に糖質。

 すごいね。栄養もばっちりの素晴らしいメニューだ。しかも手が込んでいる。


 すりこぎやおろし金など無いのにどうやったのか聞くと、石で代用してなんとかしたんだって。

 天才?


 今日の夕食は任せてくれと言われたので、


「楽しみにしとくね。頑張って」


 と丸投げした。この二人なら大丈夫そうだもの。


 ジェフにかまどに火を熾してもらって早速取りかかっている。手際がいいね。素晴らしい。


 年長組も小さい子たちも死屍累々なので、夕食までは休憩時間とする。

 ぐだってる子供たちもかわいい。

 みんな良く頑張ってくれてる。

 良い子たちばっかりでかあちゃん幸せだよ。


 ニヤニヤと、ぐで子供の姿を堪能してたら加護の力で大分回復したので、私はひとっ走り川原に水を汲みに行くことにした。


 取り敢えず荷車(小)の野草や木の実を棚にしまって空の荷車を確保した。


 荷車に水瓶を載せていき、川原で水を汲む。せっかく荷車があるのだからと水瓶をもう一つ増やした。ついでに辺りに生えている葦に似た植物も集めた。


 今のところ、これが一番布に適した材料だ。麻っぽいのであまり暖かくはないが、一枚掛けるものがあれば違うだろうし、手拭いももう少し数を作っておきたい。


 土魔法で鎌を作り出し、葦を刈る。


 伸び放題に生えているので、荷車に積めるだけ積み込んで、またえっちらおっちら坂を登った。


 重いけど水瓶を抱えて歩くより大分楽だったよ。


 広場に戻るとルーたちの様子を確認する。順調に進めてはいるが夕食まではもう少しかかるようだ。



 ◇



 私は家を少し改築することにした。


 今日集めてきた大量の物資を置いておく場所が欲しい。


 広場に置いておいてもいいんだけど、もし雨でも降ったら雨ざらしになっちゃうからね。


「ちょっとおうちを広くするから表に出ていてくれる?」


 と疲れてる子供たちを外へ追いやる。ごめんね。



 まず、最初に作った通路、入り口から五mの位置から大部屋をぐるっと囲むように敷地を広げる。三十m四方くらいに思い切って大きく広げることにした。


 床は平らに滑らかに。壁と天井はしっかり強化してだだっ広い空間が出来た。

 元々あった中央の十m四方の大部屋は壁を残してそのまま居間として使えるようにしてある。居間の手前と奥の壁には三m四方くらいの出入り口を開けて、入り口から居間を通り抜けて奥の空間まで行けるようにした。


 奥の空間には左右の両角にそれぞれ十m四方の大部屋が出来るように壁で覆った。これは両方とも倉庫にする。片方に食べ物を、もう片方に資材を入れればいいだろう。


 倉庫の間はそのまま広間にしておく。子供たちの遊び場になるだろう。雨や雪の日には訓練場に使える。


 居間の左右の壁の裏にあたる空間には個室を作る。間に通路を挟んで三m四方の小部屋を壁に沿って四個ずつ二列、八個の部屋が並ぶ。これを反対側にも作ることで、居間を挟んで左右に計十六個の小部屋。子供たちに各自、自分の部屋として使ってもらうものだ。居間を挟んで左右を女部屋と男部屋で分けれるようにした。今はまだいいけど、これから大きくなるとプライベートな空間があった方がいいと思ったから。


 全体の一番手前、入り口側は居間へ進むための三m幅の通路と個室側へ進むための二m幅の横通路を壁で仕切って作る。ぐるっと一周通路がつながった。手前にまだスペースがあるので入り口通路の脇は入ってすぐ物をおける物置部屋を左右に作った。すぐ使うものはここに入れよう。


 左右の小部屋エリアの前にもそれぞれに細長い空いたスペースがあるので、壁で仕切って、入り口を作り、洗面所とトイレにする。元々使っていたトイレは清浄(クリーン)をかけて埋めてしまい、この細長い部屋の中に小さな個室トイレを並べる。左右それぞれをこれも女子トイレと男子トイレに分けて使えるようになる。


 トイレの個室の向かい側にに高さ七十cm、幅六十cm、奥行き五十cmの台を八個並べて作り、ここに小さめの桶を置いて水瓶を用意しておけば洗面台になる。桶と水瓶とひしゃくを作りセットして、あちこちに(ライト)を灯して出来上がりだ。ちょうど学校のトイレみたいな個室が並んで手洗い場のある洗面所が出来た。まだ金属が無くて蝶番が作れないのでドアの無い開放感溢れる作りになってしまっているけど、そのうちにドアも付けれるようになるかもしれない。


 個人部屋の方もみんなが使う気になってくれるなら、ベッドやタンスなども用意してあげたいな。


 あちこち壁で仕切っただけの作りだけど、さすがにこれだけの魔法建築となると二千近いMPを消費してしまった。もう外出しないから大丈夫だろうと、ガンガン使ってしまった。


 みんなが気に入ってくれるといいんだけど。



 ◇



 外に出ると夕食が出来上がっていた。


「また待たせちゃったかな、ごめんね」


「ううん、ちょうど出来たところだから大丈夫!」


「もう入ってもいいの?」


「もちろん、いいよ」


 今日はお給仕も全部やるからと先にテーブルに着かされる。


 わくわくしながら待っていると、部屋の様子に驚きつつも、続々と料理が運びこまれてくる。


「あ、フォークが無い!」


 私サラダとか作らなかったからね。ごめん、ごめん。

 大急ぎで先程運んできた木材からフォークを十四本作り出した。


「うう……?」


 一瞬クラッとした。あれ? 


 MPを見たら残り千四百くらいになっている。


 建築で大量にMP使ったのに、迂闊に創造使っちゃったからだ。


 家に帰ってきたからって油断した。

 危ない、危ない。気をつけなきゃ。こんな美味しそうな料理を目の前にしてぶっ倒れてらんないよ。


「ももちゃん、どうしました? 大丈夫?」


 アンが気が付いて心配してくれる。


「今日はいろいろ欲張り過ぎたみたい。魔力枯渇ギリギリセーフだった」


「ええっ?! あんなにMPあるのにか? やっぱり覚醒した魔法を使うのは大変なんだな……」


 とジェフたちに妙に納得されてしまった。心配そうにこちらを気にしてざわついているので、


「いいから、いいから。せっかくユニとルーが作ってくれた夕ご飯。冷めないうちにいただこう?」


 とみんなを落ち着かせ、食前の挨拶をする。


「今日は一日中、全員、目いっぱい頑張ったね。美味しいごはんを食べて、明日もまた頑張りましょう! 今日の夕ご飯はユニとルーが考えて作ってくれました。ありがとう。いただきます!」


 みんなも真似して、


「ありがとう、いただきます!」


 と食べ始める。


 私もいただこう。まずは楽しみなおからの味噌汁から。


 ふうふうと息を吹き掛けると菜っ葉の出汁と味噌の甘い香りが混ざったいい匂いがする。こくんとスープを一口。


「うーん、美味しーい!」


 このホッとする味。

 味噌汁たまんない。


 陶酔するように味わって、ほうっとため息をつくと、ユニとルーからもホウッとため息が出た。


 私が気に入るか心配して息を止めてしまっていたらしい。


 今度はおからと菜っ葉も口に含む。


 うーん。フワフワ、シャキシャキ。食感がすごくいい。菜っ葉も干した分、旨味が上がっている。


「ああ、ほんと美味しい」


 満面の笑みでそう言うと、やっと安心したかのようにユニとルーも笑顔になった。


「こっちのサラダも自信作なの! 食べてみて!」


 ルーに勧められ、フォークで突き刺し口に運ぶ。


 グリーンリーフのようなフリルのある葉っぱとほうれん草のような濃い緑の野草、サイコロ状に切ったトマトにルー特製豆乳ソースが絡められていて、ナッツを刻んだものが上から散りばめられている。


 シャクシャクと噛むとナッツの香ばしさと味の濃い野草の旨みと香りが広がる。そして、このソースが爽やかでとても美味しい。


 この味、豆乳の風味だけどヨーグルトだ。リンゴの摺り下ろしが入ったリンゴヨーグルト。アサツキの根と葉のみじん切りも入っていて、塩で味を整えられている。


 うわあ、これが九歳の作る料理?


 あまりの美味しさに「素晴らし過ぎる!」と声を上げてしまった。


 ユニとルーも嬉しそうに、満足そうに笑っていた。



 爽やかなサラダとホッとするスープを存分に味わわせてもらいました。



「後片付けも任せて!」


 とユニとルーが胸を叩くのでありがたくお願いした。


 新居のお披露目は二人が戻ってからにしたかったけど、ちょっとだけネタバレして倉庫に荷物だけ運び入れてしまうことにした。


 年長組がメインだけど、ちびさんたちも少しずつ手伝ってくれてる。


 居間の出入り口は三mで作ってあるので、荷車のまま倉庫まで持ち込めるのだが、荷卸しは手作業なのだ。


 みんなでせっせとおろしていく。地味で大変な作業だけどみんな頑張ってくれた。


 これだけ材料があればいろいろ作れるところだけど、今はMPが無いのです……。


 後片付けを終えたユニとルーもやって来て手伝ってくれる。おろした荷物を見たユニが、


「今日、せっかく片付けたのに……」


 とポソッと言ったのが聞こえてしまった。ごめんなさい! 明日もまた片付けよろしくお願いします!


 さて、荷卸しも済んでおうち拝見の時間だ。


「今、荷物を運んでくれたこの二部屋が倉庫。ここを冬用の資材でいっぱいにしたいです。倉庫の間のこの広間はこのままの予定なので、冬の遊び場や訓練場になると思います。じゃあ、ぐるっと回ろうか」


 女子部屋の方から廊下を回っていく。


「ここが女の子の部屋。今までのように居間で寝てもいいけど、これからいろいろ作ったりすると自分の持ち物も増えるだろうから、各自、自分の部屋を一つ選んでね。そのうち、ベッドとか布団とか、服とかタンスとか増やしていきたいと思います」


 年長組はうわあ、とワクワクした顔をしてるけど、小さい子たちはちょっと戸惑ってる。急に一人で寝ろなんて言わないから大丈夫だよ。


 そのまままっすぐトイレルームへ。


 入り口を入ると正面にずらっと並ぶトイレ。入り口の左右には洗面台が四つずつ並ぶ。


「トイレの数も増やしたし、朝起きたらこの桶にあそこの水瓶から水を汲んで顔を洗うんだよ」


 個人部屋の時より喜んでるね。うん。


 トイレを出て横道を進むと居間の入り口と家の入り口を結ぶ廊下に出る。


「この両脇の部屋は物置だから、いつも使うものとか置いておけるところね」


 中を見ると干し野菜が置かれていた。


「あ、もう日が暮れるから、中に入れておいたよ」


 ユニとルー、よく気が付く良い子だね。ありがとう。干し野菜も減ってしまった。森からまた採ってこなくちゃね。


 そのまま一度外に出て、片付けが終わった調理場を一応確認する。火の始末もちゃんと出来てるし、キレイに片付けられていた。


「ユニ、ルー。お片付けありがとう。明日からも二人には頼っちゃうけど、よろしくね」


「もちろんだよ。私たちの得意分野なんだから」


「バッチリ任せて!」


「この調理場も屋根を付けたり改装したいけど、もう少し待ってね。一緒にお料理もしようね」


 それから広場の空いたところに視線を移し、


「ここもいつか畑にしたいと思ってる。日当たりもいいし、みんなで畑仕事も楽しそう」


 そう言うと村育ちのみんなもうんうんと笑みがこぼれる。


「こういう場所の使い方とか、こんな部屋が欲しいとか、そういうのも考えてみて。思いついたら教えてね」


 そして全員家に入ったのを確認して入り口を閉じた。


 それから右手側の男子トイレと男子部屋を見ていく。作りは同じだけどね。


 ジェフが早速トイレを使ってみたいと言うので、一度解散して、トイレや体を拭きたい子は(今日は水だけど)拭いて、寝る準備を済ませてから居間に集合することにした。


 急いでトイレへと向かう者、個人部屋の中に入ってみてどこを自分の部屋にしようかと悩む者、それぞれだ。



 私もトイレを済ませ、洗面所で顔を洗い、居間へ向かう。



 明日の準備をしながらみんなを待つことにした。


たくさんの皆様にお読みいただき

感謝感激です!


三連休二話更新、

明日も頑張ります!


応援よろしくお願いいたします。

(≡ε≡)/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ