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第十九話 かあちゃんは林へ行く

本日も二話更新します。


これは一話目です。


「じゃあ、いってきます。みんなのことよろしくね」


「いってらっしゃい。気をつけて」



 みんなもいってきます、いってらっしゃいと言葉を交わし、広場に結界(ドーム)を張って、山を降りていく。


 岩山を南廻りで十分程歩けば、南の林へ着く予定だ。昨日作った木材の置いてある場所へひとまず向かう。


 東側から南側へと岩山の裾を歩いていくと、草が減り、岩が剥き出しの山肌に変わっていく。


 ふと、コリーが立ち止まり、山の中程の辺りを指さす。


 つられて見上げると何かがキラッと光った。


「あそこのキラキラしてるとこ、近くで見ないと何かわからないけど、鉱石だと思う」


 コリー、早速大発見!


「すごいよ! コリー、よく見つけたね!」


「うん。洞窟でも灯りを当てて、ああやってキラキラするところを掘るんだ」


 すぐにでも掘りたいところだけど、結構高い場所にあるので、今日は諦めよう。


 手近な岩肌に大きな上向きの矢印を土魔法で刻んでおく。


「コリー、ありがとう。今日は林へ行ってやることがいっぱいあるから、また今度堀りに来よう。その時は頼りにするけど、またよろしくね」


「うん。任せて。鉱石を掘るのは重いし、結構大変だから別の日にする方がいいと僕も思う。目印つけてくれたから大丈夫だね」


 うちの子たち、ホントみんな頼りになるわぁ。



 それから、ぐるっと山裾を歩き、草原と林の境を進んでいくと、木材はすぐに見つかった。



 私は棒で地面を引っ掻いて荷車の絵を描き、


「こういう荷車を、引っ張り役と後ろから押す役、二人一組で一台、それを三台作ろうと思ってるんだけど。バズ、気になるところとか、注意することってある?」


 と相談してみた。


 バズはちょっと考えてから、

 重い物を載せて引くなら引き手を頑丈に着けないと壊れてしまうこと。

 車軸に負担がかかるから、しっかりした強さとしなやかさが必要なこと。

 車輪が小さいと力がいるし、道が悪いと動き辛いこと。

 本体が大きいと小廻りが効かないこと。

 後ろの板はスライドして外せるようにした方が荷物の積み卸しが楽になること。


 私の気付かなかった細かい点を指摘してくれた。


「あと、ネコ車があると物を集める時便利だよ」


 荷車は広いところに置いておいて、狭いところにはネコ車で入って物を積んで戻ってくる方がいいとのこと。


「なるほど! その方が便利だね」


 いや、ホントうちの子たち頼りになる。


 まずは、残っていた木材でネコ車を一台作ってみることにした。


 工事現場とかで見るアレを木製で作ることになるので、フォルムは多少角張った感じでイメージする。

 幅六十cm、長さ八十cmくらいの小さな風呂みたいな箱に持ち手が二本飛び出した感じ。その底に一輪だけ車輪が付いている。車軸はしっかりとした強さとしなやかさを持たせ、持ち手にも強さを、そして握りやすさを。

 箱の持ち手と反対側の壁は少し斜めになっているようなイメージで。長方形じゃなく台形だな。

 更に本体は強くて軽く。箱の下には停めておくことが出来るように突起を付ける。


 そこまで考えたところで、


創造(クリエイト)・ネコ車」


 と呟く。


 ほぼ思った通りの出来上がりになった。いや、思った以上かもしれない。


 ただし消費したMPは八百十五。


 強さやしなやかさ、軽さなんて注文をつけたから杉の木だけでは足りなかったようだ。


 それにスキル様が気をきかせてくれたのか、ところどころを補強されていたり、持ち手にグリップが巻かれていたりしてる。複雑な創造物にはイメージ優先で手を加えてくれるのかな?


 少し慌てたが、まだMPは六千五百以上残っている。


 昨晩寝てないからMPを回復していないので焦ったんだけど、慈しみの力で回復している分があって助かった。


 ネコ車と荷車を三台ずつ作るつもりだったけど、もしも戦闘があったりしても対応出来るだけのMPは残しておきたい。

 余裕があるように、今はネコ車は一台だけにしておいた。


 出来上がったネコ車をバズにチェックしてもらうと、「多分使えそう」との答え。使ってみないとわからないらしい。そりゃそうだね。



 私はこれから荷車を作るので、その間に何人かで大豆を採りに行ってもらうことにする。


 場所を知っているジェフとルーシー、ネコ車の使い勝手を見てもらうためにバズの三人に行ってもらおう。サルには気を付けるように。



 まずは木材が足りないので、杉の木を数本、創造で木材に変える。


 そして、ネコ車同様、車軸の強さやしなやかさに注意しつつ、小さ過ぎない車輪を二対四輪、幅百二十cm、長さ百八十cmくらいの箱に付ける。

 箱の後部の板は填め込み式で、上にスライドすれば開けられるようにイメージ。

 持ち手はコの字にして中に入って引けるように。もちろんしっかりした強さを。

 本体は、とにかく頑丈に。物をたくさん運ぶのが目的だからね。


 イメージが固まったので、


創造(クリエイト)・荷車」


 と魔法を発動する。


 ちょっとしたシングルベッドくらいの荷車が出来上がった。


 ちょっと大き過ぎたかな?


 二人掛かりとはいえ、これをジェフたちに引かせるのはどうだろう。


 これは私用ということにして、半分の幅九十cm、長さ百二十cmのものと、その間のサイズの幅百cm、長さ百五十cmのものを、大きさだけ変えて同様のイメージで作りあげた。


 MPは四千を切っちゃったけど、これだけあれば充分だろう。外出先だから少し慎重なくらいがいいと思う。


 そして、残った木材を私用の荷車(大)に積み込んだ。


 なんだかんだ、この積み込みが一番キツかったかも。手伝ってくれたマークとコリーが息を荒げて水を飲んでいる。


「私も疲れたし、ちょっと休憩しようか」


 杉のあった場所の切り株に腰掛けて、MPを回復しつつジェフたちを待つことにした。


 心を落ち着けて目を閉じ、じっと回復をはかっていると、林の中から鳥の囀りが聞こえてくる。


 木蔭で爽やかな風を頬に受け、ピチュピチュと囀る鳥の声を聞く。穏やかな時間だ。


 ふと、鳥たちは何を話しているのだろう、なんて悪戯心が湧き、読心(マインドリーディング)の魔法を使ってみた。




「ねえねえ、豆の方は行っちゃダメよ。ニンゲンがいるから」


「その辺にもいるよ。木を伐ってた」


「あら、そうなの? ブドウの方にはサルがいたわよ」


「ええー。じゃあ今日のごはんは川の方に行って麦にしようか」


「そうね。あっちの方が安全ね」


「うん。じゃあ行こうか」


 バサッバサッバサッ。




 会話を終えて鳥たちが飛び立っていった。



 ――麦、だと……?



 聞き捨てならないワードが出てたよ? 麦なんて絶対欲しいじゃん! 鳥さんたちの食事の場を次々に荒らしているようで申し訳ないけど、川の方か。是非、確認しに行きましょう!


 麦の優先度はかなり高いけど、今日は林に集中した方がいいだろうな。もうお芋が無いから、先に森にも一度は行っておきたいし。などと悩んでいると、


「ただいまー」


「ツルマメ採ってきたよー」


 ジェフたちが戻ったようだ。


「おかえりー、ありがとう。危険なことはなかった?」


 今回はサルも出なくて問題なかったとのこと。サルは今、ブドウの方にいるらしいからね。


 ネコ車を押して来たバズも、


「豆を積んでも大丈夫そうだった。グラグラしたりもしないし、すごく動かしやすいよ!」


 とお墨付きをくれた。


 みんな集まったので、癒しの力で疲労回復をかけつつ相談してみる。


 鳥たちが話してたんだけど……のところで既に面食らってたけど、便利ワード「モモだから」で、そこはスルーしていいらしい。


「川の方に麦があるらしいの。麦は絶対手に入れたいよね? 森にも行きたいけど、先に麦を優先した方がいいかな?」


 バズとマークが言うことには、


「麦は是非育てたいけど、今はまだ畑をやる余裕はないでしょう?」


「麦は量がないと冬の食料には出来ないよ。一部屋分くらいの麦を刈っても一日、二日分になるかならないかだ。急いで食料を集めたい今の俺らには後回しだね」


「種麦になる分だけでも集めておきたいとは思うけど……」


「一応、場所だけ見つけておくのは?」


 ルーシーとコリーも提案してくれた。


「森に行く時に、川の辺りを探しながら行けばいいんじゃないか? どの辺りにあるのかだけ確認しておいて、採りに行くのはまた別の日にすれば」


 ジェフからもしっかりした意見が出てきた。


「わかった。みんなありがとう。相談して良かった。じゃあ、今日は林、明日行けそうなら森に行くことにして、その時麦を探しながら行こう。後でやることが麦を採りに行くのと鉱石を掘りに行くことだね」


「そうしよう」

「うん!」

「いいと思うよ」


 ああ、本当に頼りになる子たち。ありがとう。


 それから、サルの襲撃に警戒しつつブドウを採りに行ったけど、既に移動した後だったのか今日は現れなかった。


 ブドウの実はもちろん、籠を作るのに役立つので蔓もたくさん集めて荷車に積む。


 子供たちは野草や木の実を見つけるのも上手くて、ルーシーはピノのお土産にとドングリも集めたりしていた。


 ドングリ拾いに下を向いていたルーシーが顔を上げ、一点を見つめている。私の感知には何も引っかからないけど何かあったのか、と視線の先を見ると椿に似た花がついた木があった。見とれているのかと、


「ああ、椿かな? キレイだね」


 と声をかける。


 椿なら油を取って髪に使えるなあ。

 アンが櫛が欲しいと言ってたっけ。


 と考えていたら、


「モモ、あれお茶の木だと思うよ。ねえ、マーク、あれお茶の木だよね?」


「ん? ああ、ホントだ。あの花はお茶だと思うよ」


 ええ? そうなんですか? お茶って椿の仲間なの?


 摘んで帰ってマリーにも確認すればいいと言われ、早速そうさせてもらう。


 それにしても森にしろ、林にしろ、本当に豊かで何でも揃いそうだ。先行き明るい感じがして嬉しくなってくる。



 その後も、いろいろと果実や木の実、野草などを集めては荷車へと積んでいった。


 私の荷車(大)には木材やブドウの蔓、薪にする枝なども拾い集めて積んだ。


 荷車(中)は、ジェフとルーシーが果実や大豆を、荷車(小)にはマークとコリーが木の実や野草などを積み込んだ。小さな木の実や果物は蔓で作った籠やザルに入れられている。


 バズは茶の葉とドングリを載せたネコ車を押してきてくれる。




 後はこの大荷物を積んだ荷車を広場まで引いて帰れるかどうかだな。



「さあ、みんな頑張って帰ろう」



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― 新着の感想 ―
[一言] せっかく幼女設定なのに、幼女らしさが全く伝わってこないのが少し残念です。 いくら魂はかあちゃんでも子供ならではの夜は抗えない眠さがあるでしょうし、徹夜してそのまま探索とかしてると、もはや人間…
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