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第十一話 かあちゃんは目的地に辿り着く

本日も二話更新しています。

こちらは二話目です。


お昼にも更新していますので

よろしくお願いいたします。(≡ε≡)/


 獣の襲撃による気疲れからか、歩くスピードが少し落ちてしまってはいたが、私たちは順調に上流へ向けて進んでいた。途中何度か休憩を挟みつつ無理させないように歩いている。


 また肉食獣やモンスターに襲われるかもしれないと警戒を強めていたのだが、襲撃も戦闘もあれ以来は起きていない。


 でも、いつ襲われてもおかしくない。

 ここはそういう世界なのだと認識を新たにした。



 ちなみにトマトは無害だった。


 お腹を壊したりしなかったので、途中の休憩の時、みんなで美味しくいただきました。


 青臭いとか、中のドロッとしたのがイヤだとか、嫌う子もいるかと思ったけど、さすがみんなあの村の出身。好き嫌いを言う子なんて誰もいなかったよ。

 ひもじくてその辺の草を囓ったりなんてこともしてたらしく、みんな強か者なんだ。


 まだトマトはたくさんあるので、美味しい料理にしてみんなに食べさせてあげたいと改めて思いましたよ、かあちゃんは。


 そうして北上していくと、いよいよ目当ての岩山が見えてきた。あと三十分程で辿り着くだろう。


 この辺りからは川のこちら側が川原になっている。川原というと肉食獣に遭遇した恐怖が思い返されるが、ここで最後の休憩をとり、後は真っ直ぐ岩山を目指すことにしよう。


 川原の近くには十五m程の高さの木が何本も立っていて、葉が緑から黄色へと色付き始めていた。

 高いところには黄色に近い黄緑色をしたまん丸い実がポコポコとたくさんなっており、ブドウのようにも見えてとても可愛らしい。細長く大きな葉が茂っているので、もう少し秋が深まると黄葉して見事な景色になるだろう。


「良いところだな。ここは……」


 広がる草原、青い空、陽光に煌めく川面。ここに黄金に輝く木々が加わったら、まるで一架の絵画のようであろう。


 ここでみんなとのんびり楽しく暮らすのは幸せだなぁ……。


 ぼんやりとこれからの暮らしに思いを馳せて休憩時間を過ごした。


 そろそろ行こうか、と立ち上がった時、強風に折られたのか実の付いた枝が足元に落ちているのに気付き拾い上げた。


「ふふっ、かわいい」


 枝に付いた丸い実は提灯のようでとても可愛らしかったので、貰っていくことにした。


「あと少し、頑張って歩こう!」


 笑顔で声をかけると、みんなも元気に立ち上がった。目的の岩山はもうそこに見えている。


 左手に緑の小山とその麓の林、右手に流れる川を見つつ岩山へ近付いていく。

 近付きつつ周囲の警戒をしているが、草原には大きな気配はまるで無い。ウサギなんかの小動物しかいないと思える。


 向こうの林の方には魔力を感じるから、後で確認しに行ってこよう。

 だが、その前に、まずは岩山を確認して拠点とできるか見極めなくては。


 既に目前に迫っている岩山。

 山とはいえ極々小さなものではある。

 日本でよく利用していた複合ショッピングモールくらいの大きさだろうか。山の一番高いところはタワーマンションより高く見えるので、百mくらいあるのかもしれない。

 山の西側、林のある側は勾配が急になっていて、東側の川がある方が緩やかだ。全体的に山肌は岩が剥き出しだが、日当たりの関係か、東側の山頂に近い辺りは草が生い茂っているのが見える。山裾へ向かうにつれ、柔らかな浅い草むらになっていく。


 まずは周辺の確認をしたいんだけど……


「みんな、これが目的地の岩山です。上の方まで登って周りの景色を見ながらお昼にしようかと思うんだけど、山に登る元気は残っているかな?」


 目的地に着いたこと、景色を見ながらお昼のキーワードに、さっきまで疲れを見せていた子供たちが俄に活気づく。


「行ける、行ける!」「うん。頑張るー」とやる気を出してくれた。


 夜明けとともに起きて七時頃に森を出発したと思う。今、太陽は真上より少し手前、十一時頃だろう。なんやかんや四時間くらい掛かってしまったが、その道のりを歩き抜いたにもかかわらず元気な子供たちが頼もしい。

 周囲を見渡せる高さまで登ってお昼にすればちょうど良い時間だろう。


「では最後にもう一踏ん張り行きましょー!」


 ゴツゴツした岩が剥き出しになっている正面は勾配もあるし登りにくいだろうから、東側に回り、緩やかな草むらルートで登ることにした。

 警戒は勿論続けているが、大きな生き物の気配はあまり感じない。時折、鹿が険しい岩肌をピョコンピョコンと器用に飛び跳ねているのが目に入るくらいだ。


 十分とかからず三分の一程の高さまで登って来れた。

 ここから先は多少地面がゴツゴツしてくるので歩きづらくなりそうだが、三十分くらいで草深く斜度が急になる手前辺りまで登れると思う。

 あそこまで登ったらお昼にしよう。



 ◇



「みんな本当に良く頑張ったね! 目的地到着です! お昼にしましょー!」


「キャー!」「やったー!」


 斜面の比較的緩やかな場所を選び、草の上に腰を下ろして、年長組がここまで頑張って運んでくれた果物や木の実をいただくことにする。


 日が良く当たっているので暖かく、爽やかな風が吹いていて、疲れた体に心地良い。


「では、いただきます」

「いただきまーす!!!」


 しゃくっと小気味良い歯応えのリンゴを齧ると、甘く、清々しい酸味が香る。果汁が口の中いっぱいに広がってお腹と心を満たす。

 思い思いの果物に齧り付いては楽しそうにお喋りしている子供たち。みんなの幸せそうな笑顔が溢れている。


 あー、幸せ。

 やっぱり苦労の中にも幸せってあるよね。


 お腹もくちくなって、みんなの心にも余裕が出来たようだ。今度は周囲の景色を堪能することにした。


 岩山の北側に視線を移すと、東側に見えていた川が北上して湖へと繋がっていた。

 結構大きな湖で北から流れてくる川から注がれたキレイな水を満々と湛えている。湖からはもう一本の川が流れ出していて、こちらの川との間には、この岩山よりも大分大きな小山があり、秋になり色が変わったのであろう茶色の草原が広がっている。

 その小山も裾野こそ草生しているが、上の方は岩がゴツゴツしているし、二本目の川の向こうにも大きな岩山が連なっている。岩山の遥か後方には、森からも見えた高く険しい山々が幾重にも続いていた。


 湖より西側は裾を林に囲まれた緑の山々が鎮座している。

 この岩山のすぐ隣の山は小さめで明るい緑色をしているが、その奥に続く山々は森深く、濃い緑色が延々と連なって見えた。


 南側を向くと、私たちの出て来た森が見えるが、西の山々から続いていて、西から東までパノラマ状にずーっと森だ。南東にも山が見えるところから考えるに、この場所は山々に囲まれたほんの隙間のように開けた場所で、湖のおかげで出来た小さな小さな平地なのであろう。


 この果てなく続くように見える深い森の中に飛ばされて、運良くこの地を見つけられた奇跡に感謝しよう。

 森から出ずにいたら、これから来る寒い冬を越せなかったかもしれない。


 この場所なら日当たりも良いし、近くに川も流れているし、作物を育てることも出来るかもしれない。


 岩山を掘って拠点を作れば雨風も凌げるし、幸いなことに今のところ危険という危険は感知していない。

 後は西の林に危険が無いか確認するのと、食料となる果樹や木の実の採れる木、野草などがあればいいのだけど。

 幸い川には魚がいることを確認した。森まで食料を集めに戻るにしても、今回は小さな子たちもいて集団行動だったから四時間もかかってしまったけれど、私だけなら頑張れば一時間くらい、年長組と行動するとしても二時間くらいで行けると思う。いざとなれば日のあるうちに森に食料を採りに行って帰ることも出来る。あの森は本当に恵み豊かで切り詰めれば冬を越せる量の保存食を確保することが出来るだろう。


 狼には気を付けなきゃいけないけど、朝見たあの子はそんなに悪い子には見えなかったんだよね。まあ、生きるために狩りをすることは必要だから、悪意が無かったとしても危険であることには変わりない。こちらに棲み分け出来るに越したことはない。



 子供たちが周囲の美しい景色に圧倒され感嘆の声を上げる中、私はこの地に居を構え、子供たちを守り暮らしていく決意を固めていた。


たくさんの皆様に読んでいただき

本当にありがとうございます。


感謝を込めて

週末二話更新頑張ってみました。


ここからはじめる子供たちの活躍をお楽しみに。


今後ともかあちゃんを

よろしくお願いいたします!

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