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第九話 かあちゃんは子供たちと旅立つ

本日二話更新です。

こちらは二話目です。


お昼にも更新していますので

よろしくお願いいたします。(≡ε≡)/


 翌日、早朝。


 まだ日の昇らないうちに目が覚めた。昨晩はこの辺りで狩りはなかったようで狼に起こされることはなく、ぐっすり眠れた。

 まだみんなは眠っている。外には狼がいるのだろうか。


 私は地下室の入り口までそっと昇り、入り口の外側に障壁(バリア)を張ってから、入り口を塞いでいた土の壁を一部解除して外の様子を窺ってみる。


 もうすぐ夜明けという雰囲気の青く薄明るい空が広がっていた。


 魔力感知で周囲の様子を探ると、夜明けの様子から北と思われる方角に大きな魔力を感じた。

 かなり大きな魔力に気を取られて、すぐ気付けなかったが、その周囲にはいくつかの小さな魔力も分散している。


 多分、狼の群れであろう。


 確認出来るかどうか微妙な距離ではあったが、遠見(ビュー)の魔法と、更に身体強化の補助を目に集中させてそちらの方角を見てみる。

 木の陰ではっきりとは見えなかったが、分散している方の魔力の持ち主はフォレストウルフで間違いなさそうだ。


 では、あの大きな魔力は?


 更に集中を高め、目をこらすと、そこには周囲のフォレストウルフより一回り、いや二回り以上は大きく、青みがかった白のフサフサとした毛並みの狼型モンスターがいた。


 その大きさや魔力に畏怖を感じるとともに、その美しさに見惚れてしまっていた。


 朝日がだんだんと昇ってきて、その青白い体毛を銀色に輝かせ、黒に見えていた瞳が光の加減でブルーに変わって見えた。


 ――その時、確かに私は目が合ったと感じた。


 数秒だったのか、一瞬だったのか。

 狼は目を逸らし、仲間と思しきフォレストウルフたちを率いて森の奥へと姿を消した。


 興味がなかったのか。

 それとも夜が明けたからなのか。

 朝日の中、去っていく姿は神秘的だった。


 夢か幻だったのではと少し自分を疑ったが、昨日見つけた子供の顔程もある肉球の足跡はあの子のものだろうと理解した。


 本来ならば危機感を感じなければいけない状況であったはずだが、私といえば、


 あの毛皮をモフモフしたい……

 肉球をぷにぷにしたい……


 とか思っていた。のんきか。


 目が合った時、あの子から敵意や害意といったものを感じなかったからでもあるだろう。


 更に丁寧に魔力感知を使ってみるが、あの狼の群れが北へと移動していく他にはモンスターの反応は無いようだった。


 私は地下室の入り口を開放し、障壁だけ残して周囲の確認がてら、朝食とお昼のお弁当用の木の実や果実を集めて回った。

 ついでにお芋とアサツキのあった場所を確認して少しばかり確保しておいた。


 それなりの量を集めた頃には、昇り始めていた朝日もすっかり顔を出していた。


 子供たちを起こして朝食を摂ろう。


 今日は数時間の移動になる。

 小さい子たちを残して年長組と先行偵察も考えたが、何が起きるかわからないなら尚更、固まって行動した方がいいと判断した。

 小さい子たちを連れての移動なので、早めに行動を始めたい。早速みんなを起こして回ろう。


 それからみんなの朝食を用意して、


「みんなおはよう。今日の予定を話すので食べながら聞いて下さい」


 と言うと、みんながそれぞれ「いただきます」をしてから果物に手をつけ始めた。

 食前の挨拶が定着してくれたようで、なんか嬉しい。


「高い木の上から確認したら、北東……朝の太陽より左寄りの方向って言えばいいかな? そちらに少し歩くと森を抜けられそうでした。その先は草原になっていて川も流れているのが見えました。

 北に……川の上流に向かってしばらく進んだところに小さな岩山を見つけたので、そこを目指して移動しようと思います。

 遠いので目安ですが、三時間くらいは歩くことになると思います。途中休み休み行きますが小さい子たちには少し頑張ってもらわないとならないと思う。辛くなったら無理せず教えてね。

 ごはんが終わったら各自、水筒に水を汲んで持って下さい。年長のみんなには交代でお昼用の果物や木の実を入れた木箱を運んでもらいます。ちょっと大変だと思うけど『いつも一緒、みーんな元気、笑顔が一番』で頑張りましょう!!」


 ルーシーたち三人娘はニコニコと頷くが、ジェフたちは知らないので昨日の話しを分かち合う。

 みんなが口々に「おまじないかぁ」「いいね」と頷き合う。


「マーク、昨日の菜っ葉のあった場所を確認しておきたいんだけど、ごはんを食べたら教えてくれる?」


 マークはもちろん快諾してくれて、朝食後、案内してくれた。


 最初に私たちが現れた開けた場所から少しだけ南東の方角へ分け入ると、そこだけポッカリ森が切り取られたように日当たりの良い草むらがあって、そこに昨日の白菜モドキが生えていた。

 重いし嵩張るので欲張らず、私の背負う木箱に入る二株だけ採った。

 私の木箱はみんなのより大きめに作ったけど、芋を結構多めに採ってしまったのでこれでいっぱいだ。

 力はあっても躰のサイズが三歳なので仕方ない。


 年長組用の木箱三個には、木製の食器類と果物などを分けて、余裕を持たせて入れている。

 年長組だってまだ十歳と十二歳の子どもなので、あまり重い物は足が鈍るだろうし、道中何か見つけたら入れられるように半分程度に抑えておいた。


 マークと地下室へ戻るとみんなの準備も済んでいた。


 トイレに清浄(クリーン)の魔法をかけ、動物やモンスターが入り込まないように、みんなが出た後、地下室の入り口は塞いだ。


 ここは森での拠点として今後も使う時があるかもしれないので、土には戻さず残しておくことにしたんだ。


「よし、それでは出発しまーす。はぐれないように気をつけてね」


 私は元気良く、とびっきりの笑顔で声をかける。


「はーーーい!!!」


 みんなドキドキとワクワクを隠せない顔で返事をした。



 ◇



 いよいよ新拠点を目指す。


 まずは森を無事抜けること。森の中は木の根が張っていたり、枝が飛び出していたりと歩きづらいので、特に周りに注意しながらゆっくりめで進む。

 まだ体力があるうちに森を抜けられるだろう。

 このペースでも三十分くらいで行けると思う。


 私は魔力感知で周辺のモンスターに備えつつ歩く。いざとなったらすぐ障壁を発動出来るように気を張っていなければいけない。

 なので、根や枝への注意はジェフたちに任せた。頼られて少し嬉しそうにしていたのがかわいい。


 森の中を太陽の位置で方角を確かめつつ進んでいると、マリーが、


「あ! 良い物を見つけました!」


 と弾んだ声を上げた。


「本当だ! ドングリ茸だ!」

「偉いぞ! マリー!」


 とジェフやマークも喜んでいる。


「ドングリ茸?」


「ドングリの木の幹に生えるからドングリ茸です。このキノコだけは似た毒キノコが無いから安全に食べられるんです」


 マリーの嬉々とした説明に他の子供たちからも、


「やったー!」

「ドングリ茸美味しいよー!」


 と声が上がる。


 見るとシイタケに良く似たキノコだった。地球ではシイタケに良く似た毒キノコもあるから不用意に手を出せないけれど、この世界では違うらしい。

 書斎で読んだ植物図鑑の記憶を辿ってみると、確かにドングリ茸というキノコについてそういう記載があったのを思い出す。


「これは嬉しいね! マリーお手柄だね!」


 と褒めると、少し照れながらも胸を張った。


「美味しくて安全なキノコだけど、中々見つけるのが難しいのです」


 だから久々に食べられるとみんな大喜びしている。せっかくなのでありがたく木箱にしまわせていただいた。


 シイタケのようなキノコなら使い道が豊富だから増やせたらいいなぁ。

 これは創造を使ってでもほだ木栽培を試したいなぁ。


 私もみんなも良い物が手に入ったことにより、幾分、足取りが軽くなったようだ。


 モンスターの気配も無く、森の道もなんのそので歩いていく。予定通り三十分程進むと先の方が明るくなってきた。


 時々、闇魔法の地図作成(マッピング)を使い、ここまでのルートを記憶に書き込みながら進んできている。こうしておけば、また森の拠点へと行く時には迷わず戻ることが出来るだろう。

 ドングリ茸のあった辺りもきっちりマーキングしてあるので、うまくするとまた見つけられるかもしれない。



 ――そうして目の前には明るい草原が広がった。


 私たちは無事、森を抜けることが出来たのだ。

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