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第百十一話 かあちゃんは焼き肉パーティーをする

 

 焼き芋をうまい、うまいと食べながらも、燻製室から昇る煙に肉の匂いを感じ取り、ポチくんは鼻をひくつかせている。


 うふふ……。

 夕食には肉を振る舞おう。


 明日、狩りに連れて行ってもらうのだから、残っている生肉は出し惜しみしないで、全て今晩の焼き肉パーティーに使ってしまうことに決めた。



 畑の片付けは午前中で終わっていたので、肥料作りと畑作りの魔法をかけていると、物珍しそうに狼たちも見学している。


「ほお……、すごいものだ。大地に魔力が浸透して……」


「モモちゃんたちはこのようにして食料を集めるのですか。それにしてもすごいです! さすがモモちゃんですね!」


 二匹には魔力の大きさが感じられるのだろう。良く知らない畑なんてものが出来上がることよりも、魔力の大きさの方に感心されてしまった。

 なんたってMP二千五百だからね。



 午後、子供たちと狼たちは訓練用広場で遊んだりして過ごしていた。明日の狩りの連携を復習したり、初参加のアンたちに教えてあげたりもしている。


 私は燻製室の火の番をしつつ、夕食の準備を進めている。


 残りの肉はシーローと猪を合わせても十kgも無いだろう。


 ポチくん、ひなちゃんを筆頭に、体の大きな狼たちが総勢十二匹もいるのだ。この肉だけでは間に合わない。一緒に焼く野菜として、人参、玉ねぎ、カボチャ、ドングリ茸も用意しておこう。


 そして、ひたすら肉を切る。ポチくんたち用のはちょっと厚めに。生でも食べちゃうんだから、火の通りはあまり気にしなくてもいいだろう。一応魔法で滅菌はしておく。


 それから、主食となるうどんも作っておいた。

 これは一人では打つのは大変なので創造を使ってしまった。茹でうどんの状態にしてある。


 焼き肉パーティーなので、訓練用広場でバーベキューにしようと思う。たくさんの肉や野菜を焼けるように鉄板も増やした。


 大切なのは焼き肉のタレ。

 ポチくんたちはいらないだろうけど。

 酒、液糖、醤油、唐辛子にすりおろしのリンゴン、玉ねぎ、生姜、ニンニクを入れて魔法でひと煮立ちさせたら、リネンの実を散らせば完成。


 飲み物も果実水や豆乳を用意して、パーティーの準備は万端。


 そろそろ燻製室の火も落として、お風呂に向かっていい時間だろう。



 みんなで温泉に行き、前回同様に川とお風呂を堪能し尽くしたポチくんたちと、毛皮をキレイに洗い上げられてご満悦なひなちゃん。


 ひなちゃんは、今日は女の子たちの入るぬるめのお風呂にもお邪魔して、みんなで楽しいお風呂タイムを過ごした。



 家に戻ると、燻製室の片付けと干し台の片付けを済ませ、広場にバーベキュー用のかまどを作って、いよいよお楽しみの焼き肉パーティーの時間だ。


 燻製肉の香りに刺激されてみんなのお腹はグウグウと鳴り響いている。ポチくんたちもよだれが垂れそうになってるし。


 かまどに火を入れてもらい、鉄板を温めると野菜とお肉をどんどん焼いていく。


 焼けるまでの間にお皿と飲み物を配って、まずは挨拶を。


「今日も一日お疲れさまでした。ポチくんたちが来てくれて、手伝ってくれたおかげで大量の木材も確保出来ました。ありがとう。明日は昼間の狩りに連れて行ってもらいます。明日の獲物に期待を込めて、残っていたお肉大放出だよ。いっぱい食べて力をつけて、明日は頑張ろうね。それでは、仲間と森と大地と精霊様に感謝して、いただきます。かんぱーい!」


「いただきます! かんぱーい!」


 ポチくんには一杯だけとおねだりされて、乾杯用にワインを出してあげた。


 子供たちには焼き肉のタレをお皿に分けてあげて、焼けたお肉をポイポイと配っていく。もちろん野菜も。


「おいしーい!」

「肉うんめー!」

「このタレ美味いな」


 狼たちにも配ってあげて、となかなかに忙しいけど、私も肉を焼く合間に自分の分をちゃんと食べてるよ。せっかくのお肉、焼き立ての美味しいうちに食べたいからね。


「うん! シーローの焼き肉やっぱり美味しいや!」


 シーローのバラ肉は脂がのっていて柔らかい。

 これが多分、特上カルビなんじゃないかと思う。

 前世では食べたことなかったけど、テレビの中でなら見たことあるやつ。


「脂が甘ーい」とか「噛まなくても口に入れた途端にとろける」なんて芸能人が言ってた国産A五ランク黒毛和牛の希少部位、百g一万六千円などという、「それ、食べ物の値段なの!?」って言うようなお肉に匹敵するんじゃないかと思うくらい美味しい。


「嫌みのない甘い脂に肉の旨みが溶け合っていて素晴らしい! 飲み込んだ後、口の中に広がる香りがやっぱり全然違いますねー」


 食レポするグルメタレントのコメントが思い起こされる。なんだそりゃ、って感じてたけど、今ならわかる気がする。


 ついつい肉の美味しさに浸ってしまっていると、


「モモ、我にもそのタレを。試してみたいぞ!」


 ポチくんの大きな顔がぬっと現れておねだりされた。


 あんまりにも美味しい美味しいとみんなが感激しているので、気になって仕方ないらしい。


 タレにつけたお肉を口の中に放ってあげると、


「おお! なるほど、これは美味いぞ! 料理とはすごいな!」


 すごく喜んでくれたので、狼たちの肉にもタレを付けてあげることにした。しょっぱいのや玉ねぎやニンニクは大丈夫なのか、いまだにちょっと心配してしまうけど、犬とモンスターは違うから大丈夫だとポチくんはお構いなしだし。


 それなら、これもいけるかな?


 作っておいた茹でうどんを取り出し、野菜や肉とともにソースを絡ませて鉄板で炒めていく。

 焼きうどんだ。


「うどんと言うのか? 我はこれが気に入ったぞ! 美味い!」


 柔らかくてモチモチした食感をとても気に入ってくれたらしい。狼たちには味を付けずに、そのまま麺だけ出そうかと思っていたんだけど、ひなちゃんたちも、


「すっごーく美味しいです!」

「うおん! うおん!」


 と大喜びしてくれているので、もう気にしないでみんなで楽しむことにしよう。塩分の摂り過ぎは良くないと思うけど、たまにうちに来た時くらいなら大丈夫なんだろう。


 子供たちも焼きうどんは初めてだったので、良い食べっぷりを見せてくれた。


「ソースってすごいね!」

「うどんってスープでも炒めても美味しいんだ!」


 ユニとルーが特にはしゃいでいるかな?


 肉はあっという間に無くなった。

 シーローも猪のバラ肉も野菜も、焼き肉のタレを付けて、みんなでガツガツ食べてしまった。


 焼きうどんもすっかりみんなのお腹の中に片付いて、人間も狼も動物たちも、お腹がポンポコになって幸せに満ちていた。


 ……ちょっと食べ過ぎちゃったかな?



 ささっと広場は片付けて、家の中に移動する。


 ストーブを点けて、お腹を落ち着けるためにもゴロゴロしながらみんなでおしゃべりをして過ごす。


 ポカポカの居間で、子供たちからせがまれて狩りの話なんかをお話してくれているポチくん。

 焼き肉もしょっぱかっただろうし、喉も渇くだろうと、水を用意するとガブガブと飲んでプハァと顔を上げた。


「良い家だ……。夜でも暖かいのだな。皆が笑顔で、美味いメシもあって、モモの群れは良い群れだ。幸せそうだ……」


「うん。私もみんなも幸せに暮らせているよ。ポチくんたちが仲良くしてくれてるおかげでもあるよ。ありがとう」


 慈しむような目をして、ポチくんが私の顔をペロンと舐め上げる。


「モモは我らの友だちだからな。我らもモモのおかげで幸せに暮らしておる。ありがとう……だ」


 そうして、おしゃべりを一休みにしたポチくんは部屋の中をぐるっと見回し、新しく出来た祭壇に目を止めた。


「あれは……。力のあるものだな。あれがモモたちの守護者という方か。感謝を捧げるのも頷ける……」


 私のお手製の簡易な祭壇でも、精霊様の力を感じられるのか。ポチくんがすごいの? いや、精霊様がすごいのかな?


「うん、私に加護を与えて下さった月の精霊様だよ。そうだ! ポチくん、みんなの部屋も案内するよ!」


 みんなも、うんうん、見て見て! と狼たちに自分の部屋をお披露目している。


 布団や家具といったものに感心したり、クッションに顎を乗せて喜んだりと、楽しい雰囲気で時を過ごし夜は更けていった。



 夜の訓練の時間には、明日の狩りの打ち合わせもした。


「明日は森の南側の狩り場に行ってみるか」


「南側ってどんな感じなの?」


「そうだなあ。北は山に入るから崖が多いが、南はもっと木が鬱蒼と茂った感じだな。北は熊や鹿が出るが、南は猪や牛がいるぞ」


「どちらも突っ込んでくるイメージだなあ。牛って群れと戦うの?」


「うむ……、あれは群れているが、狩りを仕掛ければ逃げ出すであろうから、相対するのは一匹になるだろう。その場の状況判断で狙いを定めるのだが、モモたちの罠があれば楽になるだろうな」


 ポチくんは楽しそうに鼻を鳴らした。


 その他の注意として、沼のようなぬかるんだ場所があったり、草の多い場所もあるから、足元には良く気を付けるようにと言われた。

 靴を作っておいて良かった。


 草むらの辺りには蛇も出ることがあると言うので注意していきたい。



 フォーメーションとしては前回の狩りに倣って、みんなの役割や立ち位置なども確認した。


 アンにはジェフについてもらい、炎が残ってしまった時の消火と、獲物を冷やす時の水をお願いする。

 ルーはコリーについてもらう。これでジェフとコリーの位置が分かれても、それぞれフォローが出来る。


 ピノにはルーシー、ユニと一緒に風を操って匂いで気付かれないようにしてもらい、キティはまだ罠を教えていないので、草むらの蛇などの探知に集中してもらう。


 移動しながらの探知は厳しいので、狩りの間、みんなが獲物に集中してしまう間の付近の警戒をお願いする。私も気を配っているつもりではあるが、緊迫した狩りの間はついそちらに気が行ってしまいがちになる。一人が周囲を窺ってくれているのは非常に助けになる。



 打ち合わせの後は各自、自分の使う魔法のイメージを再確認して、明日のために早めに眠ることにした。


 ポチくんたちには、居間と広間を解放して、どちらでも好きに使ってもらうようにし、広間には水飲み場も用意しておいた。


 私は残りのMPで、先ほど気に入ってくれていたのでポチくんたち用のクッションを作って、畳とキルトを分けて敷くことで広く寝床を用意してあげた。



「それじゃあ、明日はまたよろしくね! おやすみなさい」


「ああ、明日が楽しみだ。おやすみ」


「素晴らしい寝床をありがとうございます。おやすみなさい」




 私もベッドに入り、緊張気味の心を落ち着けて目を閉じる。



 明日は気を引き締めて頑張らなくちゃ……。



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