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第七話 かあちゃんは自分を知ろうとする

 昼食の時、アンにお願いして昨日作った(かめ)の中に魔力枯渇を起こさないよう、時間をおいて少しずつ水を溜めてもらうことにした。

 魔力枯渇からの回復は魔力の鍛錬になるので、寝る前だけ目いっぱい水を出してもらうことにする。


 明日は結構な距離を移動する予定なので、土魔法ででも水筒を作って各自に水を持たせたい。

 今ある分だけでは、多分、料理と寝るまでの飲み水で使い切ってしまうことになる。そのために無理しない範囲でアンにお願いしたんだ。


 昼食後、私は外に出て土魔法でかまどと土鍋と食器類を作ることにした。

 食器類にしろ水筒にしろ、土より木で作った方が軽くて使い易いとは思うけど、創造で作ってぶっ倒れたら夕食が作れない。

 試しに土魔法でかまどと大きな土鍋を三つずつ作ったけど、MPを確認すると合わせて六十しか減ってなかった。何でこんなに違うのさ!

 あ、ちなみに六時間程がっつり眠ったのでMPは全回復してました。


『材料となるものを用意することにより消費MPを抑えられる』


 やっぱり元となる材料があるからかな?

 土魔法は何も無いところから土を出すのではなく、足元にある土の形状や性質を変化させるものだ。


 何も無いところから現代日本の伯方○塩、ビニール袋入り一kgを作り出そうとしたら、魔力消費が膨大になるのも(うなず)ける気がする。


 塩の時はギリギリで残りMPの一割を切ってしまったんだから、材料があれば最悪ギリギリでも一割は切らずに済むはずだ。今はまだお昼を過ぎたところだから、魔力枯渇にさえならなければいい。夕食を作る時間まで休めば少しくらいはMPが回復するはず。地下室の入り口を閉じるのには間に合う。


 かあちゃんってたまに調子に乗って突っ走っちゃう生き物なんだ。なんだかいけそうな気がする!


 私は薪用に拾った枝を一本手に持ち、子供用の小さなスプーン一つだけをイメージして魔力を集め、


創造(クリエイト)・スプーン」


 と呟いた。手から魔力がスルッと抜け、持っていた木の枝はかわいらしい小さなスプーンに変わっていた。


 え? 全然へっちゃらなんですけど……?


 ステータスでMPを調べてみると八十くらいしか減ってなかった。


 もっと試してみよう。

 近くに生えている十mは超えていそうな大きなクルミっぽい木の幹に手を添え、同じように、


創造(クリエイト)・スプーン十本」


 と呟くと、木の枝が数本消え、足元に十本のスプーンが現れていた。消費したMPは八百ちょっと。

 さらにスプーン三本とお玉三個を作って五百弱のMPを使った。まだMPは七千五百程残っている。


 材料があるだけでこんなに違うんだ……

 よくわかんないけどわかった。

 零からの創造は出来るだけ控えよう。

 私がぶっ倒れてたら子供たちを守れないからね。


 いや、それにしても便利だこれ。


 私はさらにスープ用の木のボウル十四個と、木製の筒のようなものにコルクのように栓が出来る木の水筒十四個を作り出した。

 それでもまだMPは五千以上残っているので体の調子も余裕だ。


 凄い可能性にワクワクが高まるが、もう少し落ち着いたら詳しく調べてみることにしよう。安全を確保出来ていない今は、まだそこまで手が回らない。


 ともあれ、せっかくの超便利スキルをある程度は使いこなせそうで良かった。



 ◇



 夕食の支度を始めるには、まだ早いので、他のステータスの確認も引き続きすることにした。

 朝のように三つのウィンドウを開く。


 次は加護を見てみよう。


 加護の文字にそっと触れると、やはりまた新たにウィンドウが開き説明文が書かれていた。



 ====================


 月の精霊の加護


 癒し、慈しみ、幸せを分かち合える力。

 加護が自ずから認めし者にのみ与えられる。

 反作用として憎み、恨み、蔑みなどの心を

 良しとせず、心に不調をきたす。


 それらの力が起こす奇跡や効果程度などは、

 与えられし者の資質により異なり、努力、

 成長、強い思いなどをきっかけに開放される。


 開放された効果の内容、使用方法などは

 与えられし者の脳内へと直接付与される。


 奇跡は心から必要とした時、

 起こるべくして起こるだろう。


 開放時属性付与:月(土、光、闇)


 称号付与:加護に認められし者


 ====================



 ――心から必要とした時……奇跡……。


 私は子供たちを守るための奇跡の力を手に入れたのか。我知らず跪き、胸の前に手を組み、天に感謝を捧げていた。


 ――ありがとうございます。必ず守り抜いてみせます。


 瞼を開け、再び決意を新たにし、ステータスのチェックを続けた。


 開放時属性付与:月(土、光、闇)か。

 これで今まで使えなかった魔法が使えるようになったんだ。


 三つも属性があるのは、やはり月の加護のおかげだったようだ。


「いらないなんて軽く言っちゃったけど、かなり助けられてるなぁ。みんながスキルや加護大事! って言ってた言葉が今更身に染みるよ……」


 ここで一つ疑問が出てくる。

 光属性って結界使えるんじゃなかったの?

 あの時の精霊の口振りだと、かなり特化したように感じたんだけど。魔法書にだってシールドとかバリアとか書いてあったよね。


 もう一度やってみよう。


 自分の前に自分を守る光の盾が現れるのをしっかりとイメージしながら魔力を集める。本に書いてあった呪文を唱える。


(シールド)


 少しの魔力と引き換えに、目の前に透明な板のようなものが出るのを感じる。


「で、出来たの? よし、じゃあ」


 同じ要領で、今度は自分の周囲を光の守りで包むイメージをして、


障壁(バリア)


 と唱えると、半円形の光の膜が私を中心に半径一mくらいで張られた。


 そこへもっと広く、強くとイメージしながら、さらに魔力を流し込んでみる。

 光の膜は半径三mくらいまで大きくなった。


 光は一瞬ですぐ消えてしまい、バリアは目には見えていないが、さっきより厚い壁が確かにそこにあるのを感じられる。


 その時、強い風が吹き抜ける。

 木がガサガサと大きく揺れた。

 頭上からクルミの実がボトボトと落ちてきたが、三m程の上空で弾かれ、私に当たることはなかった。


「わ、わ、スゴイ! 出来る! 守れる力……ありがとう!」


 思い返してみると、木の上で使おうとした時はイメージも集中も呪文も、全てが不十分だった。

 慌てて手を抜いたらダメダメってことだね。私、すぐ焦ってジタバタしちゃうから気をつけなきゃ。


 かあちゃんとド○○○んは割と簡単にパニクりがちなのである。自分のことだが、まず落ち着け! と言ってやりたい。


 ――MPも確認しておこう。


 (シールド)障壁(バリア)で使ったMPは合わせても二十くらいだった。


 重用する魔法なのでいろいろと調べたり、きちんと練習する必要があるが、こちらも落ち着いてから少しずつだな。

 取り敢えず何が起きても咄嗟にみんなを守れる力が手に入ったのはありがたい。

 強度の確証は得られていないが、MPを流し込めば強度も上げれるようだから、その場しのぎや、時間稼ぎにはなるだろう。


 その他の魔法についても随時調べていくことにしよう。


 なんだかホッとして膝から力が抜けた。

 そのまま地べたに座り込んで、残る称号についても見てみることにした。ステータスウィンドウの称号に触れるともう一つウィンドウが開いた。



 ======================


 転生者:異なる世界の魂がこの世界に生まれ変わ

     った者で前世の記憶を持つ者の称号


 専用スキル:異世界言語理解 翻訳



 慈母:月の精霊の加護の開放型ユニークスキル

   「慈母の溢れ出る愛」により付与された称号


 加護に認められし者:月の精霊に認められ加護を

           与えられし者の称号


 複合スキル:加護付与 慈母の祝福


 ======================



「これで終わり……?」


 それ以上の詳しい説明は無いようなので、そのウィンドウを閉じた。

 他に何かわかることないかなぁと、あちこちペタペタ触りつつ、一つ一つウインドウを閉じていく。

 最初のステータスウィンドウまで戻った時、新たなウィンドウが開いた。



 ==============


 HP17/17  MP5262/9030


 攻 F    魔 S

 守 F    賢 C

 早 F    器 D


 ==============



 これはなんとなく理解出来る。理解出来るが、


「うわ、魔法系と比べて攻撃系の能力低すぎだぁ。まあ、自己流でしか鍛えてない三歳児なら当然か……。もっと鍛えないと森でサバイバルきつそうだな……。魔力で身体強化するにしても……」


 そこそこの大きさの声で呟いた時、


「何してるの? 誰と話してるの?」


 年長三人娘にばっちり独り言を聞かれてしまった。これって結構恥ずかしい。


 三歳になってから誰とも殆ど喋ってないからか、私は一人でブツブツ言う癖がついてしまっていた。


「あー、うん、ごめん。独り言。それより何かあった?」


「そういう訳じゃないけど」


 未だ昼間でも安全が確実と言えない中、集団行動を! と言っておきながら、一人で何やらゴソゴソ、ブツブツやっている私を心配して見に来てくれたらしい。


「みんな優しいね。ありがとう」


「んもう、モモはしっかりしてるけど、まだ三歳なんだから。ちゃんと私たちお姉ちゃんを頼ってよ」


 頬を赤く染めながらルーシーが言う。かわいい。

 ほんわかした雰囲気が流れ、自然と微笑みが零れてしまう。


「それで何をしていたんですか? ……これは?!」


「うん。今日は温かいスープでもごちそうしようと思って準備してたんだ。肉は入ってないけどね」


 辺りに整然と揃ったかまど、鍋、食器類に気付きマリーが唖然とする。目がまん丸でかわいい。


「うわぁ、すごいですねぇ。ももちゃんには驚かされっぱなしです。私たちにお手伝い出来ることはありませんか?」


 アンは驚いているとは言うけど、どこかマイペースだ。うん、かわいい。


「そうだね。作る時にはお手伝いして貰おうかな。ただ、まだ作り出すには少し早いかと思って。今は昨日ジェフに教えてもらったステータスってのを見て、いろいろ確認してたんだよ」


「ステータスですか。モモちゃんのステータス気になります。見せてもらってもいいですか?」


 マリーに言われ、お互いに確認しておいた方が今後都合がいいことに気付いた。


「うん、もちろんいいよ。マリーたちのステータスも見せてもらっていい? 見せ合いっこしようよ」


 三人とも大いに乗り気になってくれて、ワクワクした顔で「いいね!」「順番こにします?」「いっせーのにします?」などとはしゃぎ出した。



 みんなで一斉に見せ合うことに決まり、私たちは四人並んで、せーので声を揃えた。



「ステータス オープン!!!!」



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