64.村生活 Ⅰ
「この村は変わりませんね。」
シロは村全体を見渡してそう言った。僕達は村に入り、村長の家に向かっている。村での生活に登録事項などは存在しないが、見知らぬ者が勝手に住み着いているのは、流石に筋違いだ。簡単な報告だけすると言う事だろう。
「この村には何人住んでいるの?」
見張りの人に僕は聞いた。見張りの人は少し悩んだ様子を見せたが、すぐに答えを出した。
「……大体、百人いるかどうかです。村の外と中を行き来する住民が多いので、いつも村にいるのは十人程度ですね。」
「そうなんだ……。」
幼い僕は意外と少ない人の数に安心したのか溜息を吐いた。見張りの人は、そんな僕の様子をチラリと一瞥すると、すぐに目を離した。
「見張りさん。」
「……」
「見張りさん。」
分かっていても返事をしない、言葉通り見張りさんの袖を引っ張るようにして尋ねた。
「……何ですか。」
いかにも不機嫌そうである。僕は見ていて気付いたのだが、この見張りさんはシロに対してと幼い僕に対してでは、態度があからさまに違う。確かにシロは昔この村にいたかもしれないが、明らかにそれだけでは別の何かがありそうだ。
「あなたの事をどう呼んだら良い?」
「呼ばなくても結構です。」
実に素っ気ない。まさかそこまで避けられるとは。だが、幼い僕は避けられている事に気付いてるのかどうかは知らないが、言葉を続ける。
「じゃあ、忍だから……シノで!」
何故か幼い僕は、大陸の東国の国の文化を知っているようだ。更に見張りの人が特別な魔術の一種である〈忍術〉を使う忍である事も。所謂、クノイチである。
「シノ……。」
意外にも見張りさん────改め、シノは付けてもらった渾名を拒絶する事はしなかった。何か思う節があるのかもしれない。だが、幼い僕はまだまだ終わらなかった。
「シロと一字お揃いだね!」
子供の無邪気な笑顔と言い放つ。それはシノの心に刺さるのだった。
「お揃い……お揃い……。」
目以外を隠しているシノだが、何故か僕にはシノの顔が赤くなっているような気がした。
「シノ、大丈夫ですか?」
シロはシノを気遣う仕草を見せるが、しっかりと渾名で呼んでいた。天然ドSという称号を贈りたい。
「……はっ!」
名前を呼ばれたシノはそのまま気絶するのであった。それはもう勢いよく。それを見たシロは……
「相変わらず、シノは面白いです。」
「……ドS。」
「何か言いましたか?」
「何も。」
幼い僕は意外と博識であったりした。
* * *
「……?ここは?」
シノが目覚めたのはベットの上であった。身体を起こして辺りを見ると、シロがいた。
「あれ……どうして?」
「シノが倒れたので診療所に連れてきました。」
「あの子供は……?」
そこで寝ていますよ、そう言ったシロは隣のベッドを指差した。スヤスヤと眠りについている幼い僕がいた。幼い僕は寝ていても記憶を見ている僕は起きているようだ。たまに記憶が飛ぶ事があるが、これだけ鮮明な方がおかしいのだろう。
眠る僕を見て、シノは呟く。
「不思議な子供ですね……。」
「私もそう思いますよ。アデルは……私達の魔力に気付いていない。」
シロはそれに言葉を返す。……魔力?記憶ではそれが何かは分からないが、どうやらシロとシノは不自然な魔力を発しているようだ。
「……私は地下に行ってきます。アデルを見ていて下さい。」
シロはシノにそう告げて立ち上がった。シノは頷く。地下とは何なのか。この村の地下には何かあるのだろうか。僕はシロについていけない事に嘆息する。何とも都合の悪い記憶である。そう言っても無駄ではあるが、言わざるを得なかった。
すぐにシロは部屋の外へ歩いて行く。シノは眠る僕を見る。目は背けなかった。それも凝視していると言った方が正しいだろう。
「……この子供は何者か。監視しろ、と言った〈#1〉の事がよく分かりました。伊達に〈予知する者〉と呼ばれている訳では無さそうです。」
どうやらこの村には〈#1〉と呼ばれ、別名が〈予知する者〉である存在がいるようだ。能力は別名の通り、予知する事か。
そしてシノがシロに対して言った〈#5〉。シロにも何かしらの別名が存在するのでは無いか?そしてそれはその者の能力を現す。少しずつ分かってくることも増えてきたようだ。
言えることは────この村には必ず何かがある。そして、その鍵となるのはシロが口にした〈地下〉にある筈だ。
幼い僕を第三者視点で見る僕は密かに決心した。誰にも怪しまれずに調査できる。一つ欠点は幼い僕の周囲にしかいられない事だ。これは記憶だから諦めるしかない。
そうして、幼い僕の村生活は始まるのであった。
最後の締めが甘かったですね、、、
次からは頑張ります……




