56.原初文明 Ⅰ
ここからは新章です。
と言っても昔話ですけどね(笑)
まあ……この調子でお付き合いして下さると嬉しいです。
世界は光に包まれた。初めは小さな遺跡で。次の瞬間には既に世界を光が覆い尽くしていた。一瞬の出来事に誰もが目を眩ませる。勿論、アデル、ルカ、レーナも。
「うわっ!!これは!」
強い光に目を開けない。咄嗟に目を手で庇ったことで持っていた鏡を落とした。鏡は音を立てて割れる。目を守ったことで一旦落ち着いた。何が起こるか分からないから、迅速に効率的に物事を進めよう。
「今はそれどころじゃないみたいだね。ルカとレーナは無事?」
『無事だよ。』
「無事!」
二人とも大丈夫なようだ。安心した。だが、この光の正体が分からない。分かることは強い魔力反応がある事だ。空気全体から。恐らくこの光は世界全体に広がっているのだろう。魔法の発生源が全く掴めない。
「ルカはこの魔法知ってる?」
『……分からない。』
ルカは知らないようだ。という事はこの世界の魔法では無い可能性が高い。そうなれば僕達に出来ることは何も無い。
「僕にはこれから何が起こるか分からない。これがもし大規模な魔法であるならば、魔法の影響で三人が離れるかもしれない。何らか身体接触をしていれば大丈夫だと思うんだ。二人とも僕の肩に触れてくれる?」
『ちょっと待ってね。』
ルカは竜神。レーナはあのミシェルの部下だ。どちらも五感と気配の察知などには長けている。視界を塞がれた状態で容易く僕の元まで来た。二人はそのまま僕の肩に触れる。
こうなれば僕達に出来ることは……念話を送っておこう。
『……ミシェル?』
『はい、アデルさん。先程ぶりです。』
『あ、うん。先程ぶり。』
こんな事態なのに慌てないミシェル。僕も思わず挨拶を返す。
『対策は何かある?』
『無いですね。』
考える素振りも無かった。既に何かしら試した後なのだろう。そうであれば、僕達に出来ることは何も無い、という訳だ。
『……分かった。もしもこれが転送類の魔法であれば、転送後に念話を頼む。僕からも試すけど、一応両側から試してみないとね。』
『そうですね。考えていませんでした。もしも転送が起こった場合にはそのようにします。レーナはそこに?』
『はい、います。』
レーナが答えた。今は僕とルカとレーナとミシェルの四人が念話で繋がっている状態だ。二回話す面倒を避けるためにも会話を聞いてもらっている。
『これももしもだけど、転送があったら引き続きアデルさんを助けてください。』
『分かりました、ミシェル様。』
そして、僕達は一言二言交えて念話を切る。後はこれがどうなるかだけである。そう、少し油断した時であった。
耳に響く轟音が鳴る。ルカやレーナに聞こうにも、声が掻き消される。念話でどうにか伝える。
『二人にも聞こえる!?』
『『聞こえてるよ。』』
何なんだ、この轟音は。そう思うと同時に意識を失った。
────意識を失う直前。誰かに手を引かれたような感触があった。それが誰かまでは分からなかったのだが。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
夢を見た。何かのお話を聞いている僕の姿がそこには見える。第三者視点だ。誰が話しているのかは覚えていない。恐らく記憶からは忘れさられているのだ。幼いのだから仕方は無いが。
話しているお話は……聞いた事がない。記憶にも無いが、僕は夢に見ていた。誰かの声は続く。
「アデル、続きを話しても良い?」
「うん、良いよ!」
「ふふっ、分かったわ。じゃあ、話すわね。────『この世界には沢山の種族が住んでいます。……人間種、竜種、精霊種など。それは、遠い昔に〈竜神〉という始祖の存在によって作られた世界に、とある別の神様が関わったのが始まりでした。』」
話しているのは創世記……だろうか?だが、他の神が関わったという話は聞いたことが無い。確かにこの世界には、明らかに違う文化が残っているのだが。
『とある別の神様というのは、別の世界の神様でした。その神様は竜神が作った世界を見て、なんて美しい世界なんだ、と感動し、嫉妬しました。そこでその神様は、竜神が聖域に引き篭っていたのを良い事に、自分のものにしようとしたのです。
その世界を奪う事は簡単でした。何故なら、その神様は位の高い神様だったからです。当然、その術も知っていました。瞬く間に世界はその神様のものとなったのです。
その神様は今までに幾つかの世界を創った事がありました。ですが、全ての世界は滅亡してしまいました。理由は神様にも分かりませんでしたが、自然のせいなのでは無いか、と考えました。
その答えは当たりであり、間違いでもありましたが、それを教えてくれる者はいません。神様は自然には手を加えずに〈文明〉を創り出す事にしました。
それをこの世界では〈原初文明〉と呼ぶのです。』




