表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
始祖の竜神と平凡の僕。  作者: 秋色空
四章:翠竜討伐編
56/66

55.国家転覆 IV

 王宮で最も高さがある場所。構造が複雑でどこもあまり高さが変わらないように見えるが、街が一望できる場所があった。


 それは王の住まう部屋のベランダであった。街が一望できるのだ。それも絶景である。流石に王都の外までは見えないが、人で賑わう王都だけでも絶景である。いつかはこのような所に住んでみたいものだ。夢の話だが。


 僕達はベランダに立つと、ミシェルと連絡を取った。勿論、念話だ。ミシェルも準備をしていたのか、すぐに繋がった。


『意外と呆気なかったですね。』


『王宮に入るまでが大変だったよ……?』


『王宮に入ってからは否定しないんですね……。』


『まあね。』


 ミシェルとは相変わらずのペースで話す。これぐらいの距離が一番落ち着くのだ。関わり過ぎず、離れ過ぎず。ルカはどちらかと言えば、関わり過ぎている気もするが、許容範囲である。


 恐らく映像で見ているとは思うが、詳しい内容を念話で伝えた。伝え終わるとミシェルは少し考え込む素振りを見せたが、すぐに返事をした。


『……流石ですね、アデルさん。』


 何度も聞いた事のあるその言葉。嬉しいけど僕は別の言葉が欲しかった。我儘だと知っているけど、一言だけ言って欲しかった。


『アデルさん、お疲れ様、です。』


「……ありがとう。」


 ミシェルは僕の心を読んでくれるのかもしれない。僕は労って欲しかった。自分のした行動が正しいかどうかは知らない。だけどそれをたった一言で良かっのだ。他の何もいらない。ただ……ただ、労って欲しかった。


 労ってもらったのは嬉しいのだが、現実はそれほど甘くない。僕達がしている事は『国家転覆』。まだ終わっていないのだ。


 国民は全てを知る必要がある。実際はこんな事をする義務も無いが、余興のようなものだ。王がどのような人物であるが、知った方が面白いだろう、と思ったぐらいで。


「流石。アデルは酷い。」


 とルカとレーナから代わる代わる言われた僕の気持ちはズタズタだ。それでも僕は実行する。だって……面白いから。


 最近、色々と適当になっている気もするが、まあ旅人から良いよね。じゃあ、始めようかな。


「…………」


 僕が今から行うのは、決して既存の魔法で実行できる事柄では無い。魔法の詠唱が存在しないのだ。これは魔法としてまだ(・・)存在していない。今から魔法を作るのだ(・・・・・・・・・・)


 魔法を作る、という行為はあまり難しい事ではない。方法を知っていて、魔法が使えるものであれば、誰でも作れるからだ。僕が今から作るのは光を使った魔法だ。


「砂を加工して硝子に……さらに加工して……こうだ。」


 僕が今作ったのはこの世界では普及しているもの。それを魔法で作成したのだ。その正体は鏡。硝子が様々な過程を経て、鏡になるのだ。魔法であれば、細かい過程を魔法現象で代用することが出来る。


 完成した鏡を持って、僕は事象を想像する。僕が想像するのは、この鏡に映像を投射する魔法だ。何度か挑戦してようやく成功した。これであれが出来る。


『何をするつもりなの?』


 ルカが聞いてきた。僕は隠さずに教える。


「巨大な鏡を幾つも作って、この世界に配置するんだ。そして、映像を流す。流す映像は既に録画していたものでね。」


 僕達は戦いの様子を、王都近辺での戦闘を含め、全てを録画している。【保存】という魔法だ。


「それで……アデルはどうするの?」


 今度はレーナが尋ねてきた。レーナが尋ねたのは恐らくこの鏡を使って何をしたいか、では無い。その先の話についてだろう。録画していた映像を流して、僕が何を目指しているのかを聞きたいのではないか。


「まだ決めてないよ。多分、成り行きに任せると思う。」


 僕は戦いの前後で変化しなかった、王都の風景を見て答えた。王都は美しい。だけど、それもこの愚王が作り出した景色だ。少しは感謝しないといけないのかもしれない。


『じゃあ、私はアデルに見守る事にする。』


 ルカは言った。あくまでも僕のしたいようにさせてくれるらしい。恐らくそれが正解かどうかは、ルカにも分からないのだろう。物語で生きる者は、物語の結末は誰も知らない。僕も人生という物語に生きる一人だから。


「……わ、私も。」


 それにレーナも乗っかったようだ。僕は軽く微笑む。レーナはからかわれたと思ったのか、少し頬を膨らませる。僕はレーナの判断を疎かにするつもりは無いんだけどな。それを言い出せる勇気は僕には無かった。


 ◇ ◇ ◇


「ああ、愉快だ、愉快。なんて面白いんだ!」


 この場所を知るものはごく僅か。恐らくこの世界で最も長寿な生物もここの事は知らないだろう。ここは一つ前の文明の遺跡。前の文明は約数万年前。どんなに長寿な種族も数万という歳月は生きられない。それが生物の運命(さだめ)だ。


「君はどう思うんだい、〈#13(サーティーン)〉────いや、今の名前は逆転者(チェンジャー)だったね。」


「どうだろうねー?面白いかもー?でも少し物足りないー?」


「君もそう思うかい。私も同じだよ。じゃあ、やり直そう(・・・・・)。────【時代は再び繰り返される】。」


 少年の様な背丈の魔物(・・)は立ち上がり、詠唱した。


 ────『唱えるはこの世界の魔法に(あら)ず。異なる世界の魔法なり。』


 これは古くより語り継がれた言葉である。誰がいつこの言葉を言ったのかは定かでは無い。だが、細々と語り継がれている。今この瞬間を見た者が遺した言葉かもしれない。違うのかもしれない。その真偽は誰にも分からない。

ここでまた章が完結です。

次は五章。まずは話の続きからですね。


閑話も書きたいですねー……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【 他の連載作品 】

廃墟世界の大改革

【 お知らせ 】
ありがとうございます!

◇始祖の竜神と平凡の僕◇
4000PV達成しました!

◇廃墟世界の大改革◇
100PV達成しました!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ