46.翠竜 vs アデル Ⅲ
どうやら、昨日投稿した45話の後半が抜けていたみたいです。急いで修正しました。
現在は治っています。話が繋がっているので、46話を読む前に確認された方が良いと思います。すみません。
固唾を飲んで状況を見る。ミシェルは硝子を等距離に配置して、それを媒介する独自の魔法【望遠】によって、アデル達の魔法を見ていた。状況を芳しくない。アデルは数によって押されているようだった。さらに王都で徐々に集まりつつ、騎士団と国家魔術師団。これらが駆け付けてくれば、さらに状況は混乱するだろう。出来るだけその前に終わらせたい。
◇ ◇ ◇
僕は村人達が草から出てくるのを待つ。数分待ったが、未だに一人も出てきていない。おかしい。抵抗する手段が無いことは気付いているはずだ。死んでも良いのか?それとも僕がしないと確信しているのか?僕としては【火玉】を出し続けるのにも魔力を使う。あまり長続きすると翠竜が倒せなくなる。
翠竜は【重力】に苦しめられて動けていない。たまに僕を攻撃してくるが、攻撃速度が普段の十分の一以下であるため、十分に遅い。僕は苦労せずに避けていた。
このままでは状況は一向に変化しない。ではこれではどうだろうか。僕は策を考えることにした。それを思いついたのは翠竜を見た時だ。────即ち【重力】を使う。
僕は村人が隠れているであろう、周辺一帯に【重力】を発動する。こちらに発動するのは重力を軽くする方だ。極端に重力を下げることで草を掴んでも、浮かび上がるだろう。予想通りであった。その一帯からは村人が十人ほど浮かび上がった。
僕は【回収】の魔法を発動する。村人の手にある〈魔石〉をかき集めていった。総計五十個。一人が五個持っているらしい。これだけあれば翠竜を倒すのに使えるかもしれない。但し、これで気を抜いた訳ではなかった。
発動させた【重力】の範囲外に逃れた村人が魔法を放つ。僕は事前に気付き、これを避ける。そしてすぐさま【重力】。浮かび上がると【回収】。三人分で十五個さらに〈魔石〉を手に入れた。これで総計六十五個である。
その内の十個を使用して、僕は翠竜に発動している【重力】の魔力補充、威力向上をする。残りは五十五個。さらに別の地点から魔法が発動する。それを避け、同じく【重力】を発動。
「ちっ!これでも喰らえ!!」
次に浮かび上がった村人は意外と賢かった。浮かび上がると同時に残りの全ての〈魔石〉を使用して、上級魔法を発動した。危うく僕は真正面から魔法を浴びる所であった。どうにか躱すが、それでも体を掠った。痛みに顔を苦める。
今、空中に浮かんでいる村人は十四人。浮かべ続けるのも大変であるため、どこか逃げ出せない所を作ろうと考えた。そこで土魔法の【建築】を使用する。造形を凝るような暇はないため単調な小屋だ。ただ、その小屋からは出られない。そこに村人達を入れた。喚き散らすが構う暇もない。
ここまでで一旦息を整える。流石に魔法の連発は体に負荷を掛けすぎる。翠竜を横目にルカとレーナの様子を見る。二人が相手している村人は残り僅かのようだ。これであれば大丈夫だろう。僕は〈魔石〉を一つ使って、残りの村人全員に【催眠】を発動する。抵抗することもなく眠ったようだ。
眠った村人達を【重力】を使用して、小屋に入れた。当然〈魔石〉は回収している。これで総計九十個の〈魔石〉が回収できた。既に使われた〈魔石〉も沢山あった。しかし、これも再使用は可能である。使い終わったものは〈アイテムボックス〉行きだ。僕が有り難く使わせてもらう。
これで妨害するものはいなくなった。まだ騎士団と国家魔術師団は見えていない。僕は翠竜を見る。そこには【重力】に苦しむ、翠竜の姿がある。この状態であれば倒せる。念願の翠竜討伐だが、予想外に翠竜では無いところで苦しめられた。だが、もう終わりだ。僕は詠唱を始める。
「【優雅な自然の景物よ、優美な自然の風景よ、美しき自然を我が手に宿し、狂い無き一手を与えん】【花鳥風月】」
次は邪魔をする者はいない。【花鳥風月】を完成させ、僕の右手は光に包まれる。後は触れるだけ。万が一のため、もう一度発動する準備は出来ている。僕は自身に【重力】を発動して、反重力にする。この操作は難易度が高い。魔法の上級者の百人に一人程度が扱える程だ。僕はこれを習得するのに二年ほど費やした。
「────終わりだ、翠竜。」
僕は六年という月日を改めて悔いる。この六年はとても長い。色々な変化があった。それは小さな変化もあれば、大きな変化もあった。勿論、良い変化もあるが、悪い変化もある。それも全て含めての『変化』だ。僕にとってこの『変化』は小さなものだった、とは到底言えるものでは無い。
徐々に翠竜に近付く。翠竜は僕に攻撃しようと足をバタバタと動かしているが、ただの滑稽な竜だ。避けるまでもない。残り五メートル。これで全てが終わりだ。僕達は元の生活とまでは行かなくとも、平穏な日々は取り戻せる。
そして、手を触れる。当然、竜は光に包まれる。
────しかし、その光は【花鳥風月】ではなかった。
「この光は!?」
僕は背後を見る。そこにはルカとレーナがいるが、魔法を発動したものはいない。草むらだろうか。いや、方角が違った。この方角は────王都?まさか。
翠竜越しに王都側を見る。そこには望んでいない人々がいた。国に仕える騎士団と国家魔術師団。僕の絶対魔法は、国家魔術師団の絶対魔法によって防がれたのだ。これで疑いようがなくなった。
「やはり、あなた達が関わっていたんですね。」
僕はそう告げる。国家魔術師団は問答無用で攻撃を開始した。一斉に魔法が僕に降り掛かってくる。【防御】を発動。ルカとレーナも範囲に入れている。そこに大量の魔法が当たる。轟音を上げて魔法が直撃する。魔法の威力は様々だが、中には上級魔法が多くある。もし、至高魔法が当たれば、すぐにこの【防御】が破壊される。
幸いにもその中に至高魔法はなかった。但し、それはその攻撃の嵐の中で、だけの話であった。さらに攻撃が降り掛かる。僕は【防御】をもう一重発動し、二重にする。そこに魔法が直撃する。次の魔法はすぐに【防御】を破壊した。急いで後退する。それを追撃する。至高魔法だ。先程の魔法を耐え抜いたからこその至高魔法だろう。だが嬉しくない。
至高魔法から逃げつつ、魔法を構成する。そして発動。僕が放った三つの至高魔法は、国家魔術師団の至高魔法に直撃し、相殺となった。残り二つの至高魔法はそれぞれルカとレーナだ。国家魔術師団はルカとレーナも狙っていた。ここで全員を殺して、情報が漏れないようにするのだろう。いい心掛けだ。
次の攻撃を想定して、僕は構える。




