43.レーナ
大遅刻です、、
今回は少し長いです。
後半はレーナの心境。
◇字下げ処理を忘れていました。
一ヶ月が経過した。ミシェルとはこまめに連絡を取っている。情報収集をミシェルがしてくれているおかげでリアルタイムで情報を手に入れている。レーナも情報収集の才能があり、僕達と別行動をした時は僕達の倍以上の情報を収集している。
「あっ!」
僕は思わず声が出た。城壁が見えたのだ。あれは王都の外壁。王都の外壁はアルグランテの数倍の大きさを誇り、鳥ですらも入れるか怪しい。ルカとレーナも見上げる。
「あれが王都……。今日はどこに行くの?」
近頃は王都付近の村々を訪ねている。翠竜の情報を仕入れやすいのだ。時には翠竜が近くを通ったなどの情報もあった。そして数回、翠竜によって壊滅した村も通った。酷い荒れようであり、翠竜によって全滅した後に盗賊などが残った金品を盗んでいるようだ。
「あそこの村だよ。」
僕は右方向を指さした。そこには小さな村がある。今日はその村の近くで野宿をするつもりだ。王都が見える位置に来たので、いつ翠竜が来ても良いように、なるべく村から近い場所で空から見えない位置にする。
「先に行ってくるね。」
レーナは駆け出す。これもいつも通りだ。レーナが先に到着して、村人達に話を聞き出すのだ。そして僕達は村の近くを見回り、村の状況を見て、テントを設営する。そして合流するのだ。村人にもテントは気付かれないようにする。
レーナの姿は段々小さくなり、遂には見えなくなる。僕達は急がずに追い掛けた。結局、最後までレーナの姿が見える事は無かった。村が見えると、それ以上村には近づかず、村の周りを歩いた。翠竜が襲撃した際に村を把握しておいた方が動きやすいと考えたからだ。
村に到着した時には既に夕方になっていた。レーナは村人に情報を聞き出せるだけ聞き出すと、アデル達を探す事にした。勿論、大声で聞くことも出来ないため、念話である。
『アデル、どこ?』
『ちょっと待ってね────そこから南に五百メートル、西に三十メートル進んだ所だよ。』
『分かった。』
レーナは言われた通りに南西方向へ進んだ。既にこのやり方は他の村でもしたために慣れている。アデルから〈魔物探査〉を借りているため、方位も把握している。
「レーナ、おかえり。どうだった?」
「一応、聞き出せた。」
レーナは答える。ミシェルの元で働くためには人並み外れた才能が必要となる。特に情報収集の面での才能は重宝された。レーナはその情報収集の優れた能力によって、ミシェルの企業に雇用された。一流企業に入れたと喜んだものだ。
その後も情報収集部門として、会社に必要な情報を収集し続けた。一見、必要無いと思われがちな情報も必要になる場合がある。ただ単に情報を収集すれば良い訳では無いのだ。情報を必要か必要で無いか見分け、振り分ける力も必要となる。
レーナはその中でもトップの成績を誇っていた。彼女のその能力は優れた才能をもつ者だけが揃っているミシェルの会社でも輝くものがあったのだ。それはミシェルの目に留まり、いつからかミシェル直属の部下になっていた。
ミシェルが求める情報を集める。それだけを仕事として。時に無理難題のような仕事も任されたが、何とかやり遂げた。
そんな時だった。ミシェルが嘗て、共に旅をしていた人と再会したと聞いたのは。ミシェルがどのような話をしたのかは知らなかったが、同僚である男から聞いた話では翡翠の竜についての調査の手伝いをして欲しい、という事だった。
私はミシェルの直属の部下だ。ミシェルが願うのであれば私は仕事をする。喜んでその仕事を受けた。
だが、予想に反してその仕事は楽だった。仕事上、戦地へ赴くこともある、この仕事。ミシェルは主人としては素晴らしいだろう。仕事に応じた報酬を用意してくれて、わざわざ労ってくれる。他の会社の主人ではこうはいかない。
そして今回の仕事はアデルとルカという人の元で情報を収集する仕事。ルカという女性は声が出せないらしい。念話で話していた。情報収集のために私は念話を傍受する事が出来る。私はそれを二人に披露して見せた。だが、そこまで驚かれなかった。
それには私の方が驚いた。通常依頼の場合、同じことをすれば相手は度肝を抜かれる。気絶する人までいる程だ。まあ、念話が出来る人自体が少ないのだが。私は二人が何者なのだろうか、と興味が湧いた。
私はとある日の朝食でアデルに聞かれた。
「レーナ。僕達は君と協力する必要があるんだ。別に君が嫌だと言うのならば、僕達は強制しない。だけど念話でも良いから、話してくれる?」
私は自分の声が嫌いだったから話さなかった。アデルは本心でこう言っていた。私は相手の心を少しだけだが読むことができる。言っていることが本当か嘘か見分けられる程度である。アデルの言葉は嘘では無かった。
アデルはこちらを見て、真摯に向き合ってくれている。私は少しの間、考える振りをした。別にそこまで喋りたく無い訳では無い。だが、周囲の人には見せられない。ミシェルの知り合いであれば良いだろう。だが他の人はだめだ。
『……部屋で話す。ここでは話したくない。』
そう念話で伝えた。すると何故だろうか。アデルとルカが微笑んだ。私には訳が分からなかった。そんなアデルとルカの顔を見つめていると、二人は食べ終わったようだ。部屋へ向かう。
部屋で私はフードを取って見せた。呪われた半身。人が忌み嫌う存在である。これを見せれば、いつだって人は憐れむか、自分でなくて良かったと安堵する。それを見ると私は辛いが依頼者の要求であるため、仕方ない。
「これが私の姿。」
案の定、アデルは驚いた。ルカも何も言わなかったが驚いている。但し、憐れむような視線は無かった。ただただ驚いたようだ。その反応は新鮮で再び私は驚いた。
その後に呪いについて説明した。アデルは静かに真面目にその話を聞いてくれた。私は話すことで感情をぶつけていたのかもしれない。話終わると、アデルはこう言った。
「そうだったんだね。……レーナ、ルカ、少しここで待っていてくれる?」
もしかしたら依頼破棄の申請書でも持ってくるのかもしれない。ここまで付き合ってくれた人は始めてだが、残念だ。────あれ?残念……?私、そんなこと考えてた?
アデルは一時間ほど帰ってこなかった。何もしているのだろうか。ルカに尋ねてみるが、微笑むだけで何も言わない。私は何か特別なものを感じて苛立ちのようなものを覚えた。
「ごめん、待たせた。」
『……アデル、それは?』
ルカも知らないようだ。尋ねていた。私もそれを見てみる。何だろう。魔力が篭っている……。
「これは魔道具だよ。この腕輪は、呪いを緩和するものだ。多分、声と外見は元に戻る筈だよ。……呪い自体は消えないけどね。」
渡された腕輪を私は着けてみた。そして私の右手を見ると、呪いが見えなくなっていた。右半身が黒く覆われていたが、それが無くなったのだ。
「あ……。」
声も戻っている。私はこれ以上言葉が出なかった。嬉しさの余り、喋ることを忘れていたのだ。それほどに嬉しかった。流石にここでしてくれる依頼主はいない。その後に二つの魔道具も貰った。
「僕には今は魔道具しか上げられないが、それでも……それが自分に出来る最大限の事ならば、僕は自分に出来ることを全力でして上げる。それが僕の旅仲間に対する配慮の一つだと思っているよ。」
アデルの旅仲間に対する思いに心打たれた。この魔道具の価値は高い。それほど貴重な物を私にくれたのだ。対価をお金で払うことは到底できない。では、仕事で頑張るしかない。私は全力で仕事をやり遂げようと決心した。




