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始祖の竜神と平凡の僕。  作者: 秋色空
四章:翠竜討伐編
43/66

42.旅立ちの前に

本日二回目の投稿です。

明日からはほぼ毎日(・・・・)投稿です。

 僕達はミシェルとの作戦会議を終えた。これからは本格的に翠竜の討伐の為に王都へ向かう。そこで僕達の手助けをしてくれることになったミシェルの部下の女の子レーナの旅の準備を始めることにした。


「レーナ、旅の準備どれくらい終わってる?」


 僕はレーナに聞いた。宿はミシェルが取ってくれている。今は宿で朝食を食べている。レーナは僕の問い掛けに反応せず、黙々と食べていた。しかし、暫く食べていたが食べ終わったのか、レーナは僕の方を向いた────と思う。レーナは食べる時にもフードを被っているために顔が見えない。何となくそう思っただけだ。


 レーナは手で何かを示した。ん?なんだろう……。レーナが示す手振りが僕には理解出来なかった。ルカに聞いてみる。


『ルカ……分かる?』


『多分、もう少しという事だと思う。』


 するとレーナが頷いた。それに僕とルカは驚愕する。今の会話はレーナに聞かれていなかった筈なのだ。二人だけで念話をしていたのだが、それをどうやってか、傍受したようだ。よほどの魔法使いで無い限り、これは出来ない技だ。


「レーナ。僕達は君と協力する必要があるんだ。別に君が嫌だと言うのならば、僕達は強制しない。だけど念話でも良いから、話してくれる?」


 僕はレーナの顔……フードの中を見つめて言った。僕は何故か見つめられている感じがした。もしかしたらレーナが僕を見ていたのかもしれない。そうであれば嬉しいのだが。


 レーナは少し考えている素振りを見せた。暫く俯いたまま、何も行動を起こさなかったが、その後に顔を上げた。そして、念話で僕達に伝えた。


『……部屋で話す。ここでは話したくない。』


 そう言った。僕達は一刻も早くアルグランテから王都へ向けて旅立ちたいため、急いで朝食を終えて、部屋に行った。僕が扉を閉めると、レーナはフードを取った。そして念話ではなく、実際に肉声で話した。


「これが私の姿。」


「それは────!?」


 僕は再び驚かざるを得なかった。ルカも声には出していないが、驚いている。そのレーナの姿は嫌でも嫌悪感を抱いてしまう、そんな容貌だったのだ。それは顔がでは無い。右半身が何かに乗っ取られているのだ。呪いの類だろう。


「私は五歳の時に呪術師に呪いを掛けられた。その時に両親は死んだ。私だけが何故か生き残った。だけど、こうやって右半身が黒く染まっている。呪いが身体を蝕んでいるの。」


 呪いは常に身体や精神を乗っ取ろうと、体を蝕み続ける。要するに常時、苦痛に悩まされるのだ。そして寝ることが出来なくなる。寝られたとしても悪夢しか見ないのだ。それも自身の最も見たくない光景を何度も何度も見る事になる。この世界で最も忌み嫌われる魔法の部類を〈呪術〉と言う。


 ルカの竜魔法が使えれば、恐らく治るだろう。しかし、ルカは喉がやられている。結局はルカの喉治療が一番の課題となるのだ。もしかすればミシェルはそれを読んで、レーナを僕達の付き添いにしたのかもしれない。


「じゃあ、どうして声も出さないの?」


 僕は最後に質問をぶつけた。レーナは再びフードを被っている。僕達の前では隠す必要も無いんだけどな。


「……それは声がこんな感じだから。」


 レーナの声は呪いの影響なのだろう。声が二重になっている。元々のレーナの声と呪われた半身の低い声。それが混じっているのだ。実は呪われているかどうかの判断には声も重要な点となる。呪われる程にこのような低い声になっていくのだ。レーナはそれを懸念したのかもしれない。


「そうだったんだね。……レーナ、ルカ、少しここで待っていてくれる?」


 僕はそう言うと急いで自分の部屋に戻った。そして自身の〈アイテムボックス〉の中からとある物を取り出し、それに魔法を発動させた。僕は三つほど違う物を作ったのだが、既に一時間も待たせてしまった。急いで戻るとしよう。


「ごめん、待たせた。」


『……アデル、それは?』


 ルカは興味深げに僕の手にあるものを見ている。僕はそれをレーナに渡した。


「これは魔道具だよ。この腕輪(ブレスレット)は、呪いを緩和するものだ。多分、声と外見は元に戻る筈だよ。……呪い自体は消えないけどね。」


 末の声は沈んでしまったが、取り敢えずレーナに渡して嵌めてみてもらう。レーナは左腕にその腕輪を装着した。すると、レーナの右半身を覆っていた黒が消えていった。


「あ……。」


 声も戻っていた。決して、これがレーナの呪いを軽くするものでは無い。だが、レーナの自由ぐらいは保証してあげようと思って作った。


「その腕輪は〈対呪ノ腕輪アンチカーズブレスレット〉って言うんだ。常に着けてて大丈夫だからね。あと、これとこれも着てみて。」


 そう言って僕はマントと指輪を渡した。既にお馴染みになった、あの魔道具。


「ルカの魔法を元に自分で作成した魔法で複製したんだ。指輪は収納量無限の〈アイテムボックス〉。マントは最硬を誇る〈琥竜ノ鎧〉だよ。その二つも常に着けてて大丈夫だよ。」


 レーナは三つとも着けてみた。〈琥竜ノ鎧〉は着ている者の身体の大きさに適合するように大きさが変化する代物でもある。マントを殴ったり蹴ったりしているが、ビクともしない。最硬が単純な殴りや蹴りで破られるはずが無い。〈アイテムボックス〉も使ってみたのだろう。目を輝かせていた。


「僕には今は魔道具しか上げられないが、それでも……それが自分に出来る最大限の事ならば、僕は自分に出来ることを全力でして上げる。それが僕の旅仲間に対する配慮の一つだと思っているよ。」


 僕は微笑んだ。釣られたようにルカも微笑む。どうやらルカの御墨付きのようだ。竜神に御墨付きを貰えるとは光栄の限りだ。


 レーナはそれに反応しなかった。最初、僕はどうしたのだろうか、とオロオロしたしまったが、すぐに気付いた。ルカに目配せをして、僕達は部屋から出た。部屋の中からは一人の女の子の泣く声が聞こえた。レーナはまだ大人では無いのだ。泣きたい時に泣けば良い。


 僕達はそうして旅に出る支度を終えたのだった。

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