41.ミシェルの癖の強い部下達
今日は間に合いました……。
本日も二回投稿すると思います。
GW最終日……!!
「記載が終わりました。」
ミシェルの部下に任せた翠竜出現場所を地図と照らし合わせる作業は終わったようだ。流石、ミシェルの部下。仕事の速さが恐ろしい。化け物揃いである。僕はこうはなりたくない。
「ありがとう。」
ミシェルは渡された地図を受け取り、礼を口にする。するとミシェルの部下は頬を赤らめた。いきなりの事態にどうしたのかと僕はミシェルとその部下のメイドを見比べた。
「ミシェル様に感謝されるほどの事でもありません……。どうぞ私には罵倒を浴びせて下さい……。」
僕とルカは唖然とした。何なんだ……この人。僕は急いでミシェルを見る。嘘だと言ってほしい。
「……ふざけないでください。」
うん、そうだ。おふざけなのだ。こんな事が日常茶飯事に起こっている訳が無い。
「……罵倒して下さらないのですか?」
何故かそのメイドは跪き、ミシェルを上目遣いで見る。……犬だ。犬にそっくりだ……。何なんだ……この部下は。
「……はぁ。」
どうやら期待は外れたらしい。この部下はいつもこんな様子のようだ。怖い怖い。近付かないようにしよう。
僕は大分引いていた。表面上では若干引いた程度だろうが、ミシェルを畏怖の眼差しで見た。ミシェルが溜息をつく。仕事が大変なのは依頼の数だけではなさそうだ。癖が強い部下に悩まされているのだろう。
「……ミシェル、まさか他にも。」
渋々といった様子でミシェルは頷いた。これ以上見たくない。急いで話し合いを終わらせるとしよう。
「じゃ、じゃあ急いで進めよう!」
『そ、そうですね!』
違和感しか無い会議が進むのであった。ミシェルはどうにかメイドを下がらせ、話し合いに参加した。メイドはふざけながらも、仕事はしっかりと果たしてくれたようだ。地図には各襲撃について詳細に書き込まれている。
「一回目は……王都から少し離れた小さな街か。」
「……街ごと壊滅しています。」
翠竜による一回目の襲撃は酷かったようだ。死者も多数発生した。一気に国中に翠竜の存在が知れ渡り、旅人はかなり減った。五年前の事であるため、既に翠竜を知らない者はほとんどいないだろう。
「二回目はかなり王都に近いみたいだ。」
二回目の襲撃は王都の隣にある大きな街であった。壊滅とまではねずに半壊だったが、住民の八割が死亡したそうだ。旅人も数百人亡くなっている。この襲撃が半壊だったのは、途中で騎士が駆け付けたからだ。翠竜は騎士団と更にその後に駆け付けた国家魔術師団によって追い払ったそうだ。それもタイミング良く。
「これが怪しいね。タイミングが合いすぎている。一回目で翠竜の強さを見せつけて、二回目で騎士と国家魔術師が救済することで王国の評価を底上げする……。一回目は大きな街では無いから、あまり王都に被害は無かったみたいだ。」
『酷い……。』
そう、酷いのだ。王家の私利私欲に国民の命が奪われている。国民の命を担う者が国民の命を軽んじて良いはずが無い。不敬罪になる可能性が高いが僕はこう言いたい。
「王失格じゃないのか……?」
「アデルさん。」『アデル。』
「うん、言い過ぎた、ごめん。」
明らかな失言だった。不敬罪になれば、死刑になる可能性もある。もし本当に王が翠竜に関係しているのであれば、邪魔者は何としてでも排除しようとするだろう。これは三人の中で意見を止めた方が良さそうだ。
「その他の襲撃はやっぱり小さな街ばかりですね。」
「思いたくないんだけどな……。」
僕達は項垂れた。項垂れざるを得なかった。国民の一人として、国を治める者として今の王は王に相応しいと思っていたのだ。とんだ裏切り行為である。僕達の信頼を返して欲しい。
「取り敢えず、これで作戦会議は終わりにしませんか?あまりゆっくりしても王都に着くのが遅くなるだけですよ。」
『そうだね。アデル、これぐらいにしようよ。』
「うん。最後にミシェル。僕達の手助けをしてくれる人って……?」
僕は先程まで怒りで忘れていたが、ミシェルのあの癖の強い部下が僕達と共に出掛けるのだ。少しでも性格がまともである人が良いものだ。
「あー……それですね。少し待って下さい。」
ミシェルはそう言うと部屋の外へ出ていった。呼びに行ってくれたらしい。それならば僕達がそちらへ行けば良かったのに。
暫くしてミシェルが部屋に戻って来た。背後には男が着いてきている。彼が僕達についてくる人だろう。果たして癖が強いのか。
「こいつらですか?」
その男は僕達の方を見て、ミシェルに聞いた。ミシェルは「そうだよ。」と答える。
「今日からアデルさん達について情報収集を助けてあげて。」
「姐さんがそう言うのなら。」
「よ、よろしく。」
僕はどうにか挨拶することが出来た。予想はしていたけど、癖が強そうだ。しかし、その男の反応は違った。
「はっ!てめえなんかと親しくする必要はねえよ。姐さんに近寄んな、殺すぞ!」
ダメだ、程よい立ち位置が分からない。どう関われば良いのだろうか。ミシェルに助けを求める。ミシェルは溜息をついて、男に言う。
「やっぱりあなたに手伝ってもらうのは辞めます。彼女を呼んできてくれる?」
「姐さん、アイツですか……?アイツはヤバいですよ。」
「知ってる。だけど一番まともなのも彼女でしょ?」
「そうですけど……。分かりました、呼んできます。」
どうやらまともな人が来そうだ。僕は安堵する。ルカを見ると、ルカも安堵していた。やはり同じ心持ちなのだろう。僕だけじゃなくて良かった。
「姐さん、呼んできました。」
数分して男は戻ってきた。部屋に入ってきたのはその男の後ろにいた女の子だけで、男は部屋を立ち去った。あれでも仕事は出来るのだろう。
「レーナ、頼むね。」
レーナと呼ばれた女の子は頷いた。フードを深く被り、顔は見えない。身体は小さい。だから大人ではないと思ったが、もしかしたら大人なのかもしれない。聞くのは……辞めておこう。僕は「よろしく。」と挨拶をする。レーナは頷いた。無口なのだろう。
「これで決まったから……お別れですね、アデルさん、ルカさん。……お元気で。私も全力で後方支援させて頂きます。」
「ありがとう、ミシェル。また暫くの別れだ。────ルカ、レーナ行こう。」
そして僕達は部屋から出た。これから、レーナの旅の支度をしなければ。僕達の翠竜は大きな一歩を踏み出し、前進したのであった。




