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始祖の竜神と平凡の僕。  作者: 秋色空
四章:翠竜討伐編
39/66

38.六年前の話

12:00に投稿できませんでした……。

少し長くなっています。

本日二回目の投稿です。

「久しぶりです。アデルさん。」


 その女性(ミシェル)は再び現れた。僕達が再会できないだろうと、諦めていたその矢先に。世界は広いが、実際は狭いようだ。でも、それよりも今は再会を喜びたい。


「うん……久しぶり、ミシェル。」


 六年の歳月を経て、成長したミシェルに驚きを隠せない。六年前のミシェルは可愛らしい少女。そのイメージだった。だが、今は面影は残しつつも、成長した女性だった。狼人種の特色であろう、身体は華奢である。


『ミシェル……六年間はどうだった?』


 ルカは待ち切れずに質問した。しかし、それをアデルが止める。先に自分が。という意味なのだろう。それに頷いて、ルカは待った。一泊置いて、アデルは言う。


「ごめん。」


 その言葉にミシェルとルカの二人は呆けた表情をした。大丈夫か、この人、とでも言いたそうな視線が痛い。謝らなくてはならないと思っていたのだ。自分なりの誠意を体現した、その反応はイマイチであったようだ。


『アデル、落ち着いて。』「アデルさん、落ち着いて下さい。」


 声を重ねて、言う二人。僕は冷静である。何方かと言えば、冷静でないのは二人の方なのだ。


「いや、二人こそ落ち着いて。はい、深呼吸。スーハースーハー。」


 僕は深呼吸をすると、それに合わせて二人も深呼吸をした。二人も落ち着いたようだ。そこで僕は言葉を付け足す。


「謝りたいのは六年前の事だ。僕が意識を失ったせいで、二人には迷惑を掛けた。死の恐怖を味わせただろう。本当に悪かった。」


 謝り方とはしては失格だろう。だが、それでも僕は自分なりの誠意を見せて謝った。僕は頭を下げ、数分その状態を保った。二人が何かを言うまではその状態であり続ける気だった。


「アデルさん。」


 ミシェルは僕の謝罪に首を振った。そうではない、と。


「アデルさんが今すべきなのは謝罪ではなく、感謝だと思います。誤り違いですよ!」


 六年経っても、ミシェルは変わらなかった。変わったのは肉体的な面と少しばかり物事に対して勢いが強くなったことだけだ。充分、成長してる気がするが気にしない、気にしない。僕は微笑んだ。そして、再び謝る。但し、先程は謝罪。今は感謝だ。意味は全く違う。


「ミシェルもルカも……ありがとう。」


 僕は微笑み返されただけだった。少し不満が積もるが、僕が不満を言う権利は無い。


 それから僕達は六年間の事を話した。大半はミシェルの話だったが、それでもミシェルの成長を十分に感じられる話だった。


「二人と別れた後に、私はアルグランデに向かいました。」


 ミシェルはどうやら当初の目的通り、アルグランデに向かったらしい。道が分からなかったが、旅人に聞くなどしてどうにか辿り着いたようだ。アルグランデに到着したようだが、そこからはまた親の場所を知るために情報収集が必要だった。


 数ヶ月の歳月を費やして、ようやく片親……母親と再会した。母親はメイドをしていた。優しい人に救われたらしい。住み込みのメイドとして働く事になったそうだ。ミシェルは母親と過去の話を沢山したらしい。母親は長い時を経ても母親であってくれたようだ。


 母親によると、ミシェルの父親は労働力として北の辺境に連れて行かれたようだ。それはルカが【探索】で調べた内容にも合致した。母親はメイドを辞める決意をしたようだ。優しい主人はそれを許してくれ、金や服まで持たせてくれたらしい。


 そうして、二人は旅に出たようだ。その道中でもミシェルは魔法の練習を怠らずに毎日続けた。教わる人がいないために自己流で魔術を上達させなければならない。結果、新しい魔法などを作り出し、他の人とは違う魔法系統になった。


「ミシェルはルカの喉を治せるような魔法を知ってる?」


「私は知りません。ごめんなさい、ルカさん。」


『私は大丈夫だよ。こちらこそ心配をかけてごめんね。』


 どうやら回復系統の魔法も開発したようだが、高機能ではないらしい。自己で開発した魔法は、飛び抜けた才能がない限り通常の魔法よりも劣ったものになってしまう。下位互換という訳だ。


 そこから道中では様々なことが起こりながらも二年の月日を経て、父親がいる北の辺境の地に行ったらしい。そこでは労働者が軽んじる風潮があり、労働者達は厳しい生活を強いられていた。


 街は広く、住宅地を探す為でも苦労したが、旅人からの情報でどうにか住宅地を見つけ出したらしい。さらに一ヶ月を掛けて、父親を探したようだが、見つからなかった。そこで父親が働いていたと思われる仕事場に聞いてみた所、仕事を辞めて、アルグランテに行ったと言う。


 入れ違いになったと気付いた二人は急いでアルグランテに戻ったそうだ。そうして今から二年前。ミシェルは父親と再会した。父親は窶れていたが、昔の父親と変わらなかったそうだ。三人は狼人種の村に戻り、暮らし始めたという。


「ここまでは大丈夫ですか?」


 ミシェルはそこで一拍置いた。喋り倒したため、少し息が荒かったが、整えた。僕達も話を整理する。


「……大変だったね。」


「いえ、アデルさんやルカさんと比べればそこまで大変では無かったと思います。先にお二人の話を聞いても良いですか?」


 今度は僕達の話をすることにした。大して長い話でもない。僕が目覚めたのは最近の事であるため、短い旅の間の話しか出来ないのだ。僕が全て語ると、ミシェルは少し笑った。


「アデルさんらしいです。」


「そうかな……?」


『私もそう思う。』


 二人にそう言われてしまった。僕は少し苦笑いをする。この空気感だと僕だけが気まずいのでミシェルに続きを急かす。


「……分かりました。では続きをお話します。」


 そこからはミシェルはひたすら魔法の練習をしたそうだ。狼人種の村で家族と暮らしながらの生活はとても楽しかったそうだ。僕も家族との生活には憧れがある。だが、僕に家族がいない以上、その気持ちは分かり合えないのが残念だった。


 ミシェルは低い頻度だが旅に出ていたようだ。時には水の女神の泉も訪れたそうだ。遺跡に入って、蒼き竜に鍛えてもらったらしい。


「お陰で体力面にも自信があります!」


 流石、狼人種と言ったところか。本来は運動神経が優れていて、魔術に劣っているのが狼人種である。しかし、ミシェルは魔術を得意としているため、両立している珍しい存在であった。


「そして、一週間前に蒼き竜から聞いた話ですが、アルグランテにアデルさん達が現れると聞きました。」


 何故か蒼き竜は僕達の動向を知っていたらしい。どこで手に入れた情報なのかは知らないが、ミシェルはそれに従って昨日、ここを訪れたらしい。そして今日、僕達が訪れたという訳だ。


「門番さんに協力して頂きました。」


 そう言うミシェルの顔は悪い表情をしていた。魔法を使ったのだろう。


「ミシェル……。」


「分かってますよ。もうしません。」


 ミシェルは僕の説教を上手く流した。いつの間に……。


「まあ、これで私の話は終わりです。────では、本題に移りませんか?」


 ミシェルの表情は真面目なものに一変した。僕達も顔を引き締める。

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