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始祖の竜神と平凡の僕。  作者: 秋色空
四章:翠竜討伐編
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35.大街道の宿場町

今日はもう一回投稿するかもしれません。

 ジュカの街を出て、数日。早くも大街道の入口に来ていた。六年前の旅は目的が無かったためにゆっくりとした旅であったが、今回は違う。〈翠竜討伐〉という目標を立てた。だからこそ、行動が迅速なのだ。行動効率を考えて、適度な休憩は取る。だが、動く時は普段よりも早足で一歩でも多く歩くのだ。その結果、今に至る、という訳だ。


『アデル、ここはどこ?』


「記憶が正しければ、大街道と小街道の交差する場所にある宿場町だね。旅人を泊める宿が沢山あるから、宿に困る心配は無いと思う。問題は……無いね。よし、まずは宿を探そう。」


 何か問題があるだろうか、と考えてみたが何も浮かばなかったので、すぐに宿探しを始めることにした。宿探しと言っても、宿の雰囲気や出入りする人、噂などから決めるだけだ。大抵の場合はどこも大丈夫である。


 情報を収集しようと、取り敢えずは酒場に入ることにした。アデルは確実に大人になっている。成長は感じられないが。二十二歳になってしまったのだ。ここまで来ると、老いが早そうで嫌だな。この世に未練がありすぎて、死んだとしても幽霊体として戻って来そう。というより戻ってくる、絶対。


 どうでも良い自信に満ち溢れながら、酒場で赤の他人の会話に耳を傾ける。


「おい、聞いたか────」


「────の宿は呪われているらしい。」


「────はいいぞ。旅人がよく好んで行くそうだ。」


 これ以外にも幾つもの話を盗み聞きしたが、最終的に旅人が進めるのは同じ宿のようだ。この酒場から少し離れた所にある宿、〈氷樹の氷柱〉というらしい。近場では人気の宿のようだ。近場がどこかは分からない。兎に角、そこに行ってみたが、意外と酒場で聞いた情報よりも綺麗な宿だった。


 細かな所まで念入りに掃除がされていて、何しろ宿で働く者達の教育がしっかりとなされている。これは簡単なようで難しい事だ。この手腕を持った人には一度で良いから会ってみたい。色々と聞いてみたい。教えてくれるかは分からない。まあ、聞いてみたいだけだ。戯れ言と思って聞き流してほしい。


 宿の主人に話し掛ける。この主人も礼儀正しく、対応が良かった。もしかすれば、この主人が直接教育しているのかもしれない。


「部屋は二つで宜しいでしょうか。」


『一つ。』


「……分かったよ。二人部屋でお願いします。」


「分かりました。少しお待ち下さい。」


 そう言うと主人は一度、奥に下がった。何故かルカは一人部屋に固執するが、ルカは僕が一人ではダメだと考えているらしい。それは……子供と見られているのだろうか。


『私にとってアデルは弟みたいなものだよ。』


 ルカは心を読んだかのように答えた。ルカにとって僕は弟……。いや、ルカが竜神だから僕にとっては違和感しかないけどね。


「お待たせしました。こちらが部屋の鍵でございます。替えの鍵はありませんので、紛失しないようにお願いします。」


「分かりました。」


 僕が口を開こうとしていた時に主人が戻ってきた。お陰で有耶無耶になってしまったが、別に重要な事でもないので、この話はここで終わりにする。僕達は指定された部屋に行った。


 部屋はこれまでに来た宿の中では最も良かった。まず部屋が綺麗なのだ。埃一つ落ちていない。さらにどれも清潔感がある。他にも細かい事を挙げれば沢山あるが、目立った項目はこれぐらいだ。それでも他の宿に比べると断然こちらの方が良い。


 ここには情報収集をする数日間だけ泊まる訳だが、勢いで数週間泊まってしまいそうだ。それでも目的がある以上はそちらの方が優先である。諦めるとしよう。


 僕達は動きやすいようにマントを置いた。荷物はこれぐらいだ。残りは全て、僕とルカの〈アイテムボックス〉に収納している。やはり魔道具は便利である。宿を出て、再び酒場を訪れた。なるべく店の主人に近い席に座り、酒を頼む。店主は若干、若すぎる二人に目を見張ったが、アデルが「聞きたいことがあります。」と言うと、すぐに酒を用意した。


「どうぞ。」


 アデルは少し飲むと、すぐに置いた。本題はこちらではない。店主に翠竜についての話を聞く為だ。僕は店主に早速聞くことにした。


「すみませんが、翡翠のような竜について何か知りませんか?」


「……報酬はいくらだ?」


 そう言うからには少し自信があるのかもしれない。僕は少しばかり箔をつけて、銀貨数枚を出す。普通は銀貨一枚ほどだ。店主は少しばかり目を見開く。薄目の店主が目を開いたことによって、報酬が成立したことを悟って、僕は再度言う。


「では、質問に答えて頂けますか?」


「あぁ、だが────」


「勿論、有益な情報であれば、さらにこれだけ差し上げましょう。」


 僕は銀貨十枚を出した。情報の対価としては充分すぎる額を超えてしまっている。これならば、どうだろうか。


「分かった。俺が知った情報はお前さんにとって良い情報かは知らん。俺が知っている情報はその翡翠みたいな竜が王都を回避するように(・・・・・・・・・・)その周辺の都市を襲撃していることだけだ。」


 王都を回避するように、か。なかなか有益な情報だ。可能性だが、翠竜を操っている者がいるとすれば、その者は王都にいる可能性が高い。もしくは王都にいると思わせたい、という可能性だ。その場合はこの際置いておこう。やはり王都が何やら怪しいようだ。王家の魔法使い達はかなりの魔法の使い手だ。翠竜でも善戦する筈なのだ。何度も戦って負けるのがおかしい。


 どうにもきな臭くなってきた。店の主人に銀貨十枚をそのまま渡した。金には困っていないので、別にこれぐらいは苦にもならない。他の旅人にも話を聞くとしよう。

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