34.街道を進む
すみません、昨日は投稿できませんでした。
GWは頑張りたいです。
あ、五月になりましたね。
街道を進むと見えてくるのは森、森、森。景色も何も無い。ただの大自然だ。勿論、大きな街の近くへ行けば、農地なども見えてくる。だが、ここは森ばかり。少しばかり退屈なのだが、口には出さない。走った方が良さそうだが、それも口には出さない。何故か?理由は簡単だ。……ルカが自然に耳を傾けているから。
ルカが言うには、自然には声があるらしい。それが何の声かは分からないが、確かに声が聞こえるらしい。六年前の旅の時にも、高い頻度で聞こえていたようだ。僕には聞こえなかったが。
それよりも僕が今したいのは、筋力増加だ。別に筋骨隆々になりたい訳では無い。何しろ六年も眠っていたのだ。筋肉がすっかり衰えて、魔法で補強しなければ動くことすら出来ない。瞬きにも魔法が必要なのだ。
そのために少し休憩している時などは魔法の発動を切って、立ち上がる事から慣れさせている。その前に目を開くことからだが。だが、それはどうにか出来るようになった。瞬く時間が少し長引くが、今はそこに魔法は使っていない。
問題は四肢だろう。特に指だ。全く動かない。立ち上がるために何かに手をつくのだが、それすら力が入らないのだ。手をつくだけですぐに力が抜けて肘から崩れる。腕立て伏せのようなものをしているが、二回も出来ない。腕立て伏せとは名ばかりだ。
「ルカ、休憩しよう。」
『分かった。』
また休憩する。数時間に一回の割合で休憩しているが、既に旅を始めて二日。二十回以上は休憩している。要するに二十回以上は休憩しているのだ。その度に筋力増加の運動はしているため、少しずつだが回復してるような気がする。いつかは治るだろうから、気がするだけでも別に良い。問題なのは万が一の魔力が切れた時だ。その時はどうなるか自分でも予測がつかないのである。
今回の休憩でも勿論、筋力増加のための運動をする。まず、その場に座り、目の周辺の筋肉の補強する魔法を解除する。途端に瞼が重くなる。それを無理矢理に上下させて、自分で操作出来ることを確認する。
次に手の指だ。これを解除して、指を動かしてみる。全く力が入らない。まだまだ筋力を増加させる必要があるようだ。軽いものも持てない。
その次は首。首は補強の魔法を解除した時に勢いで骨が折れる可能性があるので、細心の注意を払って魔法を解除する。解除すると首にかかる負荷が。今の僕は首の座っていない幼児と変わらない。死亡確率が高くなっている。首も急いで筋肉をつけなければならない。
そして、胴体や身体の関節、足に発動している補助の魔法を順に解除して、それぞれ慣らしてみた。胴体の筋肉は、首に補助の魔法を発動させている状態であれば、苦もなく動かせるようになった。我ながらかなりの勢いで失ったものを取り戻していると自負している。この調子で失った他のものも取り返していきたいものだが……。まあ、すぐには無理だろう。必要なものは時間だ。
『そろそろ足を進めない?』
ルカも休憩時間を取れたようだ。元気に呼び掛けてきた。但し、念話である。これも僕が取り戻したいものの一つ。目標が大変だな。急いで筋力を回復させないと。
「うん、そうだね。東へまた進もう。」
僕は全身に余すところなく、補助の魔法を発動する。発動している事を確認すると、すぐに荷物を持って立ち上がる。僕達が歩き始めた時にふとルカが思いついたように尋ねてきた。
『回復系の魔法を使わないんですか』、と。
確かにルカの言う通りだった。その選択肢は確かに存在する。……だが、そう、物事が上手く進むわけが無い。僕はあらゆる回復関係の魔法を発動させた。そのどれも効果を示さなかったが。もしかすれば、ルカに対して悪いと思っている節から……まあ、うん。詳しくは言うまい。察してほしい。
「まあ、色々あるんだよ。」
そう言って取り敢えずは濁しておいた。ルカは胡散臭いとでも言いたそうな妙な表情をしていたが、見なかったことにする。下手に構うと、こちらに危険が及んでしまう。これが世間の生き方なのだ。世間って怖い。
ふと、口笛を吹きたくなったアデルは誘われるままに口笛を吹いた。別に何かの曲に合わせた、という訳では無い。葉笛に適した葉があればそれを吹いたが、生憎にも適した葉が無かったために口笛を吹いてみた。大した出来でもないが、いつの間にかそれはリズムを刻んでいた。ルカも聞き入っている。
昔どこで聴いた曲。誰かがいつも歌っていた曲。微かな記憶はあるが、それが誰なのか、その曲が何の曲なのかは全く覚えていない。そう言えば、この前の夢にも見た。六年経ってからだ。六年前はこんな夢を見なかった。僕の何かが変化したのかもしれない。
そのまま口笛を吹いていると、いつからかルカが歌っていた。これも口笛で吹いている曲と同じ曲だ。但し、ルカは声が出せないので、僕の脳内で披露している。ルカは歌が上手なようだ。
そうして、僕らはゆっくりと確実に王都へ近付いていくのであった。




