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始祖の竜神と平凡の僕。  作者: 秋色空
四章:翠竜討伐編
34/66

33.旅は再び

本日二回目です。

ギリギリ12時……。

六年間という長い月日を暮らした家は、とある田舎町の外れにある小屋だった。お金には困らないかったために家を見つけてからはあまり外出していなかった。アデルは寝ているために動かすことが出来ず、かと言って空中に浮かべつつ外出するのも出来ない。だから外から出ることは出来なかった。


「六年か……。本当に長い月日を寝て過ごしたんだな。」


アデルは小屋を出て、近くの街道に向かって歩いていた。どこへ向かうにも街道を通るのが最も良いのだ。旅の基本は街道を見つける事だ。経験の浅い旅人にとって、街道はとても重宝する存在となる。と言って、経験がある旅人が使わない、という訳でも無い。


『うん……長いようで短かった。』


長い月日を生きてきたルカにとって、六年間などはなんということも無いのだろう。だけど、この六年間がただの月日の経過であったようには見えない。きっと沢山のことがあったのだろう。追及しようとは思わないが、念頭には置いておくべきだ。


それから僕とルカは今後について話し合った。まず翠竜が六年間に何をしていたのか。これはルカがあまり情報を得ていない為に、沢山の情報は得られなかったが、死傷者が多すぎるという事は分かった。国も動くほどの危険事項なのだろう。どうにかして、翠竜の情報をどこかで手に入れたい。僕は意識を失ったせいで何も知らない。


「当分は街道を進む事になる。ルカ……ここの地名がどこか分かる。」


旅人としての経験を活かして、六年間で多少の地理は変化していようとも地名で大体の現在地が特定出来るはずだ。


『……ここは〈ジュカの街〉だよ。』


……〈ジュカの街〉か。この街はこの〈エストワ王国〉の辺境にある田舎町である。という事は中心地に向かって進む必要がある。月日は数週間ほどだ。


「僕達は王都に行く。」


『分かった。目的は……?』


「情報集めだ。出来れば、王とも接触したい。」


アデルは旅人としては有り得ない目的を立てた。一端の旅人が、王と対面できることすら難しいこの世で、だ。だが、ルカは疑わなかった。アデルなら出来るのだろう、と。


『街道に着いたよ。』


そう話しているうちに街道に着いていた。僕は【探索】の魔法を使い、王都への方向を調べる。ここから東方向だ。皮肉にも僕達がミシェルの親を探して進んだ方向と同じ、か。途中にはミシェルの片親がいた都市である〈アルグランテ〉も経由する。


深くは考えないことにしよう。希望を抱き過ぎると見返りが小さくなってしまう。それが現実だ。程々の希望を抱くのが丁度良い。


王に会う、という常識知らずな目的を打ち立てたアデルが言えることでも無いが、本人は気付いていなようだった。王には会えると考えているらしい。それがアデルの才能なのかもしれないが。


「こっちに向かって進もう。」


僕は東を指さして言った。運の良いことに街道は東西を繋ぐ街道であった。この街道から、大街道に出る必要があるが、それは後々考えるとしよう。


「あと一つ……僕には目的があるんだ。」


ルカは首を傾げた。その目的をすぐには考えつかなかったからだ。しかし、少しばかり熟考して気付いた。アデルのもう一つの目的を。


『まさか……。』


「そのまさかのまさかだよ。僕はルカの声を取り戻す。」


永遠の時を過ごす竜神のルカ。これからの長き人生を声無しで過ごさせるのか。それはとても苦しい。この六年間ですら、ルカには迷惑を掛けたのだ。僕が出来ることをしてあげたい。僕なりの方法で。それがこれだ。ルカは竜魔法を使えないために喉が治っていないが、他の魔法を使えば治せる可能性が無きにしも非ず、だ。それを王都で見つけ出したい。


『……アデル。ありがとう。』


ルカは短く、そう感謝した。短いがその言葉には沢山の思いが詰まっている。ルカからのアデルへの思いが。ルカからのアデルへの想いが。その真意は読み取れなくとも、アデルの目的は変わらない。絶対に。


「じゃあ、行こうか。」


『うん!』


東へと僕達は足を進めた。これから数週間。まずは〈アルグランテ〉を目指して。そこからさらに進む。最後には王都だ。僕達の目的である、翠竜討伐。六年間の恨みを晴らす。


その時。決意を遮るように〈魔物探査(モンスターサーチ)〉は警告を発する。


「……空気読めないね。あぁ、こいつか。」


この魔道具が示すのは、十体の魔物。身体が大きく、敏捷性が高い。見つけたらすぐに逃げるのが旅の常識であるこの魔物。暗殺熊(アサシングリズリー)。それが十体だ。


だが、こんな魔物。ルカやミシェルが戦ったであろう〈魔物騒動(モンスターフェスタ)〉の魔物達に比べれば、どうということも無い。


僕は短剣を抜いた。〈アイテムボックス〉で眠っていたこれは、六年前と変わらない輝きを放つ。これぐらい魔法を使わずとも勝てる。そうでなければ……翠竜などに勝てない。


マントの魔道具〈琥竜ノ鎧〉を風に靡かせ、僕は駆けた。そして暗殺熊(アサシングリズリー)を越える。同時に振り返る。


暗殺熊(アサシングリズリー)は、アデルの高速の動きを捉えたが、振り返る時間が無かった。正確にはアデルが振り返る時間を与えなかった。高速の一閃。一薙で全ての首を狩る。アデルが使う短剣術【首狩り】である。


全ての首は地面に転がる前に炭へと姿を変えた。この短剣は、付与がされた魔道具である。名は〈炭ノ短剣(チャーコルダガー)〉。全ての敵を一掃すべく、新たに作成した魔道具だ。


アデルはそれを〈アイテムボックス〉に仕舞うと、言い放った。


僕達(・・)の道の邪魔をするな。」

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