31.それぞれの道
第三章:水の女神の遺跡編はこれにて終了です。
この投稿は本日二回目です。
ミシェルは切り出さなくてはならないと分かってはいた。それが辛い道であるということも。
『ミシェル……分かってるよ。』
ルカはそのミシェルの心も読んでいた。ミシェルは勇気を出して提案することにした。それは夕食の時のこと。アデルがいない事で話も弾まずに一言か二言話すと話が途切れて、話すことも無くなってしまった時。
「ルカさん……私、アデルさんとルカさんと別れたいと思います。」
『うん、分かってた……。』
ルカも気付いていたのだ。目覚めないアデルと話す事がままならなくなったルカ。言ってしまえば、足でまといなのだ。ミシェルは水の女神の祝福を授かった事で、アデルやルカに負けず劣らずの魔法が使えるようになった。正直、一人だけでも旅ができるようになる力の持ち主になったのだ。
「すみません……。」
『謝らなくても大丈夫だよ。悪いのは私とアデル。自分が選んだ選択に間違いは無い。それをどう活かすか。それをどう捉えるかが人生なんだよ。ミシェルはミシェルの選択を尊重したら良いんだよ。』
ルカは静かに語った。その声はミシェルの脳内にしか聞こえないけれど。自然と泉の風景と穏やかなルカの顔は一枚の風景画のようにも見えた。それを見たミシェルは次第に悲しくなってくる。
『そんな辛い顔をする必要も無い。元気を出せば良い。人生は一度切り。したい事を沢山すれば良い。そうすればいつかは再び会える時が来るかもしれない。』
「……そうですね。泣くなんて二人に失礼です。私だけ水の女神の祝福を貰ったのに。」
『自分を貶す必要も無いけど……。』
「良いんです。自分にはこれぐらいが丁度良いんです。……二人との旅は楽しかったですよ。また会いましょう。」
『もう行くの?』
「はい、もう行きます。私にはアデルさんに貰ったこのマントとルカさんに貰ったこの指輪と女神様に貰ったこの祝福で旅をすることにします。」
ミシェルは苦笑いをした。少し自信が無いのだろう。だが、それを経験するのも旅だ。ルカは微笑んだ。無言でミシェルを見送る。ミシェルも後ろを振り返ることは無かった。
そうして再びアデルとルカの二人になった。実際に二人といた期間はミシェルがいた三人の期間よりも短い。あまり思い出は無い。でもアデルが起きれば、そこからは色んな旅ができるだろう。だから……アデルが起きるまで。私はいつまでもそばにいるからね。
ルカは泉の側に立てていたテントで寝た。そして朝になり起きる。しかしアデルが起きることは無い。少し苦しげな顔を浮かべつつも朝食の準備をする。特にこだわっている訳でもない普通の食事だ。肉に山菜。それをルカは一人で食べた。アデルがいないだけで……ミシェルがいないだけでこんなに寂しいものなのか。
今なら大丈夫だろうか。アデルは寝ているし、ミシェルは別の道を進んだ。誰も見る人はいないだろう。ルカは気を緩めた。同時に一気に色々な思いが押し寄せる。苦しみ、疲れ、悲しみ、哀しみ、喜び、怒り……。そして涙が。泉は、森は、ルカを見守っていた。
ここからはアデルと二人の物語。二人だけの物語を綴るのだ。それがいつまでかは分からない。それまでは静かに暮らそう。
次回からは一気に話が変化します。
登場人物が増え、様々な事が絡んでくる……かもしれません。お楽しみに。




