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始祖の竜神と平凡の僕。  作者: 秋色空
三章:遺跡編
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29.魔物は吼える

第三章も終わりが近付いてきました。

もう少し続きそうです。


※本日二回目投稿です。

 ルカの攻撃が炸裂し、魔物達の一角が崩れ落ちる。それでも数万体の魔物達はすぐにその隙間を埋める。魔物達には協力しようとする心など無い。ただ、攻撃する相手が同じであるだけだ。それ以外のなにものでもないのだ。だからこそ攻撃には容赦なく、手強い相手となる。


 現在、発動している【防御】の残り枚数は五十七枚……五十六枚。数が多い魔物達は質で勝るルカの魔法に互角以上でいた。このままではルカ、ミシェル、アデルが死ぬのは時間の問題だろう。違う脱出口を見つける必要がある。しかし、そんなことをするだけの時間が無いのが現状だ。


 ルカは魔法を発動し続けている。呼吸をして、詠唱をして、呼吸をして、詠唱をして……。ミシェルは魔力が回復すると、すぐに魔法を発動させる、と少し魔力が回復する時間を待つ必要があるが、魔力量の限界ギリギリまで魔法を発動し続けている。ミシェルの方がよっぽど大変だろう。だが、魔力量にはある法則が存在する。


 魔力量を限界まで使うと、次に回復した時には少し魔力量が増えているのだ。魔力量が多い者は大抵が努力家だ。毎回、魔力量が無くなる寸前まで魔法を発動し、回復をする。その繰り返し。これを懸命に繰り返したからこそ、魔力量が多くなるのだ。元々、多い者もいるが、その魔力量を越すこともざらにある。


 ミシェルは回復を待ち、魔法を発動して、魔力量が尽きるといった過程を何十回も繰り返しているために本人は気付いていないだろうが、魔力量が数倍多くなっていた。魔力を回復した時に驚くほどの増え方をしている。ミシェルが一度に発動する【火矢】の数も少しずつだが増えているのだ。


 ルカは未だに魔力量は残っているが、ルカが魔力が無くなってしまえば、【防御】の魔法を重複する者がいなくなる。今は魔物達の攻撃の手が緩んだ時に【防御】をさらに重ねがけしているが、それでやっと保っている。ルカの魔力が無くなれば、その時には瞬く間に【防御】の魔法が打ち破られるだろう。


「ふっ!」


 ミシェルが既に何回目か分からない【火矢】を飛ばす。命中率はとても高くなっている。何百本かに一度しか、はずれていない。これのお陰でルカの負担はとても軽くなっていた。


「ミシェル、広範囲の魔法を放つから衝撃に備えて。」


「分かりました。」


「……ふぅ。【焼き尽くせ、地獄の業火で、焼失せよ】【インフェルノ】!」


 声は少し枯れていた。それ程までに喉を酷使している。魔法を発動し続けた代償だが、命に比べればどうと言うことは無い。この魔法はアデルがたまに使っていた至高魔法が一つ【業火】の魔法。広範囲に発動できる。これで数千体は葬れたようだ。


 この【業火】をルカは三回連続で使った。合計で一万体程がいなくなっていた。その時、少しだけ地面が見えた。これだけでやっと地面が見えるのだ。魔力量が圧倒的に足りない。


 人によっては魔物から魔力を吸収して、己のものにするという技法を使う者がいる。だが、それを生半可な実力で使うと、最悪死ぬ。魔物の魔力は純粋な魔力では無いのだ。そのまま吸収すれば、体に順応せずに魔力が暴走し、身体が破裂するなどして死ぬ。魔物から吸収する際に魔力の濾過が必要となるのだ。それは複雑で高難易度の魔法であるために集中力を必要とする。今、使えればとても有り難いのだが、流石に集中出来るほどの時間が無いのだ。魔力量を惜しむことも出来ない。


「くっ……。」


 ルカは虚脱感に襲われて膝をついた。これは魔物の攻撃ではない。魔法の使い過ぎだ。人間であれば、ここまで魔法を何度も使えないためにこのような虚脱感に襲われるようなことは無い。しかし、別の種族などでは魔法をさらに使えるために、このような魔法使い過ぎによる虚脱感に襲われる。これは妖精(エルフ)種に多く見られる症状だ。


「ルカさん!」


 ミシェルは【火矢】を発動しつつ、横目でルカを見た。ミシェルはルカの魔力量を回復させてあげたかったが、普段はアデルが魔力回復のポーションを即座に作ってくれるために苦労することは無いのだ。だからこそミシェルは魔力を回復する魔法をアデルに聞かなかった。アデルも教えなかった。それがとても悔やまれる。


 ルカが発動する【防御】の枚数が減り、一枚、また一枚と次々に【防御】が破られている。その速度は遅いものの確実に死までのタイムリミットは近付いている。


「【突き刺せ】【ファイアアロー】ッ!」


 ミシェルはルカの心配をしつつ、必死に魔物の数を減らしていた。しっかりと確認した訳では無いが、魔物は増えていないような気がするのだ。これであれば勝てるかもしれない。淡い希望を抱きつつ、魔物の命を刈っていく。


「ミシェル……。」


 ルカの声はか細い。これが元々であれば、幸いだっただろう。しかしそうでは無い。魔法の詠唱のし過ぎで喉が枯れているのだ。さらにその状態でも魔法を発動し続けた。既に声が出るほどの状態を保てていないのが現状なのだ。下手すれば声が出せなくなるだろう。


「ルカさんは喋らないで下さいっ!喋れなくなりますよ!」


「……!」


 ルカは懸命に頷く。そして魔力を少しでも早く回復する為に瞑想をした。【防御】の破られる速度は早くなるが、数枚でも残っていれば、即座に貼り直すことは出来る。今は魔力回復だ。ルカはそうして瞑想の体制に入った。

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