27.聖竜、翠竜ジェイルガルド
今後、急展開になる可能性があります。
※あくまでも可能性です。
毎度ですが、遅れてすみません。
二人の前には一体の竜がいる。竜神であるルカに次ぐ竜種の最強位、聖竜。聖竜は何体かいるが、その例がアデルの来ている魔道具のマント〈琥竜ノ鎧〉。これは聖竜である琥竜の鱗から出来た魔道具だ。だが、目の前にいるのは琥竜では無い。
姿を見るにまるで翡翠のような輝きを持つ竜。────翠竜だ。
翠竜は翡翠石の眼で二人を見る。二人も翠竜を見ていた。その間には何かが起こる訳では無い。ただ、互いを見ていた。傍から見れば、何をしているのか不思議だろう。
しかし、翠竜にしてもルカとミシェルにしても、相手が味方なのか敵なのか、どれほど強いのかが分からない間は迂闊な行動ができない。様子見である。
元来、竜種とは短気な生物。竜種にしては翠竜は長く耐えたと言えるだろう。数十分の間、互いに見つめあっていたのだ。所詮、竜種であるのだが。翠竜はやがて耐えられなくなったのだろう。威嚇のような声を上げた。これで攻撃するような素振りを見せれば、すぐに翠竜は飛び掛ってくるだろう。
ルカとミシェルは動かなかった。下手に動くよりも動かない方が敵対されにくいと考えたからだ。ルカは竜言語で話し掛けようかとも思ったが、それも相手を逆撫でする可能性があったので控えておいた。
それは暫く続いた。翠竜は威嚇して、ミシェルとルカは動かない。それの繰り返しだ。だが、その連鎖は途中で断ち切られたのだ。翠竜が見てもいなかったアデルが一瞬動いたからである。ほんの微かだ。気にする程でもないのだ。それでも翠竜は反応した。
「グワゥァァァアアア!!!!!!」
再び声が響き渡る。壁で反射し、声が拡大される。翠竜は見たのだ。他でもない、アデルを。そして魔力の質から己の魔方陣に魔力を込めたのが、アデルであると気付いたのだ。だからこそ、聖竜である翠竜が封印されるほどの魔方陣を発動させた魔力の持ち主を危険視して排除しようとした。
翠竜が奏でるは竜種が使う竜魔法。対して、ルカも同じ竜魔法で対抗する。勿論、翠竜が竜神であるルカの竜魔法ひ勝てる筈が無い。徐々に翠竜が傷付く。その度に翠竜は苦悶な声を上げる。ミシェルは少しばかり罪悪感が芽生えたが、アデルが殺されるのを見逃すほど優しくは無い。ルカの攻撃の目くらましになれば、と思って遠距離射撃を行う。
ミシェルの魔法はアデルに教わって間もない。通常の亜人に比べては、魔力量が断然多いのだが、それでも竜種の中でも第二位である、聖竜には大したダメージにもならない。目くらましにもならず、ミシェルの努力は無駄骨となる。
「ミシェル、下がって!」
翠竜がブレス体制に入ったのを見て、ルカはミシェルに指示を出す。的確な指示をするのに慣れていないため、少しばかり混乱する。だが、そこは竜神。賢なる者として何事にも臨機応変に対応出来ていた。
ルカとミシェルが下がった直後に翠竜がブレス攻撃をした。二人がいた辺りは目で見て分かるほどに地面が抉れている。正確には大穴が出来ている。この下には何も無いので、穴というには難しいのだが、穴が空いている。これはどこに繋がっているのかは誰も知らない。まさに神のみぞ知る、という事だ。
ひたすらに翠竜は最も危険と認定したアデルを狙う。だが、それを阻むべく攻撃をしているルカとミシェルが邪魔である。二人の包囲を解くことが出来ずに時間だけが過ぎてゆく。ではそんな時。どうすれば沢山の魔力量を持った危険分子に追われない状況を作り出すことが出来るだろうか。
一つは勿論その危険分子を殺す事だろう。そうすれば簡単に自分を狙う存在はいなくなる。だが……もう一つあるとしたら。
それは────逃げる、だ。この考えに行き着いた翠竜は突如、頭上を見上げた。その奇怪な行動にルカとミシェルは攻撃の手を緩める。それと同時に竜魔法によって、翠竜は上へ上へと進み始めた。竜魔法で内部構造を変化させ、空いた大穴を潜り抜けて上へ上がっていく。この部屋とその真上はこの世界の魔法でも通用するようだ。
ルカは急いで追い討ちを掛け始める。ミシェルも遠距離攻撃を再開しようとしたが、こちらは距離が離れすぎた為に既に魔法が届く範囲外になってしまった。魔力も尽きかけているためにもう魔法自体が発動できないだろう。流石にアデルだけでなく、ミシェルも倒れてしまってはルカが大変だろう、と考えたのかもしれない。
ミシェルはアデルの元により、アデルを見ていた。静かに寝息を立てて寝ている。一見するとただ眠っているようにも見えるが、実際は異質存在からの急激な魔力の吸収によって臨時発動した、〈能力封印プログラム〉。
第一極限が解放されたが、この体力魔力放出を原因として、再封印されてしまった。急な封印の為にしっかりとした手順を踏んでいないため、昏睡状態になっている。
昏睡状態からいつ回復するかは分からないが、すぐには起きないだろう。それまではどうにかして看病しなくてはならない。ミシェルはそんなことを考えながら、アデルを見守っている。その目に含まれているのは、一つの感情だけではないようだ。




