26.復活と封印
大分、遅れました。すみません。
今後もこのような不定期投稿です。
僕らは遂に迷宮を踏破した。そして今、立ちはだかるのは一つの扉。明らかに魔法で仕掛けが施されている扉である。その魔法の形式がこの世界の魔法でないために、何の魔法であるかは分からない。最悪死ぬだろう。最も良いと、ただの開閉の魔法である。但し、開く為には触れなければならない。
「これ、魔法扉だけどどうする……?」
「普通に触ろう!」
何故かルカが意気揚々と言う。そんな事を言われましても、被害を受けるのは僕なんですが。
「まあ、良いや……。二人とも下がってて。」
二人が頷いて少しばかり下がる。それを確認すると、僕は再度扉を向いた。押して開くような扉では無い。ただの開閉の魔法であることを祈るばかりだ。僕は扉に触れる。
「うわぁっ!」
「どうしましたか!」
慌ててミシェルが駆け寄ってきた。僕はそれを扉に触れていない左腕で防ぐ。確かにこの扉は魔法が仕掛けられていた。それも開閉の魔法では無かった。
「……魔力を吸収されている。恐らくある程度の魔力を満たさないと開かない。」
扉は僕の魔力を惜しげも無く次々と吸収していく。普通の人間よりも膨大である初代勇者の魔力も流石に吸収され続ければ、いつかは終わりが見える。まだ終わりは見えていないが。
「アデル、大丈夫……?」
「大丈夫だよ。まだまだ魔力は残っているよ。危うくなったら呼ぶからその時は頼む。」
ルカは渋々といった面持ちで頷いた。ミシェルは抗議しなかった。同じ返しをされると気付いていたのだろう。僕の予想によれば、現在の魔力量ではルカに劣っている。流石に神格化しているルカに勝てる程の魔力を初代勇者であれ、第一極限で取り戻せるはずが無い。
「まだか……?」
少しだけだが魔力が底を尽きそうな予感がした。ただの予感だとは思うが、どうしたものか。この扉も魔力を吸収できる量は限られているだろう。それを待つのもありだとは思う。だが、手を離せば、再びこれだけの魔力を注ぐ必要が出てくる。それだけは勘弁願いたい。もう魔力がそこまでは残っていない。
「……あと少し。」
みるみるうちに扉に吸収される魔力量が減っていった。あとほんの僅か────そして、終わった。扉は開き始めたのだ。僕達を迎えようとしているのか。この先が女神の残した財産。〈女神の祝福者〉が入ることの出来るこの空間で、僕は遂に手に入れられるのだ。高揚感は流石に抑えられなかった。
中に入ると広い空間であるのは分かるが、同時にとても暗いため、全く部屋の全貌が分からない。僕達はそれぞれ違う方向を向いて、部屋の中を見回していた。しかし何も無い。
「本当にここに女神の残した財宝はありますか?」
「蒼き竜が言っていたことが本当ならね。」
僕達は念入りに探すことにした。待っていても何かが起こることはきっと無いはずだ。まあ、努力しよう。
部屋を三等分して、それぞれ三人が何かの仕掛けが無いか探していく。最悪、女神の祝福者のみしか反応しない仕掛けがある可能性もあるので、それを考えて仕上げは僕がする事になった。
だが、探すのはそれほど手間取ることでも無かった。
「ありました!」
ミシェルが何かを発見したらしい。僕とルカはそこに急いで駆け寄る。期待半分、不安半分と言った所か。流石に不安は拭えない。その焦燥感からか僕はすぐにその仕掛けに触れてしまった。
「……うわぁ!」
突如、僕を包むように鎖が出現した。魔法の鎖だ。何を封印しようとしているのだろうか。そう考える時間すら無かった。鎖からは魔力のみならず、僕の記憶や知識までが吸い取られていくような気がした。そして、その鎖は消え去り、吸収された魔力は球状に変化した。
「……アデル!!」
ルカは鎖から解放されたアデルに駆け寄った。丁度、アデルが倒れようとした時にルカが来たために地面に身体を強打することは無かった。
「アデル!アデル!」
ルカは必死にアデルに呼び掛ける。しかし反応を返す所か瞬き一つしない。静かに眠ったままだ。呼吸をしているから死んではいない。言うなれば────植物状態。
「……ルカさん!」
ミシェルはアデルの姿に焦りつつもしっかりとその魔力の行き先を見ていた。その魔力の球はフワフワと漂って、ある場所で止まった。次の瞬間、地面が揺れて何かが上がってきた。……台座だろうか。台座が完全に出現すると、魔力の球はそれに溶けて消えてなくなった。恐らくあれに融合したのだろう。
何が起こるのか。何故か二人は絶対に見なくてはならないような気がした。アデルは倒れている。代わりになるのは自分達しかいないのだと。その代わりをしなくてはならない。その使命感から来たものなのかもしれない。
暫く何も起こらなかったが、二人が終わったのかと思い始めた頃。次が起こった。台座を中心とした巨大な魔方陣が展開したのだ。
「ミシェル!魔方陣から離れて!」
ルカはこの魔方陣に近付いてはならないと直感的に悟り、ミシェルに警告した。ミシェルはすぐに部屋の隅へと走り出す。ルカもアデルを抱えようとしたが、それでは遅くなるので、アデルを【浮遊】の魔法で浮かべ、その後ろを走っていった。
二人が魔方陣から出た直後、魔方陣が燃え上がった。さらに暴風が起こり、竜巻が発生した。それも複数。逃げなければ恐らく巻き込まれて死んでいたであろう規模だ。
竜巻は互いに衝突すると、合体しさらに大きな竜巻となる。それを幾度か繰り返して、魔方陣全体を覆うような竜巻になった。まるで何かを隠そうとしているかのように。ルカは巨大な魔力を感知した。
「この魔力は……竜種。それも上位の竜。」
「上位の竜という事は……。」
「多分、竜神に次ぐ聖なる竜。聖竜が一体だと思う。」
「聖竜……。」
ミシェルが呟くとそれに呼応したかのように、声が轟いた。それは竜の鳴き声。相手を威嚇する時などに使う、その声。明らかな異質の存在が目の前にはいた。




