25.暗闇の中
遅れました
辺りは暗い。光が一切入ってこない。ここは閉じられた空間。とある一人の少女によって封じられてしまった。少女などに負けるはずがないと慢心していたから。完全な失態だ。そして既に数千年の月日をここで過ごしている。
目を開くことすら出来ないこの状況でどうやって生きているのか。どうして食べずにも生きていけるのか。呼吸もしていないが大丈夫なのか。疑問に疑問が重なるが、全ては「魔法だから。」の一言で片付くのがこの世の不思議な所だ。実際そうなのだが。
古くは世界に名を轟かせたものだった。それが今となってはこの有様。かつての栄光も今の時代には通用しないだろう。もしかすれば、あの時の少女を超える存在すらいるのかもしれない。まさに井の中の蛙であるようだ。
長き時を過ごしていれば、時間は苦痛に感じない。時間は流れるものであり、終わることの無いものだからだ。それを苦痛と感じていては生きることもままならない。死にたくないからと封印を選んだのにみすみす死ぬつもりだけはない。体内の魔力だけは常に循環し、封印解除の瞬間を今か今かと待ち続けている。
そして気づいた。何か大きな魔力が近付いていることに。一つの魔力は自分の魔力と似ている。同種なのだろう。もう一つはとてま大きな魔力。流石に自分に似ている魔力の持ち主には五分五分と言ったところだろうが、それでも世界に名を轟かせるぐらいの強さを誇るのではないだろうか。
遂に解放の瞬間と動けない身体に代わって、心の中で歓喜した。そして叫んだ。しかしそれは一切、外には出ていない。ただ眠っているだけにも見えるだろう。とある勇者が言うにはこれは仮死状態というらしい。身体を腐食から守る為の冷気がこの部屋には満ちている。正直言えば寒い。まあそれを感じないから、その状態を認識出来ているだけだが。
さらに難しい話をしようというつもりは無い。結局は自分がいるこの場所に誰かが来ているという事だ。三人来ているようだが……。不思議な魔力を有している。竜に似た偉大な魔力や底知れない魔力。幾重もの魔力が重なっているようだ。その一つの魔力は融合したらしい。
自分の感知能力は同種族の中でもトップレベルであると自負している。神格化こそ出来なかったが、神格化してもおかしくないと自分では考えていた。実際は出来なかったのだが。この世界で神格化している者は非常に少ない。その一人が竜神だ。自分としては竜神を信仰対象として見ているつもりはない。あくまでも神格化を成し遂げたものとして、ライバルのような見方をしている。
当の本人は反応すらしてくれなかったのだが。何に対しても興味を惹かれなかった。自分が戦いたいと言っても、聞き流されただけだった。まずまず聖域に入ることすら出来なかったのだ。あそこは竜種でさえ入れない空間になっている。世界最強の種族が悲しいものだ。
こう考えていると無性に竜に似ている魔力を持つ者に恨みが出てきた。関係無いが。恐らく竜種とは関係も無いのだろう。竜魔法に似た魔法でも使うのだろう。だから竜に似た魔力を持つと言ったところか。だがそれにしてはあまりにも魔力量が多いのだが、まあそこは置いておこう。
次に溢れてくるのはその者達と会いたいという欲望である。長き時を過ごした身としては既に苦痛も何も感じないのだが、それでも稀に外が恋しくなる時がある。肌に当たる風や漂う香り、眩しい日差しや青く広大な海や空。全てが恋しくなるのだ。
しかし、ここは何も感じない。風もなければ、香りも無い。空も無いし、海も無い。ましてや色彩すら自分には見えないのだ。それが少ない辛さの一つだろう。
それでも誰かがこの扉を開けて、自分を解放してくれると信じている。その時には絶対に少女を見つけ出す。そして────。
その望みを叶える為にも今、近付いている三人には是非とも到着してもらいたい。ここからは何も出来ないが、応援だけでもするとしよう。何かを話すことも出来ないが、祈ることならできるだろう。目には見えないが、形には残らないが、想いは伝わるのでは無いだろうか。それで十分だ。
外からの声は中に届かない。だからだろう。三人の魔力がとても近くまで来ている事は分かっていたのだが、その三人が既に自分が封印されている部屋の前に来ている事は分かっていなかった。
誰かが外から扉を叩こうとも扉はビクともしないどころか音も響かない。この扉も魔法が掛かっている扉だ。この迷宮には自分が見たことの無い魔法が沢山広がっている。これを誰が作ったのかは自分を含めて知っている者はいないのではないだろうか。
但し、それは開けていなければ。の話だ。開けてしまえば音も光も差し込むのである。それと同時に自分の封印の解除が始まる。それで晴れて自由の身だ。自分を封印してくれた?少女探しに精を出すとしよう。次こそあれを果たすために、今から来たものには絶対着いてもらいたいのだ。




