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始祖の竜神と平凡の僕。  作者: 秋色空
序章 プロローグ
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2.竜神による生き地獄

「【変革せよ】、【ワールドカスタマイズ】。」


 竜神と名乗る女性は〈起源の魔法(オリジンマジック)〉である竜魔法を放つ。元来、太古の世界を支配していた竜族は竜魔法によって、万物に劣ることの無い力を所有していた。


 その神ともなれば力は偉大なものである。竜神が使う竜魔法は他の竜族が使うものとは全く違う、まさしく世界を作り替える力があるのだ。


 今、この女性が使った魔法は竜魔法が一つ【変革】だ。魔物騒動(モンスターフェスタ)を起こしていた各魔物がここに存在していないものとして世界の理を修正したのだ。これぞ竜神のなせる技である。


「……気絶してる。」


 全ての魔物を文字通り消した後にようやく青年が気絶している事に気付く。先程の落ち着きようは何だったのか、焦ったように竜魔法が一つ【再生】を発動した。


「【再生せよ】、【レストレーション】。」


 存在する全ての回復に関する魔法の中で最も最大の癒しを与えるこの魔法。傷や状態異常を治すだけでなく、呪い、痛み、不安。それに加えて眠気なども。万能回復魔法なのだ。


 すぐに青年は目覚めた。それを見て、女性はようやく安堵する。


「ここは…………あぁ……そういう事か。」


 青年は全てを悟った。この竜神と名乗る女性は自分を追い掛けてここまで来たのだと。そして魔物に囲まれて気絶しているのを見て助けたのだと。面目を潰さない為にも追い掛けることや攻撃することをギリギリまで耐えていたのだと。いや既に面目丸潰れなのだが。


「すまない……」


「大丈夫。」


 女性の返事は素っ気ないものだった。これぐらいはお節介の範疇のようだ。礼など有難迷惑だと言わんばかりに頬を膨らましている。姿は人間そっくりだ。とても竜神だとは思えない。


「あんたはホントに竜神なのか?」


「うん。正真正銘の竜神。」


 そう言うと少し胸を張る。程々の胸が強調されたが生憎と青年に胸好きな趣味は無かった。変わらずに青年は話を続ける。


「あんたは何のために僕を探しに来たんだ?」


 今まではすらすらと答えていた竜神の女性は答えに詰まった。『運命』などという回答は辞めてほしいものだが……。


「ッ………………ひ、必然?」


「はぁ……。」


 予想の斜め上な回答が来たよ。まさか『必然』だとは。運命すらも超越してるじゃないか。自分から会いに来ておいてそれを『必然』と言ってのけるとはよほどの自信家……なのか?


「それで?」


「?」


 可愛らしく首を傾げる。普段は無口で可愛い女性だとは青年も思っている。だがその発言についていけないだけなのだ。突拍子もない発言は辞めてほしい。


「それであんたは僕の名前を知ってるの?」


 それだ。『必然』というからには名前を知っていて当然の筈だ。まさか……それはないよな?それだけは勘弁だぞ。


「し、知らない。」


「おいっ!!!!……あぁ、すまん。」


 思わず大きな声を出して、女性を驚かせてしまった。自分よ紳士であれ。スーハースーハー……よし。気を取り直して。


「ま、まあ取り敢えずあんたは僕に会いに来たんだよね。」


 質問に女性は慌てて頷く。脅威的な可愛さである。人を萌え死にさせそうだ……とか街の冒険者がよく言ってた気がする。……断じて僕は言っていない。


「じゃあ、僕に会って何をしたいの?」


「………………旅をしたい。」


「うん。もう一度頼むよ。」


 何故か左耳から右耳に言葉が流れ出てしまったようだ。まさか『旅』だなんて言ってないよね?恐る恐る女性を見る。女性も興味津々とでも言うように目を輝かせてこちらを見つめていた。


「旅。旅がしたいんですっ!」


「はぁぁぁぁぁああああ!!!!」


 ここに一つ宣言をしておく。────僕は旅が嫌いだ。とある出来事があってからは完全に旅を毛嫌いするようになってしまった。旅と聞くだけで身体中に蕁麻疹が出るのだ。数ヶ月に一回、薬を処方してもらっているが、その言葉を聞いた時は塗った甲斐無く、蕁麻疹が出てしまう。僕の中では『旅』という言葉は『竜神』と自分を呼称するのと同じレベルの禁句である。


「ど、どうしてた……うっ……遠出をしたいんだい?」


「あなたとならこの世界を救えるから旅をしたいんです。」


 何故この女性は『旅』を強調するんだ。辞めてくれ……。腕は……。あっ、既に蕁麻疹だらけだ。ヘ、ヘルプミー……。


「お願いします!世界の危機が掛かっているんです!」


「せ、世界の危機……?」


 瀕死寸前の状態で青年は耐え続けた。青年は生き地獄という言葉を今日初めて実感したのであった。これが竜神の実力……恐るべし竜神……。当の本人……いや当の本竜は自己評価がグングンと減少しているとは知る筈も無かった。

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