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始祖の竜神と平凡の僕。  作者: 秋色空
三章:遺跡編
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18.水の女神の遺跡 IV

本日二回目投稿です。

明日からは毎日投稿ではなくなると思います。

 頭上を飛び回る蒼き竜。それは酸のブレスを吐き、毒々しい棘を生やしている。仕切りにこちらの行動を妨害する。魔法を発動しようとした動きを見ているのか、もしくは魔力の動きを見ているのだろう。魔法を発動しようとする瞬間に限って、酸のブレスを放つのだ。こちらの攻撃が当たらないどころか、攻撃すらさせない始末。


「……くっ。」


 自分はせっかちではないと思っているけど、これだけ動きを妨げられると苛立ちが出てくる。竜より一歩前に行きたい。というよりは竜と五分五分の勝負をする所から始めなくてはいけない。


 小一時間。それが僕が竜に翻弄され続けた時間だ。長い。魔法は殆ど発動させていない為に魔力はあまり消費していないが、実際に竜を倒すのならば、魔力の量には自信が無い。何か布石が置けないものか。


 取り敢えず第一の布石。無詠唱で【高速詠唱】を発動させる。やはり無詠唱では僕の動きは防げないようだ。遅れて酸のブレスが降り掛かる。それを避ける。


 竜も魔法が発動したのが分かったのだろう。次の手を打たれないように酸のブレスを連続して放ってきた。最後のブレスだけを【防御】の魔法で防ぐ。結界が半分破れたが、どうにか防ぐ事が出来た。かなり竜は動揺しているようだ。もう少しでこちらの流れになる。近付いてくれば……。


 だがそう簡単に物事は進まない。竜は一層、僕から離れようとした。恐らく気付いているのだろう。近付けば何かをする、と。それでも絶対優位が竜であるのは変わらないけど……。


 再び酸のブレスによる攻撃が続く。そのブレスを避けつつ、防御するという戦法を取っていた。更なる動揺を誘う為である。だがそれでは魔力消費量が多い。そろそろ次の布石を置かなければならない。


「……【突き刺せ】【ファイアーアロー】。」


 魔法を詠唱する。【高速詠唱】が付与されているため、酸のブレスが放たれるが届くより魔法の発動の方が先だ。その後も連続で【火矢】の魔法を使う。合計で十本の【火矢】を作る。


 これを制御して全方位から竜を狙う。気付かれないためにまずは【火矢】を竜とは関係の無い方向に飛ばす。そして竜より高い位置まで飛べば、次は竜に向かって全方位から飛ばす。


 近付く魔力の反応に気付いたようだ。全方位から襲い掛かる【火矢】を見るために酸のブレスが攻撃が止んだ。今だ。


「……【優雅な自然の景物よ、優美な自然の風景よ、美しき自然を我が手に宿し、狂い無き一手を与えん】【花鳥風月】!」


 途中で巨大な魔力の反応に気付いたのか逃げようとしたが、その次の瞬間には周りの【火矢】を警戒する事になる。決断するまでの短い間に【高速詠唱】で【花鳥風月】を完成させた。後はこれを竜にぶつければ、大丈夫だろう。


 残りの魔力は僅かだが、近付けるだけの魔力は残っている。【火矢】を再び制御して、竜の視線をこちらに近付けないようにする。


「……ふぅ。【大地の力よ、逆らう力を】【グラビティ】ッ!!」


 土魔法が一つ【重力】の魔法。【高速詠唱】無しだ。既に【高速詠唱】による1.5倍の魔力が残っていない。竜の重力を上げ、僕に掛かる重力を無くした。反重力だ。空に浮かぶ。僕はこの魔法に慣れているが、慣れていないものが使った場合、必ず天井などにぶつかる。それほど自在に操るのが難しい魔法なのだ。


 竜が落ち、僕は浮かぶ。その早さは緩やかだ。触れるまでの数秒間が長く感じる。恐らく魔力を大量消費しているためだろう。身体に負担が大きいらしい。これを倒したら、少し休憩する必要がありそうだ。【回復】の魔法を使う余裕も無い。魔力が残っていれば良かったけど。休んで回復させるしかないようだ。


 あと少し。竜の毒々しい棘に当たらないように。竜はこちらに酸のブレスを放とうとするが、その口にさらに重力を掛ける。


「……うっ。」


 さらに魔力が少なくなる。魔力は初級魔法も使えない程に減っている。初級魔法は魔力がかなり少ない赤ちゃんですら、少し訓練すれば使えるようになる。それよりも少ないのだ。


 魔力が無くなった場合、周囲の魔力を急激に身体が吸収する。これにより、魔力酔いや急激な疲れが発生する。さらに頭痛や全身の痛みも出てくる為に休憩するしか無くなるのだ。竜の力が微かにでも残っていれば僕は勝てないだろう。酸のブレスの藻屑となるか。


 あと一秒。それで決着がつく筈だ。【花鳥風月】が蒼き竜に当たり、倒れれば僕の勝ちだ。しかし、そうでなかった場合。攻撃が当たらなかった、酸のブレスを浴びた、毒々しい棘に触れた、耐えたなど。こんな場合には僕の負けだ。魔力が残っていない。


 まあ、【花鳥風月】は零距離射撃で触れなければ発動しないのが幸いだろう。そうでなければ、絶対に躱されると思う。これで決着だ。


 次の瞬間。竜が最も近付く。僕は竜の棘を避けて、身体に触れる。成功だ、魔法は発動する。────花鳥風月。巨大な自然エネルギーが竜に放たれる。僕への反動は無い。そのままゆっくりと【重力】を解除して、地面に降りる。立とうとしても立てない。それだけの体力が残っていない。魔力だけでなく、体力まで限界とはね。


 僕は決着を見ようと上を見る。そこには【花鳥風月】による巨大な穴が開いていた。それはすぐに修復される。それよりも僕の目に入ったのは、ボロボロになりつつ空を飛ぶ()だった。


 ────竜は耐え抜いたのだ。


「グウォオオオオン!!」


 悲鳴のような苦しげな声が竜から漏れる。向こうも飛ぶだけの体力しか残っていないようだ。魔力も酸のブレスを出すだけは無いようだ。


 と思っていた、次の瞬間。竜の身体を包み込むように魔方陣が展開する。そして竜の身体は瞬く間に回復する。魔力が回復するのも感じた。


「なっ……。」


 あれは竜だけが使いし太古の魔法、〈起源の魔法(オリジンマジック)〉。竜魔法であった。

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