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始祖の竜神と平凡の僕。  作者: 秋色空
三章:遺跡編
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16.水の女神の遺跡 Ⅱ

本日二回目の投稿です。

今日はこれで終わりです。

 まずは蜂だ。ここに来て詠唱してはまた避けられるだろう。事前準備を終わらせておこう。


「【早き祈りを】【クイックアリア】!」


 無魔法が一つ【高速詠唱】の魔法。これを発動しておけば魔方陣の展開スピード並びに発動スピードが向上する。蜂が魔方陣を見た時点で回避する可能性が高いために立てた第一段階である。


 次は無詠唱だ。わざわざ詠唱するまでもない。土魔法が一つ【重力】の魔法。高速詠唱にて展開、発動。蜂自体に掛かる重力を引き上げて地面に叩き付ける。これで一安心だ。最後に決める。


「【砕き潰せ、強き風よ】【ブラスト】!!」


 風魔法が一つ【爆風】の魔法。蒼の蜂は粉々になり消え去った。瞬間、攻撃を察知してその場から飛び去る。ゴーレムのパンチだ。やはり地面が抉れる。当たらないように攻撃しなければいけない。一度当たっただけでも機動力が低下するだろう。幸いにもゴーレムの動きは遅いために対処はしやすい。


「……ゴーレムって言えば関節だよね。」


 旅人の魔物の予備知識としてゴーレムの通常対処法も頭の中にある。それは関節を狙うというものだ。ゴーレムは装甲が固く、最も狙いやすいのが関節なのだ。関節の装甲を厚くすれば動けなくなる。


「だけど、その関節も大きいから砕くのが難しい。」


 三メートルほどあるゴーレムは関節もそれなりの大きさ、太さがある。魔法で砕こうとしても恐らく中途半端に終わるだろう。拳で砕くという選択肢は最初から無い。


「おっと。」


 考えている内にもゴーレムは攻撃を続ける。無茶をすれば攻撃手段はあるけど、攻撃を受けそうだな。まだまだこの遺跡も広そうだし、体力は残しておきたい。


 そう言えば、このゴーレムの核となる魔石は存在しているのだろうか。これが魔物で無ければ、魔石は無いだろう。魔法によって造られた『魔造兵器』などならば核が違う可能性がある。魔力を含む金属である『魔鉱』と呼ばれる、オリハルコンやミスリル、ヒヒイロカネ、アダマンタイトなどがある。これらは魔造兵器などの魔石代わりの核として使用されている。


 磁力を発生させようかとも思ったけど、ヒヒイロカネなどは磁力を拒絶するために意味が無い。まあ、魔石でも意味が無いけど。分からないけど、磁力に反応すれば選択肢が狭まるから使った方が良さそうだね。


「【引き付けよ】【マグネティックフォース】。」


 地魔法が一つ【磁力】の魔法。この戦いでは無詠唱を使っていないが、それは魔力消費量を抑えるためである。攻撃速度などはやはり無詠唱の方が早い。しかし、無詠唱はその分、脳内で構築作業を行うため、魔力消費が激しいのだ。長期戦などではオススメできる技術ではない。


「……反応しないか。」


 磁力には反応しなかった。という事は魔物か一部の魔造兵器。もしくは現代には伝わっていない特別な何か、か。泉の石版の古さを見るに、最後の古代技術の可能性が高そうだ。対処法が無いな。こうなって来ると、残りの選択肢は一つしかない。


「全力でぶっ飛ばす。」


 このゴーレムを消滅させるだけのエネルギーを持った魔法はそう多くない。上級魔法では無理だ。恐らく至高魔法でも無理だろう。残ったのは絶対魔法アブソリュートマジック究極魔法アルティメットマジック。究極魔法は寿命すらも簡単に削るから使いたくない。絶対魔法だろう。ならば僕はこの魔法を選ぶ。


「……【優雅な自然の景物よ、優美な自然の風景よ、美しき自然を我が手に宿し、狂い無き一手を与えん】【花鳥風月】。」


 途端、掌に光が集まる。様々な自然から得た自然エネルギー。他の呼び方をすれば、生命力。絶対魔法が一つ【花鳥風月】の魔法。そのエネルギーは絶対力であり、他の存在がそれに干渉する事は出来ない。だからこそ、絶対魔法アブソリュートマジックなのだ。これならばゴーレムを消滅させるだけの力を与える事が出来るだろう。後は触れれば良いだけだ。


 ゴーレムは魔物では無い。僕の掌に集まった光は他者から見れば、目が眩む程の強い光だっただろう。しかしゴーレムだからこそ、それに気付くことがない。ゴーレムは再び拳を突き出す。今ならば、僕は躱す必要も無い。


 そして、ゴーレムの拳が僕に触れようとする刹那。僕はその拳に触れた。莫大なエネルギーを宿したその掌で。


 通常であれば、そのまま僕は吹き飛ばされ、身体はボロボロになるだろう。死んでいる可能性も少なくない。但し、今だけは違った。この莫大な自然エネルギーはゴーレムの拳に反発した。僕が一切の反動を負うことなく、ゴーレムは粉々になった。


 周りからは巨大光線を放ったように見えただろう。僕とゴーレムの一直線上にあった壁には巨大な穴が空いた。しかし、それもすぐに元に戻った。気付いた事だけど、恐らくここでの魔法発動は威力が低下する。この建物自体が魔法によるエネルギーを少しずつ吸収しているようだ。【花鳥風月】も普段よりも威力が少しばかり小さかったような気がする。


 それは兎も角として、僕は部屋を間違っていなかったようだ。ゴーレムを倒した後に隙間すら見えなかった壁の一部が扉に変化した。これも高度な魔法だ。この先に進め、という事だろう。


 僕は再び進み始めた。

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