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始祖の竜神と平凡の僕。  作者: 秋色空
二章:旅路編
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14.隠された泉 後編

後編です。


本日の投稿二回目です。

今日の投稿はこれで終わりです。

「ちょっと潜ってみないかい?」


 僕は二人にそう提案した。水底の石版が何故光っているかは分からないが、少しばかり興味がある。


「……大丈夫?」


 ルカはそう聞いてきた。確かに水深が深いため、息が持たない可能性があるが、それは魔法で何とかなる。魔物もいる訳じゃないし、大丈夫な筈だ。


「大丈夫だよ。」


「でも、服が濡れます……。」


 ミシェルの心配店はそこか。心配する事でも無いけど。


「服が濡れない魔法があるから大丈夫だよ。それでどうする?」


 再度、尋ねた。しかし二人から反論は無い。大丈夫そうだ。自分達に水魔法が一つ【防水】の魔法を発動させ、水に入る。心地良い冷たさだ。


「魔法は発動させたよ。もう服は濡れないから。」


 二人も泉に入る。【防水】の魔法は発動しているようだ。さて、石版に向かうとしよう。石版までは少し時間が掛かったが、辿り着く事が出来た。どうやらミシェルは泳ぐのが苦手みたいだけど。


 僕は三人を取り囲むように風魔法が一つ【気泡】の魔法を発動させた。三人の周囲だけを空気で囲んだのだ。ここには水が入らない。会話をするために気泡空間を作ったのだ。


「これが石版みたいだね。」


 三人は石版を取り囲むように立った。ミシェルは泳ぐのに疲れていたが帰りは大丈夫だろうか。まあ、それは帰る時に考えるとしよう。


 僕は光放つ石版に書かれている文字を見た。この時代の言葉では無い。これは古代言語だろう。そんなに古い時代の物なのか。これはいつここに置かれたんだ。


「この文字何ですか?」


「古代言語だよ。その調子じゃあミシェルは読めないみたいだね。ルカは?」


 ルカも首を振って否定した。ルカは竜神だからな。知能は高くても文化に関わってなければ言語も知らないのだろう。まあ、僕が読めるからいいんだけどさ。


「……じゃあ、僕が読もう。少し待ってね。」


 僕は一通り石版の言葉を読む。そして言葉を噛み砕く。言い回しも当然古いために意味を理解するのに時間が掛かったが、理解することは出来た。それを二人に話す。


「僕の解釈が間違ってなければ、この石版には水の女神に纏わる神話が書かれている。僕は知らない話だった。ルカとミシェルは何か水の女神に纏わる神話とか知ってる?」


 二人は首を振った。ルカもミシェルも知らないようだ。ミシェルはまだしもルカは神格化している竜として何か知っているかと思ったが、知らないようだ。


「神格化と神は違うと思うけど、どのような違いがあるの?」


 自分の中に出てきた疑問をそのままルカに尋ねてみた。あくまでもルカは竜神であるという事をミシェルには伝わらないように。


「えっと……。神には絶対神と呼ばれる最も高位の神がいる。そしてその下に上級神と下級神がいる。下級神は上級神の眷属。それに対して神格化は下級神よりも遥かに地位が低い。少なくとも下級神になるためには上級神の眷属となる必要がある。」


 ルカは神格化したが、上級神の眷属ではないために下級神にもなれていないという事か。水の女神は上級神である。


 さらに下級神以上になると何らかの概念を司るようになる。そして下級神以上の真名を知る事は無い。神々の真名を知れば、その神の力を得ることが出来る。別の呼び方をすれば加護を得られるのだ。そう簡単に真名は知る事が出来ない。それに対して神格化では真名は存在しない。普通の名前だけだ。


「要するに神と神格化は明確に違いが存在するから、神格化しても神とは関わる事が無いという事だね。」


 ルカは頷いた。その解釈であっているという事か。


「神格化って何ですか?」


 どうやらミシェルは神格化から知らないようだ。これも説明が必要だったか。


「神格化っていうのは、最低で下級神に匹敵する力を持ったものを指すんだ。どうすれば神になれるか、神格化できるかは定かじゃないけど、神格化出来るのは人間だけじゃない。例えば竜神も神格化したけど人じゃないよね。」


 ミシェルは頷く。ルカが一瞬ビクッとしたが気づいていないふりをして話を続ける。


「竜神は竜魔法を開発した事によって神に等しい力を手に入れたと言われているよ。本人はあまり気にしていないみたいだけど。竜が全て神格化している訳じゃないって事は元々の素質があったんだろうね。だからこその竜神か。ルカはどう思う?」


「わ、私ですか?……どうでしょう、何も考えていないんじゃないですか?」


 どうやらルカは神格化について何も考えていないようだ。興味深い意見が聞けた。まあ、それは兎も角としてもだ。この石版は水の女神についての何なのか。それを知りたいな。


「この石版、どうすれば良いと思う?」


 他の二人も良い意見は思いつかないようだ。壊すという選択肢はあったが、流石に神に纏わるものを壊すというのは色々とデメリットがある。というより危険すぎる。辞めておこう。


「取り敢えず触ってみようかな。」


 考えてみると僕はまだ一回も石版に触れていないのだ。石版に触れれば何かがあるかもしれないと思い、触ってみることにした。


「……何も無いね。」


 と言った瞬間だった。既に光を放っていた石版がその光を強めた。


「────ッ!」


 その光は三人をも包み込んだ。そして、その光が消える頃には三人はそこから姿を消していた。同時に【気泡】が消え、再びそこは水に包まれる事となる。

次回も〈水の女神の泉〉での話は終わりません。

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