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始祖の竜神と平凡の僕。  作者: 秋色空
二章:旅路編
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11.アークタクルス

 ミシェルの母を探す。僕達は当分、それを目的として旅をすることになった。狼人種の村を出て、およそ一週間。街道の半分の地点にある中継地の街に着いた。〈アルグランテ〉まではまだまだ長い。


「ここがアークタクルスだよ。」


 僕は二人に案内した。僕はこの街を数回ほど訪れた事がある。一回は僕が新米旅人の時。二回目はその二年後だ。一回目は一人旅だったけど、二回目は旅仲間と一緒に泊まった。


 前回訪れた時からは凡そ二年経っている。だけど街が変わった気はしない。基本的にここは旅人とか冒険者とか商人が訪れる街だからかな、宿屋が多い。


 僕は過去二回お世話になった宿屋へ今回も泊まることにする。


「すみません、二部屋お願いします。」


 僕が一部屋、ルカとミシェルで一部屋だ。流石に三部屋は出費が激しかったし、ミシェルにはルカが付いていて欲しかったからこうした。この選択が間違ってないといいけど。


「あいよ。」


 女将さんは快く応じてくれた。僕としては亜人のミシェルが忌避されないか心配だったけど、差別意識の無い人で良かった。ミシェルにはフード付きのマントか何かを買ってあげようかな。


「僕は少し買い物に出掛けるよ。」


「うん。」


 なるべく後回しにしないために僕はすぐに買いに行くことにした。ここはあまり品揃えの良い店が無いけど、僕が一番品揃えが良いと思っている店に行った。所謂、何でも屋さんだ。


「いらっしゃいませ。何をお探しですか。」


「フード付きのマントが欲しいんですけど……。」


「少々お待ちくださいませ。」


 定員さんは奥に入っていった。僕は暇なので品物を見ていく。何か魔道具が欲しかったけど、ここには無いみたいだ。別に特別欲しい物がある訳じゃ無いんだけど……。


「お待たせしました。」


 結局めぼしい物は無かった。残念だな。僕は料金を支払って、受け取った。これで良し。


 ◇


「何をしてるの?」


 宿に戻ってとある事をしているとルカが尋ねてきた。


「ちょっとマントに魔方陣を、ね。」


 ミシェルにはまだ話していないけど、マント自体を魔道具にするのだ。これには技術がいるけど、凄い技術などでは無い。経験がモノを言うだけだ。


「……出来た。」


 数分も経たずに終わった。ミシェルに渡すマントに付属させた効果は防御付与。マントを着たものに対する如何なる攻撃に対しても防御し、反撃する。強力な魔方陣を仕込んでおいた。防御する対象は着用者に傷を負わせるような攻撃、状態異常などがそれに該当する。


「ルカ、ミシェルにこれを渡しておいて。」


 何故かルカは僕の部屋にずっといた。ルカとミシェルは隣の部屋なのだが、何をしているのだろうか。


「分かったー。」


 ルカの返事は上の空だ。本当に何をしているんだ。


「おーい、ルカ。……おーい。」


「……」


 何なんだ……この竜神。考え事し過ぎて全く返事しないんだけど。


 仕方なく僕はルカの頭に触れる。ルカは座っていたので丁度良い位置に頭があったのだ。


「ほわっ!?」


 ルカが驚いて飛び退いた為に僕も驚いてしまった。本当に何なんだよ、この竜神。


「ずっと意識が上の空だったぞ。どうしたんだ?」


「……眠たいなって。」


「寝ろよ!」


 頭痛がしてきた。面倒だな……。僕はルカを抱えて、部屋に連れて行く。竜神という名前から身体は重そうだけど、実際軽かった。人間の中でも大分軽い部類に入るだろう。無茶苦茶だな、竜神って。ルカは顔を真っ赤にさせるが知らぬ。竜神の対処には困るな……。


「ほら、寝るんだ。夕食になったらミシェルに起こしてもらえ。……ミシェル、頼めるか。」


「分かった。」


 思えば勝手に部屋に入ったが、ミシェルは気にしていないようだ。有り難い。危うく危険な男認定される所だった。僕は部屋に戻るとしよう。ルカはすでに寝付いていた。やっぱりおかしいだろ、この竜神。


「夕食でな。」


 僕が立ち去ろうとすると服の袖を引っ張られた。ルカだ。離そうとしても竜神の力に人間が勝てる筈が無い。仕方無く、椅子に座った。


「ごめん、ミシェル。」


「う、うん。」


 今だけは我儘に付き合ってあげるとしよう。おっと、そういえば……。


「ミシェル、これ。」


 僕はミシェルにフード付きマントをあげた。魔方陣を仕込んだやつだ。


「これは……マント?」


「今でも亜人を差別する奴がいるからな。取り敢えずはフードを被ってるといいよ。あと、そのマントには高度な魔方陣を仕込んでるから、大体の攻撃は防いで、反撃するよ。」


「そんな凄いものを私にくれるの?」


「僕は自分のマントがあるし、ルカは僕のマントと同じ物を作れるからね。ミシェルには僕からあげようと思って。」


「あ、ありがとう。」


 ミシェルが笑った。


「やっと笑ったね。」


「……え?」


「君の村からここまで苦笑いは浮かべてたけど、本心から笑ったのは初めてでしょ?」


「あ……。」


「元気になったのなら良かったよ。」


 村を離れればやはり寂しいのだろう。ホームシックというやつだ。僕は旅人生だからあまり分からないけど、ミシェルには家がある。家族を探す旅とはいえ、大変である事は間違いがない。ミシェルはこれからも元気でいるのが一番だ。

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