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異世界アパート『異世界邸』の日常  作者: カオスを愛する有志一同
異世界邸へ、ようこそ
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ようこそ。異世界邸へ 【part 夢】

「――言意の調べ、大方完了したですにゃ」

「おぉ! 三毛は仕事が早いのぅ。……で、出身地は?」

「情報の神の世界録ワールドデータによると、神界【アースガルズ】ですにゃ」

「あぁ……父様の管轄外の世界じゃのう……まぁ、そこはあの緑髪に色々聞いとけばよかろう。では、アレを持ってくるのじゃ」

「あぁ……何でしたっけにゃ? これ」

「何だかんだでふんぬんかんぬんすることでどんな世界のモノとも会話できる翻訳寒天と同じ役割をするやつじゃ」

「あぁ……理解できましたにゃ。では、これを脳髄に埋め込めばいいので?」

「い、いや……そういう使い方じゃなくての? ほれ。こうやって付けるのじゃ」

「おぉ、手際がいいですにゃ奥様」

「むふふ。なかなか手馴れておろう? では、これに隠蔽インビジブルをかけてっと」

 何やら自分の体に無数の手のようなものが這いずり回る。それは小さいものだったり大きいものだったりと、なんかもふもふしたものまでいて大変不可解で……今何が起きてます?

 パチリと目を開けるとそこには、


「なるほど。駄ルキリーだからしばらく面倒見ろと。了解です。でも、一応それ相応の金額はいただきますよ? オーディンさん。……それでもいい? ふむふむ。その金額ですか……倍プッシュで。え? 無理? じゃあできませんねぇ。……ほぉ? ご理解いただけましたか。流石オーディンの旦那。良き判断をしますね。では、そういうわけで、口座は○○なんで、そこに振り込んどいてください」


「……成功したかの?」

「とりあえず、国家予算程度にはこぎつけた」

「ナイスじゃ貴文。これでしばらく金には困らんのう!」

「まぁ、一年保つかどうかだけどね」

 視界に入ったのは、一人の男。透き通った白髪に、赤い瞳。ひょろっとした体の人間の男である。

 その男はさっきも見た人物で、そう。あの有翼竜人と人造人間を竹串でノックアウトした人間――伊藤貴文である。

 そして、貴文は何故か、自分の上司であるオーディン様に……何やら嫌なことを話していた気がするが。

「お? 気がついた? ジークルーネさん」

「……!?」

 こちらに振り向いた彼が名乗ってもいない自分の名をいう。おそらく上司と繋がりがあるっぽいからそこ経由で聞いたとは思うのだが、

「あぁ、はい一応……」

「大体事情は上司の方に聞いといたから説明はしなくていいよ。一応、目の方も直しておいたんだけど……どっか変な所があるかい?」

 しゅっという擬音が聞こえてきそうな軽やかなステップで瞬間移動じみた移動を行う貴文。気が付けば目と鼻の先まで顔が近づいており、

「んー……一応、目に傷はないみたいだし問題ないか」

 しばらくこちらの目を覗き込むと、くいっと顔を上げた。

 そして、にっこりと笑い、

「では、初めましてジークルーネさん。ようこそ、他世界混在アパート【異世界邸】へ!」

「い、異世界邸?」

「Yes! ここは貴方も通ったと思いますが、多次元に通じる冷蔵庫。名前はなんかあるみたいですけど、もう冷蔵庫でいいですよ。もういっそ略して、【こ】でいいと思ってます」

「略しすぎではありませんか!?」

「いやぁ。もういっそあれ呼び名は劣化したゴミでもいいと思ってるのでまだマシですよ」

「不思議アイテムをディスりすぎてません!?」

「まぁ、そこからやってきてるならず者を投獄。もとい部屋の中に叩き込んで住んでもらっているのがこの異世界邸です」

「住人の扱いが酷すぎる!?」

 な、何ですかこの場所は!? ちょ、ちょっとカオスすぎてやしませんか!?

「でまぁ、俺の自己紹介をしますとこの異世界邸の創設者の血筋で、管理人をしております。伊藤貴文と言います。そして……」

 貴文の横に小柄な小学生くらいのケモ耳少女が出てくる。

「こちらが、副管理人兼妻の神久夜です」

「以後、シクヨロなのじゃ!」

 ビシッとポーズを決める少女。い、いや……この子が奥さん? ちょっと年の差激しいとかじゃなくて犯罪じゃないんですかね? 

「……ロリコン?」

「だってさ、現在百二十八歳」

「むぅ……まだロリとみられるか……」

 まさかのロリババアでした。あれってファンタジーだけの存在だと思ってたんですけど、

「お主の方がファンタジーじゃろうが……」

「さりげなく心の声読まないでください」

「てかぶっちゃけそれだとオーディンもファンタジーじゃね?」

「あの人は存在そのものがファンタジーですから。というかいっそファンタジーの世界に消えてくれまっせんかね?」

「ううん……それ伝えていい?」

 貴文にそう言われ、全力で首を振るジークルーネ。うっかり本音が漏れてしまうというのは恐ろしい。ついついあのナメクジに転生させるとか言ったロリに対する私怨が燃え上がってしまった。

 それからしばらくの沈黙のあと。

「……でまあ、この館の管理とかしていまして」

「……はい」

「貴方を雑用としてうちで雇うことになりまして」

「はぃいい!?」

 え!? 何ですかそれ聞いてませんよ!?

「魔法少女オーディンちゃんからもしっかり許可もらいました」

「あの、それ主神に報告しても」

「大丈夫ですよ。毎回こうやっていじってますんで」

「ちょっと貴方何者ですか!? 人間じゃないでしょ!?」

「人間ですよ? 体は」

「魂のほうは!?」

 な、何でしょうこのただならぬ余裕を醸し出す人間は。というかあの主神をおちょくるほど人間ってそもそも人間というカテゴリーに含んでいいのですか!? 一応、あのロリ主神ですけど!?

「まぁ、うん。親が神様だって思ってくれれば。生まれた場所は馬小屋で」

「どこのイエスですか貴方は!?」

「まぁ、あれですよ。私の生まれはどうでもいいとして、哀れなジークルーネちゃんにはこの館で働いてもらいます。あ、無論給料出ますし、部屋も貸しますよ。あと、一日一回組手の相手もしてあげます」

「なんと!?」

 その貴文のセリフを聞いた途端に目を輝かせるジークルーネ。

「戦ってもらえるんですか!?」

「あ、組手ですよ? 殺し合いではないので、全部寸止めで」

「よっしゃああああ!!」

「聞いてないっぽい?」

 貴文は神久夜と顔を見合わせ、肩をすくめる。

 ジークルーネはもう貴文の声など耳に入っておらず、「あ、一応これ天才少女オーディンちゃんからのお願いだったからね」とか上司の気遣いも何も聞いていないようで。

「とりあえず、一応また散らかったんで、その片付け手伝ってくださいね?」

 そう声をかけるもスーパーハイテンションになったジークルーネの耳には入らず。

「……」

 少しの逡巡のあと。

「せいっ」

「う!?」

 首を軽くトン。気絶させて引きずっていったのはある意味異世界邸の平常運転の姿であった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 左手は添えるだけ(意識昏倒手刀) なんとお強いことでしょう。そして、ルーネちゃんこと、駄ルキリーの永久就職場所見つかってよかったですね。 戦い放題だし、三食戦闘付き職場。なんと良いことでしょ…
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