部外者会議【Part夙】
▼チャットルームには誰もいません……
▼チャットルームには誰もいません……
▼チャットルームには誰もいません……
▼局長さんがログインしました!
「あらあら、私が一番乗りのようですねぇ」
「このチャットルームは機密性こそ高そうですが、デザインや機能が前時代的なのがいただけませんねぇ。まあ、いいです。とりあえず、先に来た者の義務として今日の議題を貼っておきましょう♪
①例の邸が所有していると噂の三つの超常物について
②それ狙う第三者が動き出したことによる世界的影響と対策について
③日本異界監査局局長が美人すぎる件について
こんなところでしょうか」
▼冥官さんがログインしました!
「おはようございますぅ。どなたか存じませんが、ようこそいらっしゃいましたぁ」
「おはようございます。議題は確認したが……俺は仕事があるのでね、①と②が終わり次第失礼させてもらうよ」
「そんなぁ! みんなで語り合いましょうよぅ!」
「正体を隠す気がないなあ」
「お互い様じゃないですかぁ?」
▼親父さんがログインしました!
「おんや? おっさんが一番乗りだと思ったのに、真面目な人が二人もいるとはビックリだぁよ」
「おはようございますぅ」
「おはようございます」
「こっちのお国はまだ昨日の夜なんだわ。だから『こんばんは』と言わせてさせてもらうよん。それよりなんでユーザー名二文字しか登録できないの? 『おっさん』か『懲罰師』ってしたかったんだけど」
「さっきから、匿名性が全く機能していないな」
「③の議題についてkwsk」
「お、人が集まるまで語っちゃいますかぁ?」
▼課長さんがログインしました!
「いらっしゃ~い」
「どこの課長さんでしょうか?」
「わっはっは! まだ人少ないのに盛り上がっているじゃないか! かちょーも③の議題について興味津々だなー゜+.(◕ฺ ω◕ฺ )゜+.」
「皆、暇なのかい?」
「とりま、その美人さんのパンツの色を教えてもらおうかゲヘヘ」
「わぁ、変態さんですぅw」
「パ・ン・ツ! パ・ン・ツ! パ・ン・ツ! (σ゜д゜)σヘイッ!」
「この鬱陶しさ、日本の政府組織にこんな仙人がいた気がするんだぁよ」
「君、いい感じのアイコンしてるじゃないか! 高画質版もらっていい?」
「……ついに政府筋まであの街を無視できなくなってしまったわけだ」
▼学長さんがログインしました!
「お、丁度いいところに! ③の議題についてヘキセン魔道学会学長の意見を聞かせてもらおうか?」
「おいぃイイイイ! 入ったばかりなのにボクの正体をバラさないでくれないか! 誰だ君は酷いアイコンだな――って思ったらお前かおっさん!?」
「あらあら、仲がいいですねぇ」
「よくない!?」
「よくないわい!? 誰がこんなお婆ちゃんと!?」
「誰がロリババアだ!? ボクはまだ三百十二歳って言ってるだろ!?」
「ロリババアはアイデンティティだ! そこを指摘されてキレるのは三流だなー!」
「確かに、まだまだヒヨッコですねぇ」
「そうだなあ」
「……バケモノしかいなかった。おっさんが一番若いやん」
▼盟主さんがログインしました!
「一番若い子キタ─wヘ√レv~(゜∀゜)─wヘ√レv~─!! これでおっさんマウント取れる!!」
「な、何事ですか!? えっと、もう会議は始まっているのでしょうか?」
「三百十二歳は子供なのかお婆ちゃんなのかという議題ですぅ」
「エルフの話ですか?」
「画面越しに美少女のスメルがします! 盟主ちゃんいくつ? 今どんな下着穿いてるの? ハァハァლ(́◕◞౪◟◕‵ლ)」
「す、すみませんチャットルームを間違えてしまったようです!?」
「あってる! あってるからログアウトしないでくれ盟主!」
「……なるほど、連盟の盟主と所属組織のトップが二人。差し詰め、親父さんと学長さんは電脳魔術対策の護衛と言ったところかな?」
「ちょっとちょっと、正体探るのはタブーだぁよ!」
「君が言うな!?」
「わっはっは! 誰も隠してないけどな!」
▼国王さんがログインしました!
▼主神さんがログインしました!
▼総帥さんがログインしました!
「続々とやってきましたねぇ」
「既に集まってる面子的にも、どう考えても各勢力のお偉いさんだぁよ。総帥さんって〈黒龍〉の爺さんじゃないよね?」
「ちょっと興味あるから来てみたんだけど、いきなり爺さん、しかもあーんな雑魚だと疑われるとは心外だなー」
「え? 知り合いなの? どこで繋がってんのあの爺さん……」
「ふむ、知らぬ者が多い。自己紹介からするべきか。私はラ・フェルデの国王にして神剣の継承者」
「ちょ、ダメですよクロウちゃん本名名乗っちゃ!?」
「私に対するその呼び方、誘波殿か」
「あぁ……」
「え? ネットリテラシーなさすぎじゃない? かちょーですら引くんだけど。もしかして→異世界人?」
「異世界の人がどうやって参加しているのでしょう……?」
「今回の件、神界や冥界はもちろん、この標準世界と繋がりの強い他世界も無関係とは言えないのじゃ。下手を打つと〈黄昏の終焉〉が来る前に世界が滅びるであろう」
「名前からもしやと思っていましたが、やはりあちら側の方でしたか」
「ねーねー、どうでもいい話はいいからさ。早く話を進めてよ」
▼最悪さんがログインしました!
「うーわ、ひっでぇ面子。カシラが揃いも揃って暇なんか?」
「いきなりご挨拶だぁね。ここに来たってことは青年もそのお仲間ってことだぁよ」
「俺を一括りにすんな狸親父。……まあうちの街を代表して参加させられちまったからには帰るわけにはいかねえか」
「そもそも、ここには招待された人しか入れないようになっています。下の者を代理にすることはできませんでした」
「結局ボクらを招待したのは誰なんだい?」
「わっはっは! そんなの一番に来た人に決まっているだろー!」
「私じゃありませんよぅ。裏の世界に広まった『噂』について会議するという情報を各勢力に流した上で、どこからともなく手紙を寄越し、この急造されたチャットルームへと誘導した存在。普通に考えればここを管理・運営している人でしょう。この中にいないとも限りませんが」
「集められたのはあの街とは関係がないか、間接的に関わっている勢力だね」
「罠ならさっさと発動してみせてよ。その方がくだらない雑談を見ているより面白いじゃないか」
「『噂』の出所は判明しています。かつて例の邸を追放されたという者たちが無作為に流布しているようです」
「かちょーが掴んだ情報源もそこだなー。まったく、かちょーに内緒で引っ掻き回してなにをやってるんだろうね、あいつら」
「そういえば、課長さんもあの邸を追放された一人だったって聞いたんだけど」
「わっはっは! あんなAIでイラストが描けないような連中と一緒にしないでもらおうか! かちょーは超絶美少女なんだぞ( *・∀・)9゛」
「罠というわけではないのであれば、このまま我々で議題に入ってもよいのではないか?」
「そうだな。どの道、無駄な衝突を避けるためにも話を擦り合わせていた方がいいだろ」
「まーねー。ここの人たちぜーんぶ敵に回したら……すっごく楽しそうだけど、流石にちょっと暇つぶしのお遊びじゃすまないかなあ」
「勝てる気でいるなんて大した傲慢さだぁよ。どこの組織の総帥さんか知らないけど」
「あははっ、君たちごときが僕たちと戦える土俵にいるとでも思ってるの? すっごいお馬鹿さんだね。どこの組織の親父さんか知らないけど」
「煽り合うんじゃない! 今回は一応、参加者の素性は知らないという〝てい〟で話し合うんだろう」
「まずはっきりさせておくと、流れている『噂』は真実じゃ。あの邸に住まわせている戦乙女から裏を取ったからのう」
「『空の魔石』とやらは僕も大いに興味がある。僕以外にそれを狙っている不届きな連中がいてね。数ヶ所は暇潰しに消しておいたけど、一番大きくて厄介なのが残ってるんだよなー」
「純粋な科学力だけで異世界と繋ぐ『炉』があることも、邸で働いているメイドから情報を得ています。『異世界』という概念がそもそもオカルトの領域です。それなのに超常の力を用いず『次元の門』を実現させてしまうのは、世界の理を超越しているでしょう」
「私が参加したのも、その『炉』とやらの詳細が知りたかったからだ。理を過ぎた物質が存在するとどうなるか、過去に一度経験している。世界の矛盾をよしとしない『神』が顕現するだろう」
「今回の場合は〈機械仕掛けの神〉。同じ神として、奴の神軍が動き出したことは検知しているのじゃ。破滅を迎えたくなければ、今すぐ『炉』を破壊した方がいいのう」
「『竜の卵』が存在することはこちらでも確認しています」
「ティアマトを送り込んだんだよねー。知ってる知ってる。でも、卵を持ったままダンジョンの最下層に引き籠っちゃったんだって? ねえねえ、自分たちが送り込んだ刺客が使えなかったらどうする? ねえ、どうする?」
「うーん……」
「どうしたおっさん?」
「それなんだけど、おっさんはティアマトなんて送り込んでないのよ」
「は?」
「どういうことだ」
「表向きはこの中年が手配したことになっているが、実際は『誰がやったのかわからない』のだよ。セシル・ラピッドからの要請を秘密裏に受理した記録だけが残っていて、それをどう処理して誰が幻獣界からティアマトを召喚しあの邸に送り込んだのか、痕跡が一切存在していない」
「本当は秘密裏の要請とかもない方がいいのですけど……」
「おいおい、竜の卵程度なら他二つと比べて議題に挙げる必要もねえだろと思ってたら、なんか面倒なことになってるみてぇだな」
「どの件も予断を許さない状況のようですねぇ。三点とも全てがあの街に集約されていますが、部外者である皆さんはどのように動かれるおつもりですかぁ?」
▼魔王さんがログインしました!
「ヒャホホホ! ご機嫌麗しゅう、紳士淑女の皆々様! この会議、『連合』を代表して参加させていただきたく思う!」
「貴様、『呪怨』か?」
「帰れ帰れクソピエロ」
「わっはっは! 魔王とは勇者が召喚されるきっかけとなる存在だ。よくもこのかちょーの前に存在を現わせたな?」
「これはこれは、ネット上だが錚々たる顔ぶれ。世界でも滅ぼすつもりかな?」
「魔王のあなたには言われたくないですねぇ」
「本物の魔王……ッ」
「気をつけるんだ、盟主。奴の呪いはおっさんでも返せるかわからないぞ」
「よりによってお前か。呪いで弄んでいる魂を返しにでも来たのか?」
「魔王ねえ……世界を壊した程度で思い上がってる道化が何の用?」
「ヒャホホ、嫌われているのは百も承知! ただ今回の件、我が新しき主も大変憂いておられるのだ。直接干渉できずとも、経過だけは知っておきたいというわけである!」
「レイちゃんを返してほしいのですが?」
「彼が我が国を去ってからの足取りが掴めなかったが、なるほど、貴様の下におるのか」
「いやいや、連絡は取り合えるが、あくまで彼は自分の意思で行動している。それより、話が脱線しているのではないかな?」
「構わんのじゃ。今は魔王の手でも借りたい状況だからのう。なにか仕掛けるつもりなら、我が止めよう」
「話がわかる神で助かる! ヒャホホ、では会議を続けよう! 異世界邸にある三つの特級呪物とそれを狙う勢力について!」
「呪物ではない。この仕切りたがり屋め」
「こいつが〝主催者〟じゃないのか?」
「とんでもない。ここは偶然見つけただけだ。すると、どうしたことか! 私のデスクに突然招待状が届いたのだ! これ幸いと乱入してみた次第だが、思っていた以上に面白いことになっていて来た甲斐があった! ヒャホホ!」
「まあいいです。とりあえず、各々の方針を発表してください。かち合うようでしたら調整も必要でしょう。あの特異な街は暗黙の了解で不干渉となっていましたが、異界監査局――そして世界の〝守護者〟としては流石に看過できません。顕現する神を退け、理を逸した『炉』を破壊します」
「我々ラ・フェルデはこの世界について疎い。よって監査局に事を任せるが、要請があれば援軍を出せる準備はしておこう」
「神界も基本は傍観するのじゃ。神同士で衝突するわけにはいくまい。もっとも、あの邸と関係のある戦乙女がどう動くかは各自に任せるつもりじゃ」
「魔術師連盟はティアマトについての調査を続行します。仮にもし、ティアマトが暴走するような事態になれば神軍の襲来と同等の脅威となるでしょう」
「おっさんたち『天光』は洗い出した犯人を懲罰し、ティアマトが暴走した際には加勢してこれを止める」
「ボクらヘキセン魔道学会は戦闘が不得手だ。バックアップに徹するよ」
「『卵』も『炉』も僕の研究には使えないから、勝手にどうぞ。僕自身は動くつもりないけど、『空の魔石』に釣られてきた馬鹿は潰してあげる。あ、もちろん魔石は回収させてもらうけど」
「冥府は直接関わらない。けれど、そうだな。あの街の守護を担う者に少しだけ働きかけておこう」
「俺はあの街に入れねえし興味もねえから基本傍観だな。ま、ウチの当主様が未だに遊びに行ってるし放置もできねえから一番やばそうなところでこそこそ動き回ってやるよ」
「かちょーたち魔術捜査局異世界干渉対策課は……なーんもしーませーん! そもそも『噂』は政府の耳まで届いてないしー。くぷぷ、期待した? なんか期待した?」
「じゃあなにしに来たんだぁよ!?」
「帰れババア!」
「わっはっは! まあ、個人的に『噂』を流した馬鹿どもを見つけて説教してやるくらいだなー。あと『ロリ』をつけろよデコ助野郎!」
「どうやらお互いに争う必要はなさそうだ! どうだろう、ここに『魔王軍』という第四勢力が襲撃を仕掛けてくるというのは!」
「是非やめてください♪」
「いくらなんでもあの街が不憫すぎるぞ」
「ヒャホホ、冗談だ! あの邸には私が世話をしたことのある白蟻姫がいる。やるとしても、少し彼女に加勢するくらいが丁度いいだろう」
「話はまとまったようじゃの。結局〝主催者〟は干渉してこなかったが、これで会議は終了でいいじゃろう」
▼主神さんがログアウトしました。
「まあ、暇潰しにはなったね」
「俺も仕事に戻らせてもらおう」
▼総帥さんがログアウトしました。
▼冥官さんがログアウトしました。
「もういなくなりました。せっかちな人たちですねぇ。私たちも解散しましょうか」
「うむ、皆の健闘を祈っておこう」
「わっはっは! さらばだ!」
▼局長さんがログアウトしました。
▼国王さんがログアウトしました。
▼課長さんがログアウトしました。
「それでは皆さん、お疲れさまでした」
「やっと研究に戻れる……」
▼盟主さんがログアウトしました。
▼学長さんがログアウトしました。
「あ、羽黒青年、今度ちょっと頼みたいことが」
「断る。この前の死霊島の金払ってから出直せ」
▼最悪さんがログアウトしました。
「話も聞いてくれない!? おっさんショーック!?」
▼親父さんがログアウトしました。
「ヒャホホ、これを見ている誰かさんは満足したかな?」
▼魔王さんがログアウトしました。
▼チャットルームには誰もいません……
▼チャットルームには誰もいません……
▼チャットルームには誰もいません……
▼魔女さんがログインしました。
「いい感じにまとまったみたいだね。面白い作品が書けそうだ」
▼魔女さんがログアウトしました。
▼チャットルームには誰もいません……
▼チャットルームには誰もいません……
▼チャットルームには誰もいません……




