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異世界アパート『異世界邸』の日常  作者: カオスを愛する有志一同
異世界邸へ、ようこそ
10/174

活力の風【part夙】

 異世界邸の山を下った麓に広がる街の片隅に、ひっそりと佇む小さな雑貨屋がある。

 不況にも負けじと今日も今日とてせっせと営業しているそこは――ただの雑貨屋ではない。

「鶏もも肉、胸肉、牛細切れ、豚ミンチ……玉ねぎキャベツ大根じゃがいも……朝早くから魚市場で見繕った新鮮な魚介類……瓶ビールが十箱……」

 取り扱っている品は食品から医療品、衣服に家具に文房具に自転車、挙句の果てに用途不明のよくわからない物までなんでもござれ、とその辺の百円均一など目じゃないくらいの充実さ。

「米も五俵と…………食材は全部『風鈴家』にお届け。ネジと釘とその他工具は……あー、これは瀧宮組の畔井松千代くろいまつちよさん宛てだからルート的に後回しだなぁ」

 一体この馬小屋レベルの小さな建物のどこにそれほどまで品が収まっているのかは置いといて、この店はただ単純に小売業だけを営んでいるわけではない。清掃業に不動産業、普通洗濯業から衣服裁縫修理業、物品預り業やら学習塾などなど。もはや雑貨屋の枠などはみ出た上で蹴飛ばしていそうな『なんでも屋』である。

「この大量の消毒薬と包帯と解毒剤は中西栞那さん宛て……あそこ相変わらず怪我人多いなぁ。この最新のガスマスクは悠希ちゃんか。フランチェスカさんのバイオテロもお馴染みになってきたよねぇ」

 中でもなんでも揃う小売業とコンボした運送業がこの店――雑貨屋『活力の風』が一番の売りとしている業務である。

 通販となにが違うのか?

 ……。

 …………。

 ………………うん、まあ、ね?

「フランス産の茶葉はウィリアムさん。原稿用紙は大先生。胃薬は貴文さんで、このどこの世界のものかよくわからん怪しい種は神久夜さん……よし、異世界邸からの注文はこれで全部だぁね」

 店の裏口前で段ボール箱に詰め込まれた大量の商品を数えていた青年は、ふう、と腰を下ろして一息つくと、首に巻いていたタオルで額の汗を拭った。

 薄い緑色の髪に青い瞳。鼻は高く肌は白い。背も百九十センチに届く一目で外国人だとわかる容姿の美青年は、「よっこいせ」と日本人臭過ぎる掛け声と共に立ち上がった。

 そのまま大量の商品を裏口に止めてある軽トラックに積み込む――ことはせず、代わりにパチン! と軽快に指を鳴らした。

 すると――ふわっ。

 山のように積み上がっていた段ボール箱が、まるで無重力空間にでも放り込まれたかのように宙に浮かび上がった。

「そいじゃ、まず異世界邸に出発とするかねぇ」

 気の抜けた感じにそう言うと、ヒュウウ、と青年と商品の回りで一陣の風が不自然に吹き荒れた。

「そだそだ、ついでに『風鈴家』で昼飯食わせてもらおっかなぁ。あそこのメシ美味いんだよなぁ」

 渦巻いていた風がやんだ時、そこには青年も商品も最初から存在しなかったかのように消え去っていた。


        ***


「ちわーっす! 毎度お世話になっております、雑貨屋『活力の風』でぇーす! 商品のお届けに参りましたぁーっ!」

 青年が店の裏口から消え去って数秒後・・・、彼は普通に徒歩で登れば一時間は余裕でかかる山奥に出現していた。

 そんな人里離れた場所に佇む一件のアパートの玄関先に荷物を置き、呼び鈴を鳴らして名乗ってからしばらく待つ。

 すると、中からとたとたと小さく可愛らしい足音が聞こえてきた。

「今開けるのじゃー」

 別に鍵などかかっていないが、常識的に玄関扉の開閉は住民のお仕事。青年が勝手に開けていいものではなく、向こうからカチャリとドアノブが回って扉が開くまで待機。そして住民の顔が見える直前に営業スマイルを展開する。

「これはこれは神久夜さん、いつもご贔屓にしていただき感謝していますぅ♪ えーと、これらいつも通り共用食堂に運んでおけばいいですかぁ?」

 出てきた黒髪の少女に一礼する。もし青年が一般の業者だったら、彼女を一目見ただけでぎょっとして酷く狼狽していたに違いない。

 なにせ、狐の耳と尻尾が生えているのだから。いや、付け耳とかじゃなくマジで。

「相変わらず『活力の風』は仕事が速うて助かるのう。うむ、いつも通りで構わぬ。ああ、食材だけは『風鈴家』に直接運ぶのじゃ」

「へい、了解しましたぁ」

 すっと青年は腕を振るう。それだけで不自然な風が生まれ、玄関先に積み上がっていた大量の段ボール箱が一箱ずつ川に流されるように移動していく。

 まずは鮮度が大事な食材から『風鈴家』に運び、その他を共同食堂へと流していく。

「運搬、移動、転移……風精霊の力は便利じゃのう」

「はは、便利なだけが取り柄ですからねぇ」

「謙遜するでない。便利で済む程度じゃなかろう?」

 ――通販となにが違うのか?

 その疑問の答えがこれだ。

 青年が持つ風精霊の力を使えば、たとえ大型トラックに詰め込めないほどの大量の荷物も一瞬で目的地まで転送できるのだ。お客様が自分の足で店まで買い物に来るよりもよっぽど速いし、宅配業者に依頼する手間暇賃金もかからない。消費するのは青年の魔力だけである。超便利。

 では、青年は風の精霊を使役する精霊使いなのか? ――否。

「まあ、ここで頻繁に発生する厄介事を鎮圧するくらいの力はありますけど、基本はケチな便利屋ですよ。僕たち風精霊シルフィードは」

 そう、彼が精霊を使役しているのではなく――彼自身が精霊なのだ。

「……雑貨屋、便利屋、どっちじゃ?」

「――よいしょっと。あ、これで全部ですねぇ」

「無視とはいい度胸じゃな?」

 『風鈴家』ができてからすっかり物置と化してしまっている共用食堂に食材以外の商品を運び終えると、青年は別に力仕事をしたわけでもないのにぐっと肩をほぐすように回した。

「ところで、私が頼んでおいた異世界『ラ・フェルデ』の野菜の種は届いておるかの?」

「はい、もちろん。出来のいい妹に頼んで胃薬と一緒に取り寄せてもらってますよぅ。……えーと、確かこの辺の箱の……あ、あった、これですねぇ。どうぞ」

 なにかの種子がぎっりしと詰まった小さ目の段ボール箱を手渡すと、神久夜はぱぁあああっと花咲くような笑顔になって尻尾を高速でフリフリし始めた。よっぽど嬉しいらしい。

「おお! 見たことないモノばかりなのじゃ! どんな野菜が育つのかのう? はよう、はよう植えてみるのじゃ!」

「ああ、神久夜さん、その前にお代を」

「それは貴文に言ってくれなのじゃ。たぶんそこら辺でまた厄介事に巻き込まれてると思うのじゃ。ふんふ~ん♪」

 踵を返して鼻歌交じりにとっとこ歩き去って行くご機嫌な狐耳少女に、青年は軽く嘆息すると小さく会釈をして見送った。

「じゃあ貴文さんを探すか。胃薬が必要そうだからついでに直接渡すとするかねぇ」

 青年は瞑目して集中する。周囲の風を繰り、異世界邸のみならず山の全域まで感覚を拡張させる。

 そして――力を使うまでもなかったほど近くにいることが判明した。


「どうして逃げるんですかぁーッ!? 戦ってくれるって言ったじゃないですかぁーっ!?」

「やかましいこの駄ルキリーがっ! 組手だっつったろ武器持ってんじゃねえよ殺し合いをする気はねえ!?」

「私も殺し合いをする気はないですよ! ただちょっと本気でマジでガチでお互い燃え尽きるまで全力全開な戦いをしてくれるだけでいいですからぁーっ!」

「ええい!? 追って来るな俺は忙しいんだ串刺しにするぞコラァアアアアッ!?」

「!? えへ、えへへぇ、やっとその気になってくれましたか嬉しいです貴文様♪」

「ダメだこいつ戦った時点で俺の負けだ!? いろんな意味で!?」


 ドドドドド! ダダダダダ!

 窓から見える中庭で、二つの土煙がもうもうと立ち昇っていた。

 白銀のドレスアーマーを着て死神のような大鎌を構えた少女と、彼女から全力な様子で逃走している男だった。

 その男の方――伊藤貴文に青年は用があるのだが、神久夜の言った通り見事に厄介事を抱えているようだった。

 いつもなら竹串を持って厄介事の原因を瞬殺しているのが青年の知る伊藤貴文だが、今日はどうも少し様子が違う。誰かから逃げている彼を見るのは初めてかもしれない。

「モテる男はツライねぇ。まったく」

 神久夜という奥さんがいながら、あんな美少女に追いかけられるとか。いや冗談だが。

「取込中なら仕方ないか」

 厄介事には巻き込まれたくないので、とりあえず事が片づくまで見物させてもらおう。

 視覚と聴覚では風を通して貴文と少女の鬼ごっこをしっかり捉えつつ、青年は共用食堂から出る。そのまま一階の廊下を歩き、控え目な文字で『風鈴家』と書かれた表札の扉の前に立つ。

 一応ノックし、返事を聞いてから扉を開ける。

「ちわーっす。雑貨屋『活力の風』でぇーす。商品の方はちゃんと全部揃っていましたかぁ?」

「ええ、ちゃんと全部ありますよ」

 昼時は少し過ぎていてガランとしている食堂内で、割烹着姿の中年女性が届けた食材を仕訳していた。

「それはよかったですぅ。えっとですね、貴文さんがちょっと取込中みたいなので、昼食でも食べて待ってようかと思ってるんですけど」

「いいですよ。食材も入ったばかりですし。ご注文は?」

「エビフライ定食で」

「はいよー」

 今日魚市場で仕入れたクルマエビが美味そうだったから、青年はここで食べるならそれだと心に決めていた。

 テーブルにつき、料理を待っている間は鬼ごっこの観戦を楽しむことにする。


「ちょっとなんでまだ逃げるんですか!? さっき見せた殺る気はどこに行ったんですか!?」

「引っ込めたよ!? そっちこそいい加減諦めて追いかけるのやめてくれませんかねぇジークルーネさん!? 組手じゃないならあんたと戦う気はねえの!? オーケー!?」

「ノーです」

「わかれコラ!?」

 二人の鬼ごっこはなんの進展もなく継続中だった。両者とも人間離れした脚力で音速を超えそうな勢いで走り回っている。割と広い異世界邸の周辺をもう何十何百周していることか。

 と――

「オラァアアアこの糞管理人!? さっきはよくもやってくれたな!?」

「今日という今日はもう許さねえ!? 火だるまトカゲと組むのは癪だが、まずはてめえから血祭に上げて治療してトイレにぶち込んでやる!?」

 貴文を狙う刺客はどうやら彼女だけじゃなさそうだった。邸の窓から飛び出て来た燃える翼の竜人と戦闘用アンドロイドが殺気を剥き出しにして貴文に襲いかかる。どうでもいいが、彼らは包帯をぐるぐるに巻かれてミイラみたいだった。

 あの二人も相変わらずだなぁ、と思いながら青年は出されたお冷を一口。

「くっそ、てめぇらまたか!? またなのか!? ホントいい加減に学習しろよ!?」

 忌々しそうに貴文は舌打ちする。

 乱入してきた竜人とアンドロイドがそれぞれ大鎌の少女の左右に並ぶ。

「よう、姉ちゃん、誰だか知らんが加勢するぜ!」

「共にあの鬼畜野郎を駆逐しようぞ!」

 三対一。

 さて果たして貴文はどう対処するのか? 高みの見物を決め込む青年は無意識に顔がニヤニヤしていた。

 どいつもこいつも相当な実力者。たとえ相手が一人でも、まともに正面から戦えばいくら貴文でも苦戦するのではなかろうか。

 出来上がったエビフライのサクっとした衣と肉厚でプリップリの中身に一瞬集中を切らしそうになるものの、青年は観戦を続け――


「邪魔です」

「「は?」」


 少女が、大鎌を振るう瞬間を見た。

 大きく一閃された大鎌は両隣の竜人とアンドロイドを峰に捉え、その巨体と、頑丈そうな機械装甲を物ともせずに天高くまで弾き飛ばした。

「今、彼と遊んでいるのは私です! 雑魚は邪魔なので引っ込んでいてくださいっ!」

 力なく落下してきた二人に、その言葉は聞こえないだろう。聞こえていたら、たぶん間違いなくブチ切れている。


「ぶふっ! ははは、あの二人、もうすっかりやられ役が板についてるねぇ」

「ちょっと汚いですよ!」

「あ、はい……すいません……」

 思わず水を吹いた青年は怒られてしょんぼりした。

 だが、青年はすぐに意識を外に戻す。二人の闖入者のおかげで事態が進展したからだ。


 貴文が、両手に竹串を握った。

 鬼ごっこは終わった。貴文が折れる形で。

「わかった。俺の負けだ。戦ってやるよ。ただ、秒殺されても文句言うなよ?」

「えへへ、言うわけないじゃないですかぁ。こちらこそ遠慮なく行きますから、秒殺されないでくださいね?」

 少女――ジークルーネが凶悪だが恍惚とした嬉しそうな表情で大鎌を構え――地面を蹴る。

 瞬間移動のような速度で間合いを詰められた貴文だったが、振るわれた大鎌を二本の竹串をクロスさせてパリィした。

 そのまま大鎌と竹串の壮絶な打ち合いが始まる。

 規則的な衝突音が風の力を借りなくても『風鈴家』まで響いてくる。

「凄いですね、その竹。なんで斬れないんですか?」

「特別製なんだよ」

 互角の戦いを繰り広げる両者。いや、どちらともにまだまだ余裕があるように思える。少なくとも貴文の実力はこんなものではない。

「えへへ! いいですね! いいですね! 私の鎌を二撃以上受けて立っていられたのはオーディン様を除けば貴文様だけですよ!」

「チッ、駄ルキリーのくせに、言うだけあってなかなか強い……」

 寧ろ駄ルキリーだからこそ強いんじゃないかと青年は思う。

「俺と勝負できれば満足なんだろ? 満足したらちゃんと雑用として働けよ?」

「えー」

「えー、じゃない!?」

「だって貴文様が勝っても負けても、私はこの異世界邸を去るつもりですよ?」

「は? 聞いてねえぞ? せっかく国家予算ほどこぎつけたってのに、そんなことは許さねえ」

「私はこれでも戦乙女ヴァルキリーなんですよ。オーディン様がなんと言おうと、この戦いの決着がついたら、ヴァルハラに帰還するか別の〈英雄の魂エインヘリアル〉候補を探しに行きますから」

 戦いながらの会話を盗み聞いていた青年も、なんとなくジークルーネという少女の事情は察した。

 会ったことないと思ったら、やっぱり新人のようだ。それも、すぐにでも出て行きかねない危うい新人だ。

 元の世界に帰るならまだしも、異世界邸を出てこの世界でうろちょろされると、青年の本来の立場・・・・・的にも非常に困るのだが。

 そんなこととは関係なく。

 ごくごく個人的な感情の下、彼はこう企んだ。


 この戦いは終わらせない方が面白そうだ、と。


        ***


「――〈圧風プレッシャー〉」

 ズドン!! という鈍く重たい爆音と共に、貴文とジークルーネの頭上から凄まじい風圧が襲いかかった。

「うわっ!?」

「なんですか!?」

 堪らず地面に両手をつく二人の間に、緑髪青眼の男がふわりと降臨する。

「ちわーっす! お取込み中のところ申し訳ありません。雑貨屋『活力の風』です。商品をお届けしましたので、代金とサインをいただけませんかぁ?」

 風を纏って舞い降りた青年は玄関先で告げるような軽い口調でそう言うと、懐から取り出した伝票を貴文に見せた。

「ああ、来てたんですね、誘薙さん」

「貴文さんは今日も大変そうだねぇ」

「今日はいつも以上に大変ですよ……」

 顔を上げた貴文がホッとしたような表情をする。法界院誘薙ほうかいいんいざなぎ――それが青年の名前だった。

 ただし、偽名だが。

「ちょっと待ってください! 誰ですかあなたは! 貴文様がせっかく戦ってくれてたのに、いきなり割って入るなんて、死にたいんですか?」

 ぐぐぐ、と。

 ヴァルキリーの少女――ジークルーネが竜をも地面に縫いつける風圧の中で立ち上がった。しかもそれだけでなく、大鎌振るって風圧をあっさりと斬り払った。

「うわーお。凄いねぇ、君。戦闘狂ってたまにこんなのいるから嫌だよねぇ」

 まったく驚いてないことがまるわかりな様子でお道化て見せる誘薙の首元に、ジークルーネは大鎌の刃を添えるように突きつけた。

「さあ、貴文様の風圧を解いてください。じゃないと、その首が飛ぶことに「――〈眠風スリープ〉」なりまうにゃあ……」

 青く輝く風がジークルーネを包んだ途端、彼女は変な声を上げて足の力が抜けたように倒れた。中庭の芝生の上ですーすーと安らかな寝息を立てている。

 誘薙は貴文にかけていた風圧を解除した。

「すみません、なんか助けてもらった感じで」

 そう礼を言ってくる貴文に――

「いやいやぁ、僕は代金とサインをもらいに来ただけだよぅ。次はほら、瀧宮組のとこ行かなきゃだしさぁ。急ぎなんだよねぇ」

 さっきまで呑気にのんびりエビフライ定食を食べていた口がそんな言葉を吐き出した。

「金は今持ってないんで、先にサインだけやっときます」

「おーけー」

「振込にしてくれると楽なんですけど」

「現金手払いが信頼の証ですのでぇ」

 伝票にボールペンで受取サインを書いてもらい、それを確認して懐に仕舞う。そして代わりに胃薬を取り出して貴文に渡した。

「これ、ご注文されていた胃薬です」

「助かります。今もそこで爆睡している駄ルキリーのせいでキリキリしてやばかったとこなんです」

 受け取るや否や、貴文はその錠剤の一つを水もなく呑み込んだ。

「うーん、やっぱり効くなぁ。これ、誘薙さんの妹さんの会社で作ってるんですよね?」

「そうそう、出来のいい妹を持ってお兄ちゃん超幸せ。でも出来の悪いお兄ちゃんは可愛い妹になんかいろいろ全部押しつけちゃってる形になっちゃってるんだけどさぁ、申し訳なさ過ぎてこの場で頭をかち割りたいくらいですよぅ!」

「かち割らないでくださいね?」

「せめてもの手伝いで妹も一枚噛んでる異世界邸に関わらせてもらってるんだけど、できれば四六時中べったり張りついておきたいレベル」

「……(ああ、この人嫌われてそうだなぁ)」

「妹のどこが可愛いかと言いますとねぇ? おっとりした口調で物凄い罵詈雑言吐いて来たり、僕と同じ青く澄んだ瞳が虫けらを見るように向けられたり――」

「お金取ってきますね!?」

 まだ話は終わっていないのに逃げられてしまった。

 とりあえず、そこで寝ているヴァルキリーを栞那さんの部屋にでも転移させといて、雑貨屋『活力の風』の店主は玄関で待つことにした。

 

 どんなものでも風に乗せてひとっ飛びでお届け!

 雑貨屋『活力の風』は今日も元気に営業中。


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― 新着の感想 ―
[一言] おぉ、これはこれは……どこかで見たことがある御方が活力の風をされてるんですね。 便利。利便性は極まってる。ただ駄ルキリーに対して別の仕事って……あっ(察し) 大変ですねこちらでも。 続きが楽…
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