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【初稿版】特オタ~特撮ヒーローズオルタネイト~  作者: 青空顎門
第三章 わたしは人間ですか?

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第十三話 異形 ②一歩一歩着実に

 特オタ、前回の三つの出来事!

 一つ。イクティナの魔動器を作るため、双子を連れて訓練場へと向かう!

 二つ。イクティナにメルとクリアを紹介し、その流れで双子の家庭の事情を聞く!

 三つ。一先ず双子にイクティナを任せ、日課の魔物討伐を行う!

    ***


 ユウヤ達に連れられてイクティナと顔を合わせてから一日。

 メルとクリアは今日もまた賞金稼ぎ(バウンティハンター)協会の訓練場を訪れていた。

 ちなみに、昨日場所を覚えたので〈テレポート〉は自分で使用している。


「と言う訳でイクティナさん、試作機ができました!」


 ユウヤとフォーティアが今日の分の魔物討伐に向かった後。

 メルはイクティナを振り向いて、杖状のそれを目一杯掲げながら言った。


「まあ、まだ使える魔法は一つだけですけどね」


 続いて、少し恥じるようにクリアが補足をする。

 しかし、あくまでも試作機なのだから、そこは許容範囲内としておいて欲しい。


「は、早いですね。……ええと、安全性とか、大丈夫なんですか?」


 昨日の今日で実物ができてきたことに対して不安を覚えてか、イクティナが恐る恐るという感じで尋ねてくる。まあ、当然の懸念だと思う。

 実際、人が使用するものなのだから試作機と言えど、そこは絶対に外してはいけない。

 安全性を度外視したコスト削減は楽だが、いずれ露見して信用を失うだけ。

 自分で使うつもりで作る。最低でもその心構えで挑まなければならない。

 ただでさえ試作段階では想定外の陥穽が発生しかねないのだから。一般論として。

 もっとも、今回のこれについては大きな問題は起こり得ないはずだが。


「元々ある魔動器の機能を応用したものなので大丈夫ですよ」


 不安げなイクティナを安心させるように、メルは笑顔と共に言った。


「は、はあ。それにしても一日でって……」


 しかし、対する彼女は曖昧な表情を浮かべるばかりだった。

 どうやらメルの言葉だけでは、完全に彼女の心配が消えることはなかったようだ。


(あんまり早く済ませちゃうのもよし悪しかも)


 メルとしては丁寧な仕事をしたつもりだが、ちゃんと製作過程や納期について認識を共有しておかないと雑に感じられてしまうものなのかもしれない。


「まあ、魔力吸石が早々に手に入りましたから。アイリス姉さんが譲ってくれたおかげで」


 そこへ、クリアがフォローを入れてくれながらアイリスへと視線を向ける。

 昨日ユウヤが魔物を討伐して手に入れてきた魔力吸石。その内、本来ならアイリスの腕輪に吸収させる分をイクティナの魔動器を作製するのに使用したのだ。


「そ、そうだったんですか!? アイリスさん、すみません。私のために」


 クリアの言葉を聞いて、恐縮したようにペコペコ頭を下げるイクティナ。

 随分生真面目と言うか、自分に自信がない人だなと思う。

 彼女の境遇を聞いた限り、さもありなんという感じだが。

 そういった彼女の言動には、何と言うか親近感が湧く。


【イーナ。友達にすみませんはなし】

「あ……はい。ありがとうございます、アイリスさん」


 アイリスが作った文字に、どことなく嬉しそうに返すイクティナ。

 彼女にとって自分を友達と言ってくれる存在は特別なのだろう。


【気にしなくていい。一日分ぐらい誤差】

「誤差……」


 アイリスが新たにイクティナに返した文字を見て、クリアが複雑そうにポツリと呟く。


「どうかしましたか?」

「いえ、何だか最近自分の常識がどんどん崩れていくので」


 プルトナの問いに小さく溜息をつくクリア。

 そうした妹の気持ちがメルにはとてもよく理解できた。

 安全を考えればSクラスの賞金稼ぎ(バウンティハンター)数名が念入りに準備をして討伐しなければならないはずの魔物が、日々軽々と討伐されている事実。

 本来の労力に相当する高い価値を持つ魔力吸石が、湯水の如く消費されている現実。

 メル達が作った魔動器と魔法技師としてのプライドを、完膚なきまでに砕いてくれたオルタネイトの魔力の高さ。

 自分がどれだけ狭い世界に生きていたのか、嫌でも思い知らされる。


「ユウヤ達とつき合っていくなら、慣れないといけませんわよ」


 苦笑しつつ、どこか共感するように言うプルトナ。

 よくよく考えれば、魔星(サタナステリ)王国の王女である彼女とこうして普通に話しているのもおかしな状況だし、獣星(テリアステリ)王国王家の血を引くアイリスを姉と呼ぶのも変な話だ。

 しかし、まあ、彼女の言う通り、こういうものだと納得するしかないのだろう。


【そう。これが私達の当たり前。ドクター・ワイルドと対峙するなら常識の外に出なければならない。それぐらいの危機が日常の影に隠れているということ】


 確かに七・一九事変では一国の存亡に関わる程の事態となったにもかかわらず、それ以前は一部の情報が秘匿されていた。

 常識ばかりに寄りかかっていては、非常時に足をすくわれかねない。


(うん。慣れてかないとだね)


 まず間違いなく、ユウヤ達とは長いつき合いになるだろうから。

 メル自身もそれを望んでいるし。


「でも、ちょっと勿体ない気もしますけど」


 と、まだメル達寄りの感覚なのか、イクティナが少し気まずげに言う。


【いずれイーナの力も必要になるはず。その投資と考えれば価値のある使い方】


 そんな彼女にアイリスはそう文字を作ってから、視線鋭く自分の左手首を見詰めた。

 残る腕輪は三つ。属性は水、風、光。

 彼女は直観的に、その全てを使わざるを得ない事態が来ると予測しているようだ。


(風属性はイクティナさん、光属性は先生として水属性って誰がいるだろう)


 とりあえず、腕輪を身に着ける条件は魔力Sクラスと分かっている。

 だが、周囲に水属性の該当者はいない。

 メルの知る限り、母親であるカエナぐらいのものだ。


(まあ、お母さんは違うよね)


 複雑な気持ちを抱きながら心の中で嘆息する。

 実のところ、メルは母親をクリアのように蛇蝎の如く嫌っている訳ではなかった。

 しかし、親愛の情を持っているかと問われれば押し黙るしかない。

 自分でも正確な感情が分からないのが実情だ。


「姉さん?」


 そんな微妙な心持ちが顔に出てしまったのか、クリアに心配そうに問われてしまう。

 双子故に、他の人なら気づかない変化も筒抜けだ。


「何でもないよ。それより――」


 妹のことだから誤魔化しにもきっと気づくだろうが、この場は有耶無耶にしてしまおうとメルはイクティナにグイッと近づいた。


「さあ、早速使ってみて下さい!」


 そして、杖状の魔動器を勢いよく差し出す。

 対してイクティナは、微妙な顔をしながら恐る恐るという感じで手を伸ばしてきた。


「もー。お兄ちゃんが一度試してくれたから大丈夫ですよお」


 その反応にはさすがに不満を覚え、頬を膨らませながら言う。


「あ、そ、そうですか。だったら大丈夫かもですね」


 そんなメルを前に、イクティナは取り繕うように笑いつつ杖を受け取った。

 ユウヤを引き合いに出した途端、彼女の心配は薄れたようだ。

 全く以て大きな信頼度の差が感じ取れる。つき合いの長さ的に当然のことだが、魔法技師が魔動器を信用して貰えないのは少々複雑だ。

 とは言え、魔法技師としての知名度もない以上はこれも仕方のないこと。

 一つ一つ実績を積み重ねて信頼を掴み取っていくしかない。


「えーっと、どう使うんです?」

「柄のスイッチを押せば魔力の抑制が開始されます。後、これは試作機なので固定されてますけど先端のダイアルで抑制の度合いが変わる予定です」


 杖状の魔動器を色々な角度から眺めつつ問うイクティナに、クリアが答える。


「今日は最下級の魔法を使って様子を見て下さい」


 妹に続けたメルの言葉にイクティナは頷き、意を決したようにボタンを押した。


「で、では、〈ウインド〉」


 そうして硬い表情で魔法の発動を宣言する彼女。

 次の瞬間、訓練所に風が巻き起こった。


「成功、ですわね」

【一回だと偶然かもしれない。何度か試してみないと】

「は、はい。〈ウインド〉」


 慎重派なアイリスに促され、数度魔法を試すイクティナ。


「だ、大丈夫そうです!」


 そのいずれもが完全に制御された形で発動し、彼女は喜色満面の笑みを浮かべた。


「よかった。後は兄さんに手伝って貰って調整すれば完成です」


 表情を和らげて言うクリア共々一安心する。

 自信は十二分にあったが、それも使用者が満足しなければ意味がないことだ。


「ありがとうございます! メルさん、クリアさん」

「いえいえ! 礼には及びません!」


 深々と頭を下げて感謝するイクティナの姿に、自然と頬が緩んでしまう。


(…………何か、今回は特別かも)


 魔法技師として感謝されたことは何回もあったし、その度に嬉しかった。

 しかし今、メルの心の中には不思議な充実感があった。

 魔動器としては大分単純なものだし、本当に短い期間で形にしただけなのに。


「今度は急に機嫌よさそうね、姉さん」


 同じように微笑むクリアがそう言葉をかけてくる。


「うん。何だろ。ここ二、三日凄く楽しかったからかな」

「…………そうね。兄さんに振り回されたおかげなのか分からないけど、変なプレッシャーもなく魔動器を作れたし」


 ラディアの世話になって以降、嬉しいことは何度もあった。

 しかし、純粋に楽しく思えたのは初めてのことかもしれない。

 いつも何かに追われているような焦燥感がついて回っていたから。


「お兄ちゃんのおかげ……。うん。クリアちゃんの言う通りかも」


 そう呼ぶようになって三日目。

 実際の兄妹ではないのに、メルの胸には確かに兄に対するような親愛が生じつつあった。

 何度も「お兄ちゃん」と口にしたことで自己暗示にかかり、ユウヤが本物の兄であるかのように錯覚してしまっているのだろう。

 勿論、それが不快という訳では決してない。むしろ、そんな繋がりができたことに酷く心が安らぐぐらいだ。あるいは、無意識に兄のような存在を欲していたのかもしれない。

 そうこう考えていると――。


【私は力不足?】


 メル達の会話を聞いていたらしいアイリスが、どことなく寂しそうに文字を作った。


「う、ううん! そんなことないよ!」

「兄さん、割と無茶なことして距離を詰めようとしてきたから印象が強くて」


 慌てて妹と共にフォローを入れる。

 実際、ラディア宅に泊まるようになってから一番長く接しているのは彼女なので、ユウヤよりも比較的自然な感じで姉と思う感覚がある。料理もよく好物を作ってくれるし。

 自分の中のユウヤとの距離が急激に近くなったから、無駄に意識させられている訳だ。


【それは、確かに。二人からすればそうかもしれない】


 二人の言い分に一先ず納得してくれたのか、表情を僅かに和らげて頷くアイリス。

 と、丁度そのタイミングで魔力の励起を感じ取り、三人同時にその方向を振り返った。


「ユウヤ達が帰ってきたようですわね」


 プルトナやイクティナもそれを察したようで、視線は同じ場所に集まる。そして、ほぼ間髪容れずにそこ、訓練場のポータルルームからユウヤとフォーティアが出てきた。


【ユウヤ、お帰り】


 メル達のところへユウヤが戻ってくるや否や、アイリスはスッと彼の隣に収まる。


「ああ、ただいま」


 そんな彼女に笑顔で答えるユウヤ。

 これで「けじめをつけるまで恋人ではない」と言い張るのだから、全く以て律義と言うか頑固と言うか。呆れてクリアと顔を見合わせてしまう。

 それでも兄と姉の仲がよくて悪いことでもなし、むしろ何となく喜ばしい。

 だから結局は妹と互いに小さく笑顔を交わし合い、それから二人もまたユウヤの傍に向かったのだった。


    ***


「お兄ちゃん!」「兄さん」

「「お帰りなさい」」


 アイリスに続いて出迎えてくれる双子に、雄也は自然と表情が綻ぶのを実感していた。


「ただいま、二人共」


 二人のために始めたこの呼び名だが、意外と自分にとっても悪くないかもしれない。

 妹属性的な意味ではなく、純粋に家族を強く感じさせる言葉だから。純粋に。

 その分、少々ノスタルジーも湧き起こるが、それ以上に安堵する部分の方が大きい。


【ユウヤ、何だか優しい顔してる】

「そ、そうか?」


 アイリスの文字を見て、雄也は思わず口元を手で隠した。

 改めて指摘されると何だか気恥ずかしい。


「あのー、アタシには何の言葉もなし?」


 雄也と一緒に帰ってきたにもかかわらず、誰からも声をかけられずにいたフォーティアが不機嫌そうに全員を睨み気味に見回す。


【お帰り、ティア。いつもお疲れ様】


 そんな彼女の文句を軽く流して、今正に出迎えたように労うアイリス。


「アイリス、アンタって人は……もう」


 その平然とした様子に、フォーティアは呆れたように軽く嘆息してから苦笑した。


「で? イーナ、魔動器の試作機はどうだったんだい?」

「あ、はい。見てて下さい!」


 イクティナはフォーティアの問いに嬉しそうに杖状の魔動器を掲げた。

 その表情を見ただけで成功したことがよく分かる。


「〈ウインド〉」


 果たして彼女がそう告げると、訓練場に爽やかな風が駆け抜けた。が、テンションが上がって方向をしっかりと定めなかったのか――。


「っと」


 位置取りが悪かったフォーティアの横を風が通り過ぎ、乱された風によって袴が大きく捲れ上がってしまった。和装に不釣り合いなスパッツと健康的な太腿が顕になる。


「お兄ちゃん……目ぐらい逸らそうよ」

「いくらスパッツとは言え、ねえ」

「いや、スパッツだからこそだ」


 和装ならば下着はない方が普通。あるいは褌。しかし、スパッツの微妙なアンバランスさも悪くはない。と言うか、近年では道着にスパッツは割とあるようだし。

 いずれにせよ、捲れ上がって見えることに意義があるのだ。


「兄さん……」


 そう思考を展開しながら頷いていると、双子から冷たい視線を向けられる。

 思い切り引かれてしまったようだ。十二歳の女の子からすれば当然か。

 下手をすれば兄妹の縁を切られかねない。


(これからは二人の前では自重しよう)


 もはや手遅れかもしれないが。


「まあまあ、二人共。ユウヤも男なんだ。健全健全」


 しかし、見られた当人であるフォーティアがあっけらかんとフォローするので、彼女達は困ったような、呆れたような顔になってしまった。

 それから二人は微妙な表情のままアイリスに視線を移す。


「アイリス姉さん。いいの? こんな人で」

【問題ない。私もスパッツだし】


 双子にそう答えると、アイリスは対抗するように長いエプロンスカートをたくし上げた。

 すらりとした足と、ギリギリ股下の部分だけが見えるスパッツは魅惑的だ。

 それは自重しようという意思を容易く蹴散らす程で、目線を縫いつけられてしまう。


「駄目だ、この人達」

「まあ、これも慣れるべき日常ですわ」


 色々と諦めたように溜息をつくクリアに、宥めるようにプルトナが言う。

 常識人のように振る舞っているが、彼女は彼女で割と変人の類だ。


「……余り慣れたくないです」


 そう言って深く嘆息するクリアと「あはは」と曖昧な笑みを浮かべるメル。

 しかし、折角できた妹達だ。なるべく見限らないで欲しいところではある。


「あの、ところで――」


 そんな非常識な集団の中、性格は常識人寄りのイクティナが口を開く。


「昨日は色々あって聞きそびれたんですけど。アイリスさん、普段からこの格好なんですか? メイド服って……それに首輪も」

獣人(テリオントロープ)に首輪。正妻の証】


 訝しげなイクティナに、慎ましい胸を張るアイリス。


【ユウヤがくれた】


 そう文字を続けながら、彼女は珍しくハッキリ得意げな顔を作った。

 余程喜んでくれたのだろう。贈った方としても嬉しくなる。

 対照的に、イクティナは「ふえ!?」と間の抜けた驚きの声と共に一度こちらを見た。


「自分で買ったのではなく?」

【イーナは私を何だと思ってるの?】

「あ、はは」


 アイリスにジト目を向けられ、イクティナは誤魔化すように曖昧な笑みを浮かべた。


「ええっと、まあ、そこは理解しました」


 それだけで済む辺り、雄也がアイリスにそれを贈ること自体は不思議に思っていないようだ。そういう風に見られているということだろう。


「それでメイド服の方は?」


 彼女にとってはそっちの方が違和感が大きいらしい。


【これは私自身の弱さを戒めるため。そして、六・二七広域襲撃事件で助けられたなかったメイド達、特にメルティナを忘れないため】

「あ……」


 思った以上に真面目な理由を耳にしたためか、イクティナは気まずげに視線を揺らした。雄也としても身につまされる話だ。

 そんな周りの反応に、アイリスは失敗したという表情をして文字を改め始める。


【勿論、ユウヤが気に入ってくれてるのもある】


 七割気遣い三割本心という感じで真面目な顔を作る彼女に、イクティナ共々雄也は苦笑した。しかし、確かに似合っているし、実際可愛いので反論はできない。


「兄さん、通信入ってるわよ」


 場の空気が柔らかくなった代償にクリアの声色が一段と冷たくなっているが、まだ兄さんと呼んでくれているのだから許容範囲内というところだろう。

 それよりも今は通信だ。懐から通信機を取り出して起動させる。


『ユウヤ、超越人(イヴォルヴァー)だ! すぐに来てくれ!』


 と、通信に出るや否や切迫したアレスの声が聞こえてきた。


『分かった。場所は?』


 そして即座に彼から位置を教えて貰い、通信を切る。

 それから雄也は、緊迫した表情を見てか心配そうな視線を向けてくる皆を見渡した。


超越人(イヴォルヴァー)が出たらしい。行ってくる」


 その言葉に比較的つき合いの長い四人は黙って頷く。


「お、お兄ちゃん。気をつけてね」

「兄さん。無理はしないでよ?」


 対照的に、双子は先程までとは打って変わって酷く不安げな顔をしていた。


「ああ。分かってる」


 雄也はそんな二人に柔らかく笑いかけてから、意識的に表情を引き締めた。慣れに引きずられて慢心してはいけない。彼女達の顔を見て自分に言い聞かせる。そして――。


「アサルトオン!」

《Change Phtheranthrope》


 構えを取って力強く告げた言葉に電子音が続き、身体が変化していく。

 次いで、鷲の如き異形を新緑色の紋様の走った純白の装甲が覆った。


「〈ワイドエアリアルサーチ〉〈エアリアルライド〉」


 変身の完了と共に念のために広域の探知魔法を使用しつつ、一気に空へと跳躍する。

 同時に翼人(プテラントロープ)特有の魔力の翼を展開し、そうして雄也は超越人(イヴォルヴァー)の出現地点へと急行したのだった。

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