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この世の果て  作者: にしのかなで
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成年の儀。

時は流れ、アスワドの成年の儀が近づいて来た。社交界のデビューと重なるこの儀式は親も子も大忙しだ。社交デビューは貴族の子息令嬢のものだが成年の儀は魔法魔術師学校に在籍する15歳を迎える者ならば貧富の差なく誰もが出席できる。魔法師の正装に乗っ取って黒一色の一団がその場にできるのだ。


「15歳ですかぁ、お早いものですねぇ。」


カタリナは社交デビューという言葉にうっとりしながらモップで廊下を磨き上げる。若々しい貴族の令嬢達がドレスの裾を広げて初々しい若者達と初めてのダンスに興じる。


「それを言ったら君だって13になっただろう?」


「わ!ビックリしました、急に声をかけないで下さい。」


成年の儀は冬に行われる。アスワドも冬休みで帰って来ている。3年経ちアスワドとカタリナの距離も少し縮んだ。階段を下りながら話しかけて来たアスワドに驚き睨み返す。


「は〜あぁ、でも勿体無いですね。折角の晴れの舞台もっと着飾れたらいいのに。元はいいんですよ?」


モップを絞りながらカタリナが嘆く。アスワドは魔法師だから当然黒一色の正装だ。


「僕は助かってるよいつもの正装で緊張感がないからね。それよりパートナーだよ。探すの苦労したんだから。」


「ええぇ⁉︎アスワド様なら選り取り見取りじゃないんですか⁉︎」


「寄宿舎の仲間とさ誰にするかって話し合ったんだけど、皆が皆同じ子の名前だしてその子争奪戦!結局、彼女は別の奴とパートナー組んで・・・」


「まあぁ、でもパートナーはお決まりになったんでしょう?」


「うん、まぁね。ちょっと奥様に呼ばれているから本邸に行ってくるよ。」


「行ってらっしゃいませ」





「欠席?成年の儀をですか。」


「そうなの、あなた魔力も高いから儀式には参加せず裏方に回って欲しいって魔法省からお話しがあってね。どうかしら、やっぱり儀式へは参加したい?」


心なしか夫人の顔色は曇っている。儀式へは一生に一度の経験だから参加はしてみたい、ただ魔法省からのお声掛りとなると凄いことだ。


「では、魔法省のお話をお受けします。」


「ありがとう、儀式は残念だけれど後日パーティーでも開きましょう。」


「はい、ありがとうございます。」


参ったな、パートナーに断りを入れなきゃ。いつの間にか曇天になった空を見上げながら立ち止まる。カタリナが慌てて洗濯物を取り込んでいる。近くにルッツィがいたので声を掛け、事の仔細を話す。


「ええぇ〜、式に出られないのは残念ですね。一生に一度ですよ、魔法省なんかヒイラギ様なら後になっても幾らでも挑戦できる仕事ですよ。あぁ〜、お相手にも申し訳ないですね。私なら可愛いパートナーと式に臨みますよ。」


「そうなんですけど、この歳で魔法省の仕事でしょう?僕にはその魅力に勝てなかった。パートナーには会って話した方が良いですよね、そっちが大変だな。」


そう言いながらアスワドは紙に何かを認めると、その辺にいた雨風に強そうな鳥を呼びつけ足に小さな文箱を括り付けると空に離した。


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