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この世の果て  作者: にしのかなで
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手紙が届く喜び。(改)

学校の住所と、部屋番号を紙に記してカタリナに渡す。


「練習だからさ、短くてもいいからとにかくなんか書いて送ってよ。」


そう言って笑って去って行ったが、カタリナには何を書けばいいのかさっぱり浮かばない。ルッツィには


「その日あった事をなんでも書けばいいんじゃないかな。」


とアドバイスを貰ったが、その日から暫くカタリナは手紙の事で夢にまでうなされる毎日が続き、これではいけないと意を決しペンを取った。


ー親愛なるアスワド様

アスワド様がそちらに帰られてから二週間が経ちますね。離れは変わりないです、そちらのご様子はいかがですか?手紙とは難しい物ですね、これ以上何を書いたらいいのか浮かびません。では、お身体を大事になさってくださいませ。

カタリナー


たったこれだけに一時間も費やしすっかり疲れたのだが、誤字脱字はないか確かめ封筒に入れるとアスワドが置いてあるポストに入れる。なんでも用件があればこのポストに紙に住所を書いて投函すればすぐにアスワドに届く仕組みらしい。


「はぁ〜、魔法って不思議だけど便利。」


その便利さと不思議さを夕食後にもう一度身を以て知る、返事が届いたのだ。

食後の片付けをすませた頃、ルッツィに呼ばれるなんでも返事が届いたという。


「えぇっ⁉︎昼間出したばっかりですよ?」


ルッツィが他の郵便物に目を通しながら答える。


「余程、お待ちかねだったんでしょうね。」


気になって尋ねる。


「このポストは郵便受けにもなっているんですか?」


「そうだねぇ、魔法省関係の手紙はここに届くよ。あぁ期限切れか・・・。」


「?アスワド様への手紙じゃないんですか?」


「あぁ、留守中は私宛の用件が届くんだ。これでも私も魔法使いの端くれだからね。」


「ええぇっ⁉︎」


ポストの不思議どころではない、この屋敷には二人の魔法使いが居ると言うのだ。クラクラと眩暈を覚えながら居間の椅子に座り込む、そうだそれどころじゃない返事を読まなければ。

そっと封を開けると中から手紙を取り出す。四つ折りになった手紙を開くとほんの少し会わないだけなのに、懐かしいアスワドの文字が目に入る。


ー親愛なるカタリナへ

手紙をありがとう。嬉しくてすぐに返事を書いてしまっているよ。

カタリナもそうかもしれないけど、僕は手紙を貰うのは初めてなんだ。

家族がいる子達は時々手紙を貰って喜んでるから羨ましくってね、でももう僕も一人じゃない君の手紙が届いた時にそう感じたんだ。兄妹くらい歳の近い君で良かったよ!

書きたい事はたくさんあるけど、また次にするね。じゃあ、返事を待っているよ。

おやすみ。

ーアスワド・ヒイラギ


読み終わってそっとエプロンのポケットに忍ばせる。そのまま夜の仕事を終え二階の自室に入り寝巻きに着替える。

それからお仕着せのエプロンのポケットから手紙を取り出し再度読むと目頭が熱くなってきて涙がポロポロと零れ落ちる。

アスワドの手紙のインクが滲まないよう寝巻きの袖で拭いても拭いても溢れ出る涙につい嗚咽が漏れてしまう。

寂しい人だ、本当に寂しかったんだ。たったあれだけの内容しか書けなかった事をカタリナは後悔していた。次はたくさん書こう、私の寂しさも抱き合わせて一つにしてくれたあの人に。





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